経口補水液に含まれている成分は?利用するのはどんなとき?

2019/7/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

本格的な夏を迎えると、あちこちで見聞きするようになる熱中症対策。なかでも、「経口補水液」という名前はよく聞くのではないでしょうか。この記事では、経口補水液がどのようなものかや、どんなときに飲むとよいのかなどを解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

経口補水液ってどんな飲み物?

経口補水液は、人間の体液の電解質と糖質のバランスに近いようにつくられた飲みものです。電解質とは、水などに溶けているナトリウム、カルシウム、カリウムなどの塩類のことです。

人間のからだは、約50〜70%が水分からできています。からだに含まれる液体を体液といい、血液、髄液、唾液、消化液や唾液など、さまざまな液体があります。髄液は脳や脊髄を保護している大事な液体です。体液は、酸素や栄養素、老廃物を運んだり、臓器を守ったりすることで、生命維持に必要な働きを果たしています。また、汗をかくことで体温を調節して、一定の体温を保っています。

この体液が何らかの理由で失われてしまうと、生命維持に関わる機能までうまく働かなくなる可能性があります。経口補水液は失われた体液を、口から補給することに最も適する液体です。ペットボトルで身近な場所で購入できるもののほか、自宅で簡単につくることもできます。

経口補水液にはどんな成分が含まれているの?

経口補水液に含まれる成分は、糖分と食塩です。食塩には、ナトリウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムといった電解質が含まれ、糖分にはブドウ糖や果糖が含まれます。

経口補水液は、1940年台から研究されてきた経口補水療法(ORT)の考え方に基づいて調整されています。下痢やおう吐、発熱時の脱水状態の改善を目的として用いられる液体です。電解質が多く含まれ、吸収を高めるために糖は少量に抑えられています。

一方、スポーツドリンクは健康な人がスポーツや入浴後などに汗をかいて失った水分やミネラルを補うものとされています。そのため、組成は汗に近いものとなっており、美味しく飲めるように糖分も高めに配合されています。スポーツドリンクでは、経口補水液に比べて電解質の濃度は低く、糖分は約2.5~4倍と高くなっています

経口補水液はどんなときに飲む?

経口補水液は、脱水状態の改善を目的として飲む液体です。経口補水液を飲むことで、脱水状態を改善するための治療を経口補水療法といいます。

経口補水療法は、コレラによる脱水症の治療として注目されました。コレラは、コレラ菌が含まれる水や食べ物を食べることで感染します。コレラ菌が小腸に達して増殖すると毒素を生成し、下痢やおう吐を主症状として発症します。下痢便の量は、1日に数十リットルと大量の水分を失い、高度の脱水状態を招きます。コレラそのものの治療はもちろんですが、脱水状態の改善は命を守るためには重要となります。コレラは医療環境や衛生環境の整っていない国でみられていたことから、専門的な器具や技術がなくても、迅速かつ簡単にできる治療として経口補水療法が用いられたのです。

いまでは、経口補水療法はさまざまな原因で起こる脱水状態の治療として用いられています。脱水が軽度~中等度で、自分で飲み物を飲める状態であれば経口補水液を飲むことで改善したり、それ以上の悪化を予防することにつながります。

おわりに:脱水や熱中症対策には経口補水液を!

経口補水液は、人間の体液に近い組成を持った液体です。人間のからだの大部分を占める体液が水分が失われて脱水状態になると、最悪の場合には生命にも関わります。経口補水療法は、失われた体液を口から補充することで、脱水状態を改善する治療方法です。発展途上国におけるコレラの治療で注目されましたが、現在は、熱中症や感染症など様々な原因によって起こる脱水状態の予防や治療に用いられています。

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