ビオチンの働きと不足したときの症状、摂り方のポイントについて

2024/9/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ビオチンはビタミンB群の一種です。皮膚炎の相談をしたことがある人は「ビオチン」をすすめられたことがあるかもしれません。この記事では、ビオチンの働きや不足したときの症状、1日の摂取量の目安、摂り方のポイントなどについて解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

ビオチンの特徴

ビオチンは水溶性のビタミンでビタミンB群に属します。酵母(糖分を分解し、アルコールと二酸化炭素にする力を持つ菌類)が増えるのに必要な因子として発見されましたが、ビオチンの研究が進むにつれ皮膚の炎症を食い止める力があることが分かり「ビタミンH」と名づけられました。ビオチンとビタミンHの2つの名前がありますが、近年は一般的にビオチンと呼ばれています。

ほとんどのビオチンは、体の中ではタンパク質と結合した状態で存在します。消化によってたんぱく質が分解されると、ビオチンが遊離し、おもに空腸(十二指腸から続いている小腸の一部)から吸収されます。水溶性でアルコールや水には溶けやすく、熱や酸に対して安定性がありますが、アルカリに対しては不安定になります。

ビオチンの働きと不足したときの症状

ビオチンは以下の働きがあり、著しく不足するとビオチン欠乏症を引き起こす可能性があります。

ビオチンの働き

  • 糖質がエネルギーに変わる「糖代謝」を助ける
  • 筋肉痛を緩和させる
  • 食欲不振を防止する
  • 皮膚や粘膜、髪や爪の健康維持
  • 爪や皮膚の強化

ビオチン欠乏症の症状

  • 脱毛
  • うつ
  • 皮膚炎
  • 湿疹
  • 疲労感
  • 結膜炎

ビオチン摂取量の目安について

ビオチンは過剰摂取してもすぐに尿と一緒に排泄されるため、基本的にはたくさん摂っても影響はないといわれています。ただし、哺乳動物が妊娠中に大量のビオチンを摂取すると、妊娠初期の胚死亡や、卵巣および胎盤の委縮が起こる場合もあるという研究結果が出ています。このため、妊娠中に大量のビオチンを摂取するのは控えたほうがよいでしょう。

ビオチンの食事から摂取する基準量とビオチンを含む食品は以下の通りです。

ビオチンの1日の推奨量(男女共通)

  • 0~5ヶ月 … 4μg
  • 6~11か月 … 5μg
  • 1~5歳 … 20μg
  • 6~9歳 … 30μg
  • 10~11歳 … 40μg
  • 12歳以降 … 50μg
  • 妊婦・授乳婦… 50μg

参考:日本人の食事摂取基準(2020年版)

ビオチンを多く含む食品

ビオチンは、おもに卵黄・牛レバー・大豆などの豆類・穀類に含まれています。一方で、果物や野菜にはあまり含まれていません。ビオチンを摂るうえで気をつけたいことは、生卵の食べ過ぎです。生卵の白身に含まれるアビジンというたんぱく質は、胃の中でビオチンと結びつくことで腸でのビオチンの吸収を妨げます。加熱するとアビジンとビオチンは結びつかないので、卵からビオチンを摂りたいときは、ゆで卵やスクランブルエッグなど、加熱した卵料理を食べることをおすすめします。

おわりに:ビオチンは皮膚や髪の健康に役立つビタミンです

ビオチンはビタミンB群の一種で、糖代謝の促進や皮膚・粘膜・髪の健康を維持する働きがあります。不足するとうつ症状が出たり、皮膚炎を起こしたりします。よほど大量に摂取しない限り、過剰摂取は起きませんので、大豆食品・加熱した卵・牛レバーなどを食べることでビオチン不足をある程度予防できます。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

ビタミン(29) ビオチン(5) ビオチンの働き(1) ビオチン不足(1)