記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/11
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
癌、肉腫、悪性新生物など、「がん」に関係している言葉は何種類もありますが、その違いはご存知でしょうか。今回はそれぞれの意味の違いや、がんの治療法などをご紹介します。
人間は、約60兆個の細胞からできているといわれています。そのうち正常にはたらいている細胞と、良性腫瘍以外のものを「がん(悪性腫瘍、悪性新生物)」といいます。
腫瘍とは、細胞の一部が突然変異を起こして増殖をはじめ、塊となったものを意味します。悪性腫瘍の場合は一度増え続けると他の部位にも新しいがん細胞をつくる「転移」を起こしますが、良性腫瘍の場合は転移することがないなどの特徴があります。
一方、「癌」とは、外界から器官を保護するなどの役割をもった、身体の表面の組織である上皮組織(食道、胃、肝臓、子宮、皮膚など)が悪性となったもので、がん全体の8~9割が「癌」であるといわれています。たとえば、胃癌や肺癌などがこれにあたります。
また、脳や血液細胞、骨、リンパ球などに悪性腫瘍がみつかった場合には、それぞれを脳腫瘍、悪性リンパ腫、骨肉腫、白血病などといい、一般的に「がん」とはいいません。ただし医学的に、脳やリンパ球などは上皮組織にあたらないため、「癌」ではなく、「がん」として分類されています。
「癌」は食道、胃、肝臓、腸、子宮、皮膚などの上皮組織が悪性となったもののことをいいます。一方で「肉腫」とは、骨、血管、筋肉、神経など、上皮組織以外の細胞からできる悪性腫瘍のことを意味しています。
肉腫は癌と比べて発生率が少なく、多種多様であることが特徴のひとつです。悪性腫瘍全体でみると、肉腫となるのは約1%と非常に低い発生率といわれています。また、癌が高齢者に多いのに対し、肉腫は若い年代から高齢者まで年齢問わず生じる可能性があり、全身のさまざまな部位や組織から生じるため、症状や治療内容なども人それぞれ違います。
肉腫などが疑われる場合、正確な診断をするために詳しい検査や診察を必要とします。そのため、治療までに時間がかかる場合が多いといわれています。
科学的根拠に基づいて行う最も良いとされる治療のことを「標準治療」といい、手術や薬物療法、また放射線療法などを行っていきます。日本では、がん治療の中心が手術でしたが、薬物療法や放射線療法が進歩しているため、がんの進み具合であるステージやその種類によって手術でがん細胞を切除するのと同じくらいの効果が期待できると考えられています。
また、これらの標準治療と同時に、がんによる身体と心の辛さをできるだけ少なくするような緩和ケアも行っていくといわれています。以下に、それぞれの標準治療の主な内容をご紹介します。
がんとなっている部分の切除や、他の臓器などへの転移がある場合には同時に切除します。がんである部分を切り取り、検査では見つからないような小さな転移がない場合には完治の可能性が高いといわれています。
ただし身体にメスを入れるため、メスを入れた身体の部位や身体そのものが回復するまでにある程度時間がかかったり、場合によっては身体や臓器の機能が失われる可能性もあります。このようなことを最小限に抑えるために、最近ではできるだけ切り取る範囲を小さくするなどして、身体への負担や治療後の合併症を可能な限り抑える、また内視鏡などのを使って手術を行うなど、さまざまなことが考慮されています。
主に抗がん剤でがん細胞の増殖を抑制したり、死滅させることが目的の治療法です。注射、点滴、内服などで抗がん剤を投与していきます。血液を介して全身に抗がん剤を運ぶことができるため、小さな転移がある場合でも効果的に治療できると考えられています。
しかし吐き気や脱毛などの副作用、また肝臓や腎臓などの障害なども現れる場合があるため、患者さんにとって負担の大きい治療といわれています。
ただし最近ではがん細胞のみに反応する治療薬が開発されて実用化しているものも増えてきています。また、白血球の減少を抑制する薬の開発や、脱毛などの副作用を和らげるなど、症状の軽減が可能になってきているといわれています。
がんができている部分に放射線を照射し、がん細胞の増殖を抑制したり、死滅させることを目的とする治療法です。最近では治療前の検査技術などが進歩し、がんの位置や大きさを正確に測ることで本当に必要な部分だけに放射線を照射することができるようになるなど、効果が格段に上がっているといわれています。また身体の外から照射するだけでなく、がん細胞のある部分に放射線を含んだカプセルなどを入れて行う治療など、種類もさまざまです。
また、一般的に放射線で使用されるX線と比べて、より効率的にがん細胞に放射線を照射できる陽子線治療などの実用化も進んでいます。
がんや癌、肉腫は、似ているようでもそれぞれ違う意味を持ちます。また、がん治療の方法は日々研究され、以前より効果が向上しているといわれています。正しい知識を身につけ、もしものときに備えておきましょう。