記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
2019/7/22
記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
「ビオチン」という栄養素をご存知でしょうか?皮膚炎の相談を薬局でしたことがある方は、「ビオチンがおすすめ」とアドバイスされたことがあるかも知れませんね。
今回、ビオチンの働きや欠乏した場合の症状などをまとめました。ビオチンが多く含まれる食品もご紹介しますので、ビオチン欠乏症にならないよう、毎日の食事に取り入れましょう。
ビオチンは水溶性のビタミンで、ビタミンB群に属します。酵母(糖分を分解し、アルコールと二酸化炭素にする力を持つ菌類)が増えるのに必要な因子として発見されました。ビオチンの研究が進むにつれ、皮膚の炎症を食い止める力があることが分かり、「ビタミンH」と名づけられました。そのため、ビオチンとビタミンH、二つの名を持つビタミンですが、最近はビオチンの方がよく使われています。
ほとんどのビオチンは、体の中ではタンパク質と結合した状態で存在します。消化によってたんぱく質が分解されると、ビオチンが遊離し、主に空腸(十二指腸から続いている小腸の一部)から吸収されます。
水溶性なのでアルコールや水には溶けやすいのが特徴です。熱や酸には安定性がありますが、アルカリに対しては不安定になります。
では、ビオチンは私たちの体内でどのような働きをしているのでしょうか。以下に、ビオチンの働きとともに、不足すると体にどのような影響が及ぶ恐れがあるかをご紹介します。
基本的にビオチンは過剰摂取してもすぐに尿と一緒に排泄されるため、たくさん摂っても影響はありません。
ただ、哺乳動物が妊娠中に大量のビオチンを摂取すると、妊娠初期の胚死亡や、卵巣および胎盤の委縮が起こる場合もあるという研究結果が出ています。このため、妊娠中に大量のビオチンを摂取するのは控えたほうがよいでしょう。
日本人の各年齢別に、ビオチンの食事から摂取する基準量をご紹介します。単位はすべて「μg/日」で、すべて男女ともに当てはまります。
ビオチンは以下の食品に多く含まれています。
大豆などの豆・穀類にもビオチンが豊富に含まれています。一方で、果物や野菜にはどれも10μg以下しか含まれていません。
注意すべきは生卵の食べ過ぎです。生卵の白身に含まれるアビジン(タンパク質)が胃の中でビオチンと結びつくことで、腸でのビオチンの吸収を妨げます。加熱するとアビジンとビオチンは結びつかないので、卵からビオチンを摂りたいときは、ゆで卵やスクランブルエッグなど、加熱した卵料理で食べましょう。
ビオチンはビタミンB群のビタミンの一つで、糖代謝の促進、皮膚や髪、粘膜の健康を維持する力があります。不足するとうつ症状が出たり、皮膚炎を起こしたりします。よほど大量に摂取しない限り、過剰摂取は起きませんので、日ごろから大豆食品や加熱した卵、牛レバーなどを食べると良いでしょう。しっかりと栄養を摂りましょう。