パラノイア(妄想性パーソナリティ障害)とは?統合失調症との違いは?

2017/10/31 記事改定日: 2020/8/21
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「妄想性パーソナリティ障害(パラノイア)」という病気をご存知でしょうか?被害妄想や誇大妄想など、妄想したことを現実のことと思い込んでしまう精神疾患の一種です。以降で詳しい特徴や原因、治療法などを解説していきます。

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パラノイア(妄想性パーソナリティ障害)とは

パラノイア(妄想性パーソナリティ障害)とは、妄想が長く続く精神障害のことです。一般的には、現実では起きていないことを妄想する状態が1カ月以上持続し、かつそれが他の精神障害が原因でない場合、パラノイアと診断されます。

パラノイアはその症状によっていくつかの類型に分けられます。「被害型」「嫉妬型」「誇大型」「被愛型」「身体型」の5種類があります。

被害型
誰かが自分に嫌がらせをしている、持ち物がよく盗まれるといったように、自分が何らかの被害を受けているという妄想をする
嫉妬型
そのほか、夫や妻、恋人といった愛する人が自分を裏切って浮気をしているという妄想をする
誇大型
何か偉大なことを成した人物であるなど、自分がとても優れた人間であるかのように妄想する
被愛型
自分が誰かに愛されていると思い込み、いわゆる「ストーカー行為」を行う。しばしば法律に反する行いをすることもあり、妄想された相手や家族など周囲の人を巻き込むケースも多い
身体型
体臭や口臭がする、極端に太っているなど事実とは異なる身体的な変化が生じていると妄想する。さまざまな病院の受診を繰り返す「ドクターショッピング」をすることも多く、日常生活に支障を来すこともある

統合失調症との違いは?日常生活への影響は?

パラノイアと似た精神疾患として、統合失調症があります。
パラノイアと統合失調症は、妄想を生じさせるという点は共通しています。ただ、統合失調症の場合は、妄想以外にも下記のような症状が現れます。

  • 幻覚や幻聴、感覚過敏、意味不明な言動、意欲の低下、感情の起伏 など

パラノイアではこのような症状は基本的にあらわれません。このため、統合失調症よりも軽い精神疾患ととらえられがちですが、それだけに病気だと認識されにくい疾患でもあります。

また、パラノイアの場合は妄想以外の部分では通常の人と変わらないように生活が送れるため、本人も周囲の人たちも精神障害の存在に気付きにくいという点も、統合失調症との相違点のひとつと言えます。

パラノイアの発症原因は?脳の異常は関係あるの?

現在のところ、妄想性障害(パラノイア)の発症する原因はまだ明らかになっていません。
ただ、脳の機能の問題、遺伝、その他の要因が考えられます。

脳の機能の問題

たとえば事故や怪我によって脳が損傷したり、脳内の伝達物質に異常が生じることにより、パラノイアが生じることがあるのではないかといわれています。

遺伝

統合失調症になった人が近親者の中にいる場合、パラノイアを発症する確率が高いことから、遺伝も原因の一つと考えられています。

その他の要因

家庭での生育環境上の問題や、社会の中での辛い体験などがパラノイアを引き起こす場合もあると言われます。

パラノイアの治療法は?薬物療法の効果は?

パラノイアの治療は、現在ではまだ難しいといわれています。その理由としては、本人が病気だと認識しない場合が多いこと、原因がまだはっきりとわかっていないことなどがあります。

薬を服用しても効果が出にくいことも、治療が難しいとされる大きな理由の一つです。そのため、パラノイアから回復するためには、薬を服用しながらカウンセリングを受けるといった医療機関での治療だけではなく、家族や周囲の人たちの協力が欠かせないでしょう。

もし、周囲の人が患者さんの妄想した内容を否定すると、患者さんはより疑いの気持ちを深めて攻撃的な行動をとってしまう恐れがあります。
一方、肯定するとその人に強く依存してしまう可能性があります。そのため専門家と相談しながら慎重な対応を取りつつ、少しずつ患者が回復して行くように進めて行くことが重要です。

おわりに:対処法が難しいパラノイアは、病院で相談することが大切です

パラノイアは、統合失調症と比べて目立った症状が少ないため、発見や認識が遅れがちです。現在のところ、まだ治療法も確立されておらず、接し方にも注意点が多いため、対処が難しいのが特徴です。もし、身近にパラノイアの疑いのある方がいる場合は、まずは病院で相談してください。

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