下痢を止めたいときに服用する「止瀉薬」の種類と副作用について

2023/11/29

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

下痢の症状が続いてつらいとき、頼りになるのが下痢を止める薬(止瀉薬)です。この記事では、止瀉薬の働きや成分の種類による違い、止瀉薬の副作用について解説しています。

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止瀉薬とは

下痢は、細菌・ウイルス感染による食中毒や感染性胃腸炎を発症したときに起こるほか、消化不良や、腸内の水分やミネラルのバランスの乱れ、過剰な腸の動きでも起こります。

腸は筋肉の収縮を伝えることで内容物を動かします。この一連の筋肉の動きを蠕動(ぜんどう)運動と呼びますが、何らかの原因で蠕動運動が過剰になってしまうと、十分に水分が吸収されずに排泄されるために下痢や軟便が起こります。また、炎症や傷があるなど、腸の機能に問題があって水分をうまく吸収できなくなったときも下痢になることがあります。

止瀉薬(ししゃやく)は、腸の粘膜に作用して、腸の運動を抑制したり、炎症を抑えたりすることで下痢の症状を改善する薬です。

おもな止瀉薬の種類

一般的な止瀉薬には次のようなものがあります。いずれも医療用医薬品ですが、市販薬の成分として含まれていることもあります。

ロペラミド塩酸塩(商品名:ロペミン®︎

腸の蠕動運動を抑えるとともに、腸内の水分の吸収を増やして下痢を改善します。小児から成人まで、幅広い年代に使われています。ただし、細菌性の下痢や潰瘍性大腸炎では使用できず、また、長期間服用することもありません。

タンニン酸アルブミン(商品名:タンナルビン®︎

タンニンを主成分とする薬で、腸粘膜を保護したり、抗炎症作用を示したりすることで下痢を改善します。成分に乳性カゼインが含まれるため、牛乳にアレルギーのある患者には使用しません。

天然ケイ酸アルミニウム(商品名:アドソルビン®︎

腸粘膜を保護し、腸内にある有害な物質や過剰になった水分を吸着することで下痢を改善します。アルミニウムを含む薬で、抗生物質(テトラサイクリン系、ニューキノロン系)の作用に影響を与えることがあるため、飲み合わせについては配慮が必要です。

ビスマス製剤(商品名:次硝酸ビスマス)

腸の粘膜を保護して炎症と腸の蠕動運動を抑える薬です。副作用として、吐き気や食欲低下が起こることもあります。ただし、長期に大量に用いている場合に、不安感や頭痛、記録や注意力の低下などの症状がみられることがあるため、近年はあまり選ばれなくなっているようです。

ベルベリン塩化物水和物(商品名:フェロベリン®︎)

腸内でのガスによる刺激を抑えることで、下痢を改善します。長期使用によって、不安や頭痛、注意力の低下といった精神神経系の症状が起こることがあります。こうした副作用が起こるのは非常にまれとされていますが、注意が必要です。

止瀉薬で起こりうる副作用は?

止瀉薬には、腹部が張った感じになる腹部膨満や、吐き気、眠気やめまい、著しい便秘といった副作用が生じる可能性があります。

また、まれにではありますが、重篤な副作用が起こることもあります。たとえば、ロペラミド塩酸塩では、腸閉塞(イレウス)や巨大結腸、ショック状態、アナフィラキシー反応が生じることがあります。また、発疹やかゆみが起きたり、唇や口の中のただれや目の充血といった皮膚症状や全身倦怠感が起こることもあります。

また、次硝酸ビスマスでは、不安や無力感、記憶力や注意力の低下や、混乱状態などの精神神経系の症状が起きたり、亜硝酸による中毒症状で血圧低下や皮膚の赤みが起こったりすることがあります。

止瀉薬は下痢のときに飲んだほうがいい、というものではありません。急性の下痢で、何らかの感染や潰瘍性大腸炎である場合は注意が必要です。たとえば、O157や赤痢菌による重篤な出血性大腸炎の場合、下痢を止めることでかえって悪化することがあるため、原則として禁忌となっています。

おわりに:下痢になったら必ず止瀉薬を飲んだ方がいいというわけではありません

止瀉薬は、腸の蠕動運動を抑えたり、水分やミネラルのバランスを整えたりすることで下痢を改善する薬です。服用すると腸の働きを整えて症状を改善する効果が期待できますが、中には下痢を止めることで症状が悪化する病気のこともあります。安易に頼りすぎず、服用しても症状が改善しないときは病院で診てもらうようにしてください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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