全身性エリテマトーデスの症状の特徴とは?

2017/12/13 記事改定日: 2020/2/19
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫疾患であり、膠原病の一種です。完治できる治療法は確立されていませんが、早期に治療を始めれば、ある程度症状をコントロールできるとされています。SLEの症状を解説していくので、早期発見のために役立ててください。

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全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Eryhtematosus: SLE)は、自分の体の成分と反応してしまう抗体(自己抗体)が、全身のさまざまな臓器を攻撃する自己免疫疾患で、膠原病の一種です。

この病気の患者の95%以上は、血液中に抗核抗体(Anti Nuclear Antibody:ANA)をもっていて、これが自分自身の細胞中の核と反応し、免疫複合体という物質を造り、全身の皮膚、関節、血管、腎臓などにたまって病気を引き起こすと考えられています。

SLEの原因は、完全には解明されていません。Bリンパ球が異常に活性化して自己抗体が作られ、複数の遺伝的要因が関与し、さらに感染症や紫外線、妊娠、外傷、薬剤アレルギーなど何らかのきっかけが加わり、免疫のバランスが崩れることで発症すると推測されています。

SLEは、厚生労働省が指定する特定疾患の1つであり、特に20代から30代の若い女性に多いとされ、日本では約5万人の患者がいると考えられています。現在では早期の診断が可能となり有効な治療法が確立されてきたため、予後は改善されています。

全身性エリテマトーデスの症状の出かたの特徴

多くの臓器がターゲットとなるため、症状は多彩です。
発熱、全身倦怠感、疲労感、食欲不振、体重減少などの全身症状に加え、関節炎・皮疹(蝶形紅斑や円板状紅斑)、精神神経症状、腎障害、心臓や肺の病変、血液検査の異常などがみられます。

さまざまな症状が一度に、あるいは次々に出現しながら、よくなったり(寛解)悪くなったり(憎悪)を繰り返します。

皮膚・粘膜の症状

鼻から頬にかけて現れる蝶が羽を広げたときの形に似た皮疹(蝶型紅斑)は、SLEを代表する症状です。皮膚に触れると、発疹が重なりあい、少し盛り上がっているという特徴があります。また、円板(ディスク)状に発症し、中心の色素が抜け角化しやすいディスコイド疹も発生頻度の高いといわれています。

その他、強い紫外線を受けた後に皮疹や水ぶくれ(日光過敏)が見られることがあったり、冬季でないのにしもやけ様の皮疹(凍瘡様皮疹)が現れることも特徴的な症状といえるでしょう。

関節、腎臓、中枢神経etc・・・の症状

関節の症状としては、約90%のケースで関節炎が生じ、手や指が腫れ、痛みを伴います。肘、膝などの大きな関節に、日によって場所が変わる移動性の関節炎が見られることもあります。関節症状が長期にわたり持続すると、関節の変形(ジャクー関節症)も稀に起こりますが、骨破壊を伴わない点で関節リウマチとは異なります。

腎臓の症状

腎臓の症状は千差万別で、無症状に近い場合もあれば、確実に進行して致死的となる場合もあります。初発症状は足や顔のむくみで、進行すると、顔や全身もむくみ、体重が増え、そのうちに高血圧も出現します。これらはいずれも腎炎からくる症状の可能性があるため注意が必要です。

腎臓の中にある糸球体に免疫複合体が沈着するため、腎臓障害が約50%に現れ(ループス腎炎)、放っておくと重篤になり、ネフローゼ症候群や腎不全に進展して透析を要する場合もあります。

中枢神経の症状

中枢神経症状(中枢神経ループス)もSLEを代表する症状です。多彩な精神神経症状が現れますが、特に、うつ状態や妄想などの精神症状と、片頭痛、てんかん発作、けいれん、脳血管障害が多くみられます。

心肺の症状

心肺の症状としては、心臓を覆う心膜の炎症(心膜炎)による胸痛が比較的多く見られます。この場合は、心臓のまわりに水がたまり、心臓を圧迫することがあります(心タンポナーデ)。肺の炎症(ループス肺炎)や、致死的な肺の出血(肺胞出血)、肺高血圧症などの難治性病態もまれに認められることがあります。

全身性エリテマトーデスの初期症状は?どんな変化に注意すればいい?

全身性エリテマトーデスでは、初期症状として次のような兆候や身体の変化が見られます。気になる項目が多い人は、放置せずにできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。

  • 原因不明の発熱
  • 全身倦怠感
  • 疲労感
  • 関節痛
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 頬の紅潮
  • 難治性の口内炎
  • 腹痛や吐き気

全身性エリテマトーデスの治療の進め方と日常生活の注意点は?

全身性エリテマトーデスは一度発症すると完治は難しく、上で述べたような症状を抑えることを目標とした治療を行っていく必要があります。
治療は基本的には過剰な免疫反応を抑えるためにステロイド薬の内服ば行われますが、ステロイド薬のみでは効果がない場合、ステロイド薬による副作用が強い場合は免疫抑制剤が使用されることがあります。
また、そのほかにも近年では全身性エリテマトーデスの新しい治療法として、これまで認可されていなかったタイプの免疫抑制剤やベリムマブと呼ばれる全身性エリテマトーデスによる炎症を特異的に抑える作用のある薬などが使用されるようになっています。

一方、日常生活の中では正しい治療を継続していくのはもちろんのこと、疲れやストレスを溜めず規則正しい生活を心がけることが大切です。また、全身性エリテマトーデスで現れる皮疹は紫外線に当たると悪化しますので、皮疹ができているときは不要な外出を控える・日傘や帽子などによる紫外線対策を徹底するといったことに注意しましょう。

おわりに:特徴的な症状を見落とさず、気がついた段階ですぐに受診しよう

蝶型発疹やディスコイド疹など、SLE特有の皮膚症状が現れたらすぐに病院を受診しましょう。またループス腎炎や中枢神経症状などは、放置しておくと病態の重篤化を招きかねません。以前と異なり早期診断、早期診療が可能となっているので、適切な処置を速やかに受けることが大切です。

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