糖尿病だとインフルエンザが重症化しやすい?万一のときの対処法は?

2019/7/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

血糖のコントロールができなくなる糖尿病は、不調や合併症を引き起こしたり傷の回復を遅らせたりすることがあります。さらにインフルエンザ発症後の経過にも影響を及ぼすため、糖尿病患者さんは注意が必要です。この記事では、糖尿病とインフルエンザの関連について紹介します。

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糖尿病の人はインフルエンザにかかりやすいの?

近年の研究で、糖尿病を発症している人と発症していない人を比較したとき、インフルエンザの発症リスクに違いが認められるということがわかりました。カナダのアルバータ大学公衆衛生学部のジェフリー・ジョンソン教授らの研究で、糖尿病患者はインフルエンザの発症率が比較的高いという調査結果が出ました。調査データによると、糖尿病患者がインフルエンザのために入院するリスクは、糖尿病でない人より6%高い結果になりました。しかも調査では、糖尿病患者の方がインフルエンザ予防接種を受けている割合が高かったそうです。つまり予防接種を受けていない人と比較しても、糖尿病患者はインフルエンザ発症のリスクが高い傾向がみられます。

糖尿病でインフルエンザに注意したい方

血糖コントロールが正常でない方(HbA1cが高い)
インフルエンザを発症すると高血糖になります。血糖コントロールがより難しくなります。
糖尿病の合併症がある人
特に腎臓の機能低下や神経障害がみられる場合、体の抵抗力が弱くなっていますので注意が必要です。
糖尿病の高齢者
喉の渇きなど体調の変化を見逃しがちな人は気をつけてください。脱水症状や意識障害など重症に陥る可能性があります。
糖尿病の乳幼児、児童
糖尿病を発症しているかに関わらず、子供がインフルエンザに罹ると短期間で呼吸困難や意識障害など重症に陥る場合があります。糖尿病を発症していると、さらに注意が必要です。

新型インフルエンザにもかかりやすい!

インフルエンザにはさまざまなタイプがありますが、糖尿病患者は新型インフルエンザ、季節型インフルエンザのいずれも発症リスクが高い傾向にあります。

糖尿病の方はインフルエンザが重症化しやすい理由

糖尿病患者はインフルエンザ発症率が比較的高く、重症化するリスクも高いと考えられています。それは糖尿病が病気の回復や免疫機能に影響を及ぼすからです。

血糖値上昇が免疫機能を低下させる
高血糖になると、体内では白血球の働きが低下し免疫反応が弱くなります。インフルエンザへの抵抗力も弱まり、肺炎などの合併症を引き起こしやすいとされます。
インフルエンザ長期化を招く
糖尿病は、体の回復を遅らせます。インフルエンザに罹ったときも治りにくく、重症化する可能性が高まります。

インフルエンザによる高血糖とは?

インフルエンザを発症すると、血糖値が上昇することがあります。ただしインフルエンザの高血糖症状が、糖尿病を悪化させるわけではありません。インフルエンザによる高血糖は一時的なものですので、インフルエンザが治れば血糖値も元の状態に戻ります。

ただし、もともと糖尿病のコントロールがあまりうまくいっておらず血糖値が高い状態であった場合、インフルエンザによるさらなる血糖上昇によって糖毒性(血糖値が高いこと自体によって血糖を細胞の中に取り込みにくくなること)によって糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群を起こす可能性があります

インフルエンザにかかったときの対処法は?

糖尿病患者がインフルエンザを発症した場合、医療機関を受診した際に糖尿病であることを伝えてください。そうすることで、医師や薬剤師は適切な薬を処方できます。

担当医に伝えたい4つのポイント

  • 私は糖尿病です
  • 治療内容は〇〇です
  • 使用中の薬は〇〇です
  • 血糖値の測定結果

血糖値の測定結果については、ご自身で測っていたら値を伝えましょう。測っていない人は、測定を依頼してください。

自宅療養の注意点

医療機関から自宅へ帰宅したあとも、インフルエンザ完治まで気をつけてほしいことがあります。病気の重症化や身近な人への感染は防ぐようにしましょう。

重症化防止策

  • 自己判断でインフルエンザ治療を中断しない
  • 自己判断で糖尿病の治療を中断しない
  • 処方された薬は医師や薬剤師の指示に従って使用する
  • 血糖値、体温などは測定し記録する
  • 体を冷やさない
  • 安静にする
  • 水分補給はしっかりする
  • 食事はなるべく通常通り摂取する

感染防止策

  • インフルエンザ患者が過ごす部屋を用意し、そのほかの人との接触を少なくする(大人)
  • インフルエンザ患者の睡眠や食事は、そのほかの人を別の部屋でする(大人)
  • インフルエンザ感染者は、室内や自宅でも共用スペースではマスクを着用する

感染を防ぐことは大事ですが、インフルエンザ感染者が子供の場合は目を離さないでください。短期間のうちに症状が悪化する可能性があるため、保護者はマスクの着用などで感染対策をとりつつ、容体の変化を見逃さないようにしましょう。

外出、職場復帰の目安

解熱してから最低でも2日間は外出を控えてください。熱が下がったしてもウイルスがいなくなったとは限りません。職場復帰や登校、登園は控えます。

インフルエンザを予防するためにできること

糖尿病患者がインフルエンザに罹ると長期化や重症化のリスクがありますので、まずは予防がとても大切です。インフルエンザ予防で効果的だとされるのは予防接種です。

次に、手洗い、うがい、掃除です。洗剤や石けん、アルコール消毒液は、インフルエンザウイルスの感染防止に効果があります。インフルエンザのタイプや糖尿病発症状況に関わらず、インフルエンザの予防に取り組んでください。

インフルエンザ予防策

予防接種
予防接種を受けたところ、糖尿病患者の20%にインフルエンザ発症による入院リスクが減少した、という研究結果が報告されています。
手洗い
石けんを使用し、指の間、爪の間、手首まで丁寧に洗います。流水で15秒以上すすぎましょう。外出時など手洗いが難しい場合はアルコール消毒液などを使ってください。物を触ったあとに手洗いをせずに、目、鼻、口に触れると感染リスクが上昇します。
うがい
口の中の雑菌を洗い流します。水のうがいでも効果が期待できます。のどや鼻から侵入したウイルスは、およそ20分で口などの粘膜細胞から吸収されると言われています。こまめにうがいし、ウイルスの吸収を防ぎましょう。
掃除
感染経路になりやすい場所はアルコール消毒などで清潔を保ちます。ドアノブ、テーブル、イスの背もたれ、テレビのリモコン、パソコンのキーボード、携帯やスマートフォンはこまめに掃除するのがおすすめです。
感染者が使用したティッシュなどにウイルスが付着していることがありますので、ビニール袋などに入れてから捨てるとより予防効果が期待できます。なお掃除のあとは手洗いをしてください。

糖尿病の症状を悪化させないことも大切ですので、日々の体調管理や血糖コントロールを継続し、不安なことや不調を感じたら医療機関に相談してください。

おわりに:感染予防とともに、血糖値のコントロールにも取り組みましょう

糖尿病患者はインフルエンザの長期化・重症化のリスクが高く、感染予防に取り組むことが大切です。感染してしまったら、受診先の医療機関に糖尿病患者であることを伝え、医師の指示に従って治療を進めてください。

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