記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2024/7/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
暑くなってくると、健康状態の良い人でも体調管理が難しくなります。糖尿病など慢性的な持病のある人は、特に夏の過ごし方に注意が必要です。今回は、糖尿病の人にとって夏が危険な季節である理由と、糖尿病の人が夏に気をつけたほうがよいことについて解説していきます。
日本の夏は気温と湿度の両方が高くなるため、屋外にいるだけで大量の汗をかきます。このため、健康な方でも、大量発汗で失った水分をしっかり補給しないと、脱水状態に陥り血液がドロドロになり、血流が悪化します。血流が悪化して滞ると、脳や心臓の血管が詰まることで発症する脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。なお、脳梗塞・心筋梗塞の発症リスクと糖尿病の相関性について、それぞれ以下のような報告が国内外でされているといわれています。
糖尿病がある人は健康な人に比べ、脳梗塞・心筋梗塞を発症しやすい傾向にあります。夏は、糖尿病以外の人でも脳梗塞・心筋梗塞の発症リスクが高まるため、もともとリスクの高い糖尿病の人にとって注意が必要な季節といえるでしょう。
脳梗塞や心筋梗塞は、いずれも血管が詰まり血流が著しく阻害される「梗塞」が原因で起こる病気で、この発症には動脈硬化が大きくかかわっています。動脈硬化は、動脈の最も内側の層にあたる内膜に大きなコブのようなものができることで血管が詰まってしまう病気です。内膜のコブは、タンパク質に包まれて血中に漂っているコレステロール「リポ蛋白質」からできています。リポ蛋白質は、血中の糖と結合して変化・酸化することで血管内膜に蓄積されていく性質を持っており、少しずつ蓄積されるうちに「プラーク」という塊となります。
なお、血中の糖の量が多い高血糖状態が続く糖尿病の人の方がプラーク形成が促進されやすく、血中のコレステロール値にかかわらず、慢性的に血糖値が高い糖尿病の人の方が、脳梗塞・心筋梗塞の原因である動脈硬化にもなりやすいといわれています。
糖尿病の人は、脳梗塞・心筋梗塞だけでなく、以下のような理由から熱中症のリスクも高いといわれています。
上記のような特徴は、高齢者や乳幼児とも共通しています。糖尿病の人は、のどの渇きを感じる前にこまめに水分を摂ったり、夏場は不要の外出を避けたりするなど、熱中症対策を怠らないようにしましょう。
夏は、水分をこまめに補給して脱水予防を心がけることが、脳梗塞・心筋梗塞・熱中症の予防につながります。のどが渇いていなくても、あまり汗をかいていないようでも、体内の水分は常に少しずつ失われています。また、補給した水分は20分ほどしないと血流に影響しません。以下に注意しながらこまめに水分を補給しましょう。
大量に汗をかく夏は、健康な人でも動脈硬化や脳梗塞・心筋梗塞、熱中症などを起こしやすくなります。もともと脳梗塞・心筋梗塞を起こしやすく、自律神経の働きが乱れやすい糖尿病の人には非常に危険な季節と言えます。糖尿病の人は、そうでない人に比べ脳梗塞や心筋梗塞、熱中症やこれらの原因である脱水症状を起こさないようこまめな水分補給を心がけ、食生活・運動習慣・睡眠習慣などの生活習慣も見直すようにしてください。