記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
私たちの体を構成するアミノ酸にはいくつかの種類があり、そのひとつに「BCAA」と呼ばれるアミノ酸があります。この記事では、アミノ酸のうち「BCAA」に分類されるものについて、摂取による効果や、効率的な摂り方などをご紹介していきます。
BCAA とは Branched Chain Amino Acids の略で、その分子構造から、日本語では「分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸」と表現されるアミノ酸の一種です。人体で合成できず、食事から摂取して補うべき必須アミノ酸に分類されています。具体的にはバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類を指しています。
食品に含まれるタンパク質のうち、BCAAが占める割合は50%と非常に高く、さらに人間の筋肉をつくるタンパク質でも、BCAAが占める割合は約35%と高くなっています。上記から、BCAAは食品に多く含まれると同時に、筋肉増強に大きく関与するアミノ酸として知られているのです。
BCAAを食事から摂取することで得られる効果として、以下の2つを挙げることができます。
通常、運動中には筋肉が損傷して、筋タンパク質と筋肉でのBCAAの分解が進みます。運動前にBCAAを摂取すると、血中・筋肉中のBCAA濃度が上昇するため、筋肉中では新しく摂取したBCAAから優先的に分解される状態となります。
また、BCAAのうちロイシンには膵臓からのインスリン分泌を促進し、タンパク質の合成を大きくする作用があることもわかっています。
以上から、BCAAを運動前に摂取することで、筋肉中のタンパク質や既存のBCAAの分解を防ぐ作用が期待できます。
体の末梢ではなく、脳を主体となって疲労を感じている状態を中枢性疲労と言います。中枢性疲労は、疲労を感じさせるセロトニンという物質を作り出すアミノ酸の一種・トリプトファンが、血中から脳に送られることをきっかけに起こるとされます。つまり、このトリプトファンが血中から脳内に送られるのを止められれば、中枢性疲労を感じにくくなるというわけです。
血中のBCAAは、トリプトファンとほぼ同じルートで血液から取り込まれて、脳に送られる性質を持っています。これを利用し、BCAAを多く含むタンパク質を摂取し血中のトリプトファン濃度に対してBCAA濃度を高めておけば、中枢性疲労の予防・回復効果が見込めます。
このように、BCAAは筋肉と脳双方の疲労予防・回復に効果的なアミノ酸と言えます。
BCAAを効率よく、効果的に摂取するために、以下のポイントを押さえましょう。
BCAAに分類されるバリン、ロイシン、イソロイシンは、それぞれ別の食べ物に多く含有されています。BCAAを効率よく摂取したいなら、特定の食材に偏らず、動物性から植物性のものまでまんべんなく食べましょう。
食事に加え、プロテインでも効率よくBCAAを摂取したいときは、BCAAの含有量が高いホエイプロテインがおすすめです。ソイプロテインやカゼインプロテインに比べ、効率的にBCAAを摂ることができます。
ランニングやウォーキングなど、長時間の有酸素運動では、筋肉の分解が進みやすくなります。運動前にBCAAを摂取して、血中のBCAA濃度を高めておきましょう。
一方、筋力トレーニングを行う場合は、傷ついた筋肉の修復が行われるトレーニング後にBCAAを摂取すると、筋タンパク質の合成率が高まり筋肉増強効果が期待できます。トレーニングの内容や得たい効果により、BCAAの摂取タイミングも工夫するのが、効率の良いBCAA摂取のコツです。
BCAAは、日本語で分岐鎖アミノ酸と訳される必須アミノ酸の一種で、バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類のことです。人間の筋肉増強と修復に大きく作用するほか、脳が疲れを感じることによる中枢性疲労を予防・改善する効果もあるとされています。摂取のタイミングや摂り方を変えることで、BCAAは効率よく体に吸収できるようになります。期待する効果に応じて、うまく使い分けましょう。