記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/1 記事改定日: 2019/5/31
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
プリオン病とは、脳に異常なタンパク質(プリオン蛋白)が溜まり、脳神経の細胞に異常が起こる病気です。
クロイツフェルト・ヤコブ病が代表的ですが、他にもゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病と致死性家族性不眠症があり、どれも治療方法が見つかっていません。この記事ではプリオン病の基礎知識の解説をしています。
脳に異常なプリオン蛋白が沈着し、脳神経細胞の機能が障害される一群の病気のことをプリオン病と呼びます。
プリオン病には
の3種類あります。
これらは3つとも、脳に異常な蛋白質(プリオン蛋白)が蓄積し、脳神経細胞の機能が障害され脳に海綿状の変化が出現する疾患です。
プリオン病は致死性疾患であり、いまだに有効な治療法は無く,プリオン病の約 80% を占める孤発性古典型 CJD は症状の進行が早く,発症から 3~7 カ月で確実に無動性無言になり、多くは肺炎などの合併症で死亡します。
上記で紹介したプリオン病の3つの病気を項目に分けて以下にまとめました。
この病気の原因は、プリオンと呼ばれる感染因子であり、その本体は異常なプリオン蛋白であると考えられています。どのような機序で感染し発症するのかは分かっていません。特殊な事例として、この病気で亡くなった人の角膜や脳硬膜を移植された人が発症した例や、牛海綿状脳症(BSE:狂牛病)がヒトに感染した疑いのある例が挙げられます。
この病気の原因はプリオン蛋白遺伝子に異常があることで、患者さんの脳内には異常なプリオン蛋白が多く見受けられます。しかし、なぜ異常なプリオン蛋白が脳を障害するのか、詳細は解っていません。
ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病と同様、脳のプリオンタンパク遺伝子に異常が確認されていますが、主症状や病変部はクロイツフェルト・ヤコブ病やゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病とは異なります。
3つとも、発病した人の家族の中に同じ病気を発病したケースもありますが、発病しないケースも多く、遺伝するかどうかについては不明な点が多いのが現状です。また、遺伝子に異常がある人全員が発病するわけではなこともわかっています。
行動異常、性格変化や認知症、視覚異常、歩行障害などが発症します。数カ月以内に認知症が急速に進行し、しばしば不随意運動が生じます。
発病より半年以内に自発運動はほとんどなくなり、寝たきりの状態となります。多くの場合は急速に進行し、発病後数ヶ月以内で寝たきりになり、その後、全身衰弱、呼吸麻痺、肺炎などで死亡します。
主症状は、プリオン蛋白遺伝子変異の部位によって多少異なります。コドン102番に変異のある人は酔っぱらいのような歩行障害や四肢の運動障害を発症します。
また、コドン105番に異常のある人は、両下肢の突っ張るような歩行障害を発症することが多いようです。
いずれもやがて認知症が徐々に出現し、起立、歩行が出来なくなり寝たきりの状態となります。この病気は、発病後2~10年に全身衰弱、肺炎などで死亡します。
この病気は、視床と呼ばれる脳の部位が侵されます。進行性に眠れない、夜に興奮状態に陥る、幻覚、記憶力の低下、体温の上昇、汗を大量にかいたり、脈が速くなったりします。やがて認知症や、けいれんを呈するようになり、1年前後で意識がなく寝たきりの状態となります。この病気は、発病後2年以内に全身衰弱、肺炎などで死亡することが多いです。
プリオン病は、異常プリオン蛋白に感染することで発症します。
感染経路は大きく分けて2つあり、1つは異常プリオン蛋白に汚染されたヒト由来の硬膜や角膜、成長ホルモン剤などを使用することによる「医原性」のものです。そして、一方は、海綿状脳症(BSE)に感染した牛の脳や脊髄などを口にすることで感染する「変異型」のものです。
現在、医療の現場でも用いるヒト由来の組織や薬剤は厳重な検査を行った上で使用されますので、医原性プリオン病の心配はほぼなくなりました。また、変異型プリオン病も輸入牛などの検査がしっかりなされていますので、日本国内で出回っている肉類を食べて異常プリオン蛋白に感染することは皆無といってよいでしょう。
しかし、海外では未だに異常プリオン蛋白に対する検査が十分になされないまま食品が出回っていることもありますので、プリオン病患者が多い国に旅行に行った際にはむやみに肉類や安全性の分からない食品を食べないよう注意しましょう。
プリオン病は発症要因などの多くに不明点が多く、治療方法も見つかっていません。他の人への感染リスクもあるため、医療機関を受診するときは、担当医に必ずプリオン病であることを伝える必要があります。