記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/18 記事改定日: 2020/8/17
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ブロック注射という治療法を聞いたことはありますか?ブロック注射とは、痛みが強い疾患や、手術後に強い痛みが残っている場合に対して行われる治療法です。
ブロック注射とはどんなものなのでしょうか?また、使われている薬はどのような作用によって痛みを抑えるのでしょうか?
ブロック注射とは、痛みのある部分の神経の近くに麻酔薬を注射し、痛みの伝わる経路をブロックすることで痛みを取る治療法です。ブロック注射は入院の必要のない注射で、日帰りで行うことができ、保険が適用されます。
ブロック注射は、腰や肩・膝・首・手足など、全身の痛みに対して適用され、帯状疱疹・突発性難聴・顔面神経麻痺などにも使われます。
ブロック注射は1回で痛みが完治するわけではなく、薬物療法と併せて複数回実施する必要があり、痛みが緩和されると血流が良くなり、筋肉のこわばりもなくなります。
ブロック注射にはいくつか種類があり、痛みの種類や症状によって使い分けます。主なブロック療法に、星状神経節ブロック、硬膜外ブロック、トリガーポイント注射などがあります。
ブロック注射が推奨されるのは、以下のような方です。
ブロック注射には一般的に局所麻酔薬が使われます。局所麻酔は、一時的に神経の伝達を遮断する作用のある薬で、リドカイン・メピバカイン・ブピバカイン・ロピバカイン・レボブピバカインなどがあります。
知覚神経や交感神経を遮断するのであれば局所麻酔薬を生理食塩水で薄めて使用し、知覚神経だけを長時間遮断するためにブロック注射を行う場合は高濃度の局所麻酔薬を使うこともあります。
ブロックの効果を長期間にわたって持続させる必要がある場合は、神経破壊薬を使用します。神経破壊薬には無水アルコール・フェノールグリセリン・フェノール水などがあり、これらはブロックの種類によって使い分けます。
神経破壊薬を使用する前に、必ず局所麻酔薬でブロックの効果を確認します。三叉神経ブロックでは皮膚の感覚が長期間にわたり消失し、痺れた感覚が続くため、神経破壊薬を使用する前にその状態が受け入れられるかどうかを確認してからブロック注射を行います。
局所麻酔薬、神経破壊薬のいずれを注射する前にも、針が正しい場所に置かれていて、ブロックする必要のない神経の方向に薬剤が流れていかないか、薬液の流れに問題がないかを確認するために、造影剤を注射することがあります。
造影剤は単独で局所麻酔薬や神経破壊薬の前に駐車する場合と、局所麻酔薬に混ぜて使う場合があります。
また、同時に神経の炎症を抑えるため、副腎皮質ステロイド薬剤(水溶性)を局所麻酔薬に添加して一緒に注射することもあります。
ブロック注射のメインの効果は一時的な麻酔ですが、興奮して過敏になった神経を落ち着かせ、患部の状態を改善させる効果も期待できます。
これは痛みの悪循環を断つことで、痛みによって神経が興奮し、血管や筋肉が緊張し、血行が悪化し、さらに痛みが増すと言う負のサイクルを止められることがあります。
麻酔によって痛みが落ち着けば神経が落ち着き、血管や筋肉の緊張もほぐれます。血行も改善されるため、麻酔薬そのものの効果が切れても長期的に痛みが和らぐ効果が期待できます。
ブロック注射は、体に針を刺す「注射」という医療行為であり、安全性が高いとされる治療法ではありますが合併症や副作用の危険性があります。
ただし、副作用の発生頻度は非常に少ないとされています。また、緊張が強い状態で受けると気分が悪くなることもあります。
ブロック注射の副作用は、施術後短時間のうちに起こるのが一般的です。病院によっては注射後しばらく安静にしていてもらうなど、副作用が起こってもすぐに対応できる体制を整えているところもあります。
また、これらの副作用を避けるため、注射の際に発熱している場合やブロック注射の適応となる疾患以外に体調が悪い場合は、ブロック注射は行いません。
ブロック注射を受けた後は、神経の働きが低下した状態となります。痛みを改善する効果はありますが、同時に注射した場所によっては足が動かしにくいといった運動機能の低下が生じることもあります。
注射を受けた後は、車の運転などは控え、できるだけ安静に過ごすようにしましょう。
また、しびれや痛みなどが続くときはブロック注射による副作用の可能性もありますので、軽く考えずにできるだけ早めに病院に相談するようにしましょう。
ブロック注射は、一時的に神経伝達をブロックする局所麻酔と、神経が再生するまでの間ブロックを続けることができる神経破壊薬の2種類があります。いずれの場合も痛みが伝わる神経伝達経路を遮断し、痛みによって神経が興奮し、血管や筋肉が緊張して血行が悪化し、さらに痛みが強くなるという悪循環を断ち切ることがもっとも大きな目的です。