腰痛など慢性的な痛みの治療「トリガーポイント注射」の効果は?間隔の空け方は?

2018/5/12 記事改定日: 2020/6/15
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

長引く肩こりや腰痛の慢性的な痛みには、トリガーポイント注射が有効なことがあります。肩や背中、腰などのトリガーポイントに局所麻酔剤を注射する治療法をトリガーポイント注射といいます。トリガーポイント注射の効果や神経ブロックとの違い、痛みへの効果について解説していきます。

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慢性的な痛みの緩和に効くトリガーポイント注射の効果

重い腰痛や坐骨神経痛を改善する治療法の一つとして、トリガーポイント注射(正式名は「トリガーポイントブロック」という)と呼ばれるものがあります。
トリガーポイント注射とは、トリガーポイント(圧痛点:押すと強く痛む部分)と呼ばれる腰や肩などで強く痛みを感じるポイントに、直接局所麻酔注射をすることで痛みを取く治療法のことです。

筋肉の反復性の運動・ストレス(使いすぎ)により、筋肉内に硬いしこりのようなものがある場合(緊張帯)など、さまざまな種類のトリガーポイントに対応しています。

トリガーポイント注射には、主に次の4つの効果があるといわれています。

  • 筋肉の硬直をゆるめる
  • 発生した発痛物質を洗い流す
  • 交感神経(※)の働きを抑え、血流を促す
  • 知覚神経から脳に伝わる痛みの電気信号を遮断する

※交感神経とは自律神経の一種で、心身を緊張させる神経のこと

トリガーポイント注射は、痛みの悪循環に働きかけることで自然治癒力を促し、痛みを根治に導くきっかけをつくる治療法です。

トリガーポイント注射に用いる注射針は約0.3mmと極めて細いので、注射をする際に痛みはあまりありません。用いる麻酔薬も一つのトリガーポイントに打つ量が1〜5mlと少量なので安全性が高く、妊婦や高齢者でも安心して使えます。くり返し投与しても問題ない麻酔であると考えられています。

トリガーポイント注射が有効とされる痛み

トリガーポイント注射は上述のように、筋肉や筋膜、神経に由来する痛みを抑える効果のある治療法です。全身のさまざまな部位の痛みを抑えることができますが、広く行われるのは首や肩、腰、膝などの慢性的で頑固な痛みに対してです。
これらの部位の痛みは、筋肉の血行が悪くなることなどによって痛みを引き起こす神経系に異常が生じるためと考えられています。

トリガーポイント注射では、これらの異常が生じた部位に直接局所麻酔薬を注入することで神経系の異常な働きを抑える効果が期待でき、その結果、痛みが和らいでいくと考えられています。
また、首や肩などの整形外科的な領域だけでなく、お腹の手術の跡やがんによる痛みにも効果があるとされています。

トリガーポイント注射は何回受けられる?

トリガーポイント注射療法は、直接的に疾病原因を治療するものではありません。繰り返し注射することで痛みを除去できる可能性があります。
1回目の注射で痛みの改善がみられた場合は、その後は1週間に1回のペースでトリガーポイント注射を行いきます。何回か注射するうちに徐々に痛みが治まってくるケースも多いといわれています。

トリガーポイント注射の流れ

実勢にトリガーポイント注射を行う際には、痛みのある部位に注射をしやすいよう医師の指示に従って座ったり、横になったりと体勢を整える必要があり、注射を打つ部位が決まったら、消毒をしたうえで局所麻酔薬の注射を行います。

トリガーポイント注射は通常の注射とほぼ変わらない方法で行われますが、打つ部位が深い場合は合併症を起こしやすいため注意が必要です。また、針を刺すべき部位が特定しにくい場合は、超音波などで観察しながら注射を行うこともあります。

トリガーポイント注射は一度に複数個所行うこともできますが、局所麻酔薬を一度にたくさん投与すると、呼吸抑制などの副作用が現れることがあります。決まった量以上の注射はできませんので、満足の行く結果が出ない場合も、後日改めて行うことになるのが一般的です。

注射を受けた当日はめまいや気分不良などを引き起こすことも多いためできるだけ安静にしておくようにしましょう。また、場合によっては一時的に神経麻痺が起こることもありますので、注射を受けた当日の運転などは控える必要があります。

トリガーポイント注射と神経ブロック注射の違いは?

体の痛みに働きかける注射には、神経ブロック注射というものもあります。トリガーポイント注射と神経ブロック注射には、下記のような違いがあります。

神経ブロック注射

末梢神経またはその周辺に薬剤を使用して、一時的に神経機能を停止させる治療法です。鎮痛効果、血行改善、筋弛緩効果などが期待でき、痛みの悪循環の改善に役立つと考えられています。また、神経ブロック注射は病変部位に限局して治療できる点も特徴です。

痛みを起こしている神経を一時的に遮断することで、その神経が痛みの発生に関与しているかどうかを判定する診断的ブロックとしての役割もあります。

トリガーポイント注射

トリガーポイント(痛みを強く感じる部分)に局所麻酔薬を注射針で注入し、痛みを取り除く治療法です。局所麻酔剤で神経の痛みの伝達を遮断することで、一時的に神経を休める効果があるといわれています。

局所麻酔剤の効果持続時間は約1~2時間程度ですが、神経を一時的に休ませることにより「痛みの悪循環」と呼ばれる痛みを慢性化させる仕組みを断つことができると考えられています。早く痛みを取りたい方、鎮痛剤、理学療法が効かない方に有効的とされる治療法です。

おわりに:痛みを軽減する方法の一つとしてトリガーポイント注射が検討されます

トリガーポイント注射療法は、疾病の原因を直接的に治療するものではありませんが、繰り返し注射することで痛みを除去する効果が期待できます。また、痛みをあまり感じずに治療が行えるのも特徴です。肩凝りや腰痛で辛い思いをしている方はトリガーポイント注射を検討してみてはいかがでしょうか。

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