介護者の腰を守る移乗介助のコツ|福祉用具と環境調整で負担を減らす

2026/3/10

介護を続けるために介護者の体を守る

介護の現場では、移乗や体位変換、入浴介助など、腰に負担がかかる動作が繰り返されます。介護者の腰痛は、介護そのものの継続に影響するだけでなく、介護を受ける本人の安全にも関わります。在宅介護でも、家族が一人で抱え上げようとして無理をする場面が起こりやすく、早めに負担を減らす工夫が必要です。
大切なのは、根性で乗り切るのではなく、動作の設計と環境整備で負担を減らすことです。福祉用具を使うことは手抜きではなく、本人の安全と介護者の健康を守るための手段になります。

腰痛は複数の要因で起こる

厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針では、腰痛の発生要因は多元的であり、動作要因、環境要因、個人的要因、心理社会的要因などが関わると整理されています。腰痛を効果的に予防するには、作業管理、作業環境管理、健康管理、教育を総合的かつ継続的に行う必要があると示されています。
同指針では、腰痛発生が比較的多い作業の一つとして福祉医療分野等における介護看護作業が挙げられ、人を抱え上げる作業や不自然な姿勢を伴う作業では、作業の自動化や補助機器、福祉用具の導入などで腰部負担を軽減することが示されています。在宅では自動化は難しくても、用具と手順の工夫に置き換えることは可能です。

抱え上げない介助へ 用具と手順を整える

最も基本になる考え方は、可能な限り抱え上げないことです。ベッド、椅子、車いすの高さを揃え、本人が足で踏ん張れる状況を作るだけでも、介護者の負担は変わります。足を引きずる動作は摩擦が増え、本人の皮膚トラブルや介護者の腰への負担につながるため、スライディングシートなどの導入を検討します。
福祉用具は、移乗用ボード、リフト、手すり、歩行器など、状態に応じて選択肢があります。厚生労働省の腰痛予防対策リーフレットでは、介助作業ごとに腰痛リスクを評価し、リスクの高い作業から優先的に回避低減措置を検討する流れが示されています。在宅でも、ケアマネジャーと相談し、介護保険でレンタルできる用具がないか確認するとよいでしょう。
介助時の動作では、腰をひねらない、体から遠い位置で持ち上げない、前かがみ姿勢を続けないといった基本が重要です。可能なら二人介助に切り替える場面を決め、夜間や体調が悪いときは無理をしないルールを作ります。

痛みが出たときの対応と相談先

急に強い腰痛が出た、脚のしびれや力の入りにくさがある、排尿排便がうまくできないなどの症状がある場合は、早めに医療機関へ相談します。慢性的な痛みでも、痛み止めで無理を重ねると悪化しやすいため、動作や環境の見直しを優先します。
介護を受ける本人の状態が変わったときも、移乗方法の再設計が必要になります。ふらつきが増えた、立ち上がりが難しくなった、むせが増えて体力が落ちたなどの変化がある場合は、介護者だけで抱え込まず、訪問看護、リハビリ職、福祉用具専門相談員などと連携して安全な方法へ更新します。

まとめ 介護は仕組みで楽にする

介護者の腰痛予防は、抱え上げない介助、福祉用具の活用、環境調整、手順の共有で実現しやすくなります。痛みが出てから対処するのではなく、負担の大きい動作を見える化し、早めに用具や支援を導入することが、介護の継続と安全につながります。

引用・参照:
厚生労働省|職場における腰痛予防対策指針|2013|https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034pjn_1.pdf
厚生労働省|看護介護作業による腰痛を予防するためのリーフレット|更新年不明|https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/kaigokango_2.pdf

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