記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/5/24 記事改定日: 2018/2/19
記事改定回数:1回
膀胱炎になったときの代表的な治療薬である抗生物質(抗菌薬)。
症状の改善が服用から1~2日後と比較的早いことからも心強い治療薬ですが、どのような種類があるのか、また、正しい飲み方や注意点を知っていますか?
この記事で、膀胱炎治療のための抗菌薬の種類や正しい飲み方を見ていきましょう。
膀胱炎は尿道や膀胱、腎臓に細菌が増殖することで起こる感染症で尿路感染症のひとつです。誰でもかかる可能性がありますが、一般的には男性よりも女性の発症率が高いです。また、膀胱炎の再発に悩まされている人も多くいます。
代表的な症状は<尿の回数が多くなる、排尿時の痛みや不快感、突然尿意を催す、完全に尿を出し切っていない感覚(残尿感)がある、下腹部の痛み、尿のにごりや悪臭、血尿が出る>などです。
また、腎臓や腎臓と膀胱をつなぐ尿管での感染は、上部尿路感染症と呼ばれ、上記の症状に加えて<38℃以上の高熱、わき腹や背中の痛み、悪寒、吐き気、嘔吐>などの症状が見られます。
膀胱炎そのものは、通常それほど深刻ではありませんが、上部尿路感染症は腎臓に損傷を与えたり細菌が血流にまで広がる可能性があるため、未治療のまま放置すると深刻な状態になる可能性があります。
医師の判断によりますが、病院では尿検査によって膀胱炎と診断されると抗生物質(抗菌薬)が処方されることが多いです。
抗菌薬は膀胱炎をはじめとする感染症の治療に使われ、感染症の原因である細菌を殺してくれる効果があります。通常は抗菌薬を服用し始めてから1~2日以内に症状の改善が見られることが、膀胱炎の症状は治療を開始してからおよそ3~5日以内に治ることがほとんどです。
(※ただし症状が改善しても処方された抗生物質は途中でやめずに飲みきるようにしてください)
体の奥の方にある感染症の場合は効いてくるのに少し時間がかかることがあります。
抗生物質(抗菌薬)の服用で症状が悪化したり、3日以上たっても症状が改善しない場合には医師に相談してみましょう。
また、抗菌薬の中にはお腹の赤ちゃんに影響を及ぼすものもあるので、妊娠中の場合や妊娠を考えている女性はそのことを医師に伝えましょう。さらに、抗菌薬による治療中は普段以上に日焼け対策を万全にすることをおすすめします。というのも、抗菌薬の中には肌を太陽光に対して敏感にさせてしまう作用があるものがあるからです。
特に、肌の弱い人は注意しましょう。
膀胱炎の治療によく使用される抗生物質(抗菌薬)として「シプロフロキサシン・レボフロキサシン」「ホスホマイシン」「トリメトプリム、スルファメトキサゾール(ST合剤)」があげられます。
以下に、それぞれの特徴と副作用を紹介します。
シプロフロキサシン・レボフロキサシンはニューキノロン系薬という分類のひとつで、薬を投与したときに効率よく腸から吸収されて血液中へと移行することと、ひとつの薬剤で多くの細菌を殺すことが特徴です。ただし、副作用として<じんましん、運動後の突然の痛み(特に、足首、膝または脚の裏、肩、ひじ、または手首)、痛み、ひりつき、しびれ、うずき、失神、不整脈などが現われる可能性があります。
ホスホマイシンは他の抗生物質と併用することで相乗効果が高まり、特に多剤耐性の黄色ブドウ球菌や大腸菌の殺菌に有効で、セファロスポリン系の抗生物質との併用効果が大きいです。
副作用としては<じんましん、血が混じったもしくは重度の下痢が出る、視野の変化、重度の腹部の痛み、肌や目が黄色くなる(黄疸)>などの症状が生じる可能性があります。
薬剤を服用してからそのような症状がある場合は、すぐに医師に連絡し診察を受けてください。
また、下痢、めまい、頭痛、疲労感、食欲不振、腟の炎症及び不快感や痛みも抗菌薬全体に共通した副作用です。
他の薬剤と同様に、抗生物質(抗菌薬)にも服用に関する注意点があります。
以下に代表的な注意点を紹介するので、抗生物質(抗菌薬)を飲むときの参考にしてください。
抗生物質の服用を忘れた場合は、気づいた段階で出来る限り早く服用しましょう。
ただし、次の服用のタイミングまでにほとんど時間がない場合は、飲み忘れた分は飛ばして、普段の服用のスケジュールを守るようにしましょう。飲み忘れた分を補うために、一度に2倍の量をとらないようにしてください。処方された量の2倍摂取すると副作用が起きる可能性が高まるからです。
間違って2倍の量を飲んでしまった場合には、胃の痛み、下痢、吐き気や嘔吐などの副作用が起きることもありますが、一般的には深刻な副作用は起こらないことが多いです。
ですが、副作用が重症化した場合にはすぐに病院に行きましょう。
特定の病状を持つ人や妊娠中・授乳中の女性の場合は特に、避けたほうが良い抗生物質があります。そのため、友人や家族に処方されたものも含めて、ご自身に処方された抗生物質(抗菌薬)以外は服用しないようにしてください。
また、経口避妊薬(ピル)やアルコールなどの他の医薬品に予期せず反応する可能性もあるため、抗生物質(抗菌薬)以外に服用している薬剤がある場合は必ず医師に伝えてください。
治療の効果を最大限に得るためには医師の指示に従って、抗生物質(抗菌薬)を飲む必要があります。
途中で飲むのやめたり、医師のアドバイスとは違う飲み方をすると薬が正しく作用しないことがあるためです。ただし、医師の指示に従った上で副作用があるときは迷わず相談し、ご自分の体質や状態にあった治療に変えていきましょう。