記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/11/10
記事監修医師
前田 裕斗 先生
昼間は機嫌よく遊んでいたのに、外が暗くなってくるころになると急に泣き出してしまう赤ちゃんは珍しくありません。こうした現象を黄昏泣きと呼ぶことがありますが、突然の激しい泣き叫びや手足のじたばたに困ってしまうお母さんも多いものですよね。
この記事では、黄昏泣きとはどんなものか、また、黄昏泣きの赤ちゃんを寝かしつけるために何ができるのかについて解説します。
黄昏泣きとは、生後2〜3ヶ月ごろから生後6ヶ月ごろの赤ちゃんが、夕方ぐらいになると突然、特に原因がないのに泣き出す現象のことです。ミルクもあげていて、おむつを見ても濡れているわけではなく、ミルクを飲んだ後のゲップもさせているにも関わらず、大きな声で泣き続けるので、お母さんはわけがわからず疲れてしまうこともあります。
黄昏泣きは、30分程度から数時間、夕方ぐらいから時には真夜中にまで及ぶこともあります。専門的には「鳴き声発作」や「コリック」と呼ばれ、1日に3時間以上、1週間に3日以上、3週間以上続くとする定義もあります。また、男女の差や、母乳かミルクかで発症の頻度に差はないといわれています。
「コリック」という単語は「疝痛」と和訳されることがあります。コリックと疝痛の定義は曖昧で、線引きされていないのが現状です。疝痛は原因が完全にはっきりしているわけではないですが、お腹にガスが溜まって腹痛が起こるため生じるとされます。一方黄昏泣きは泣き止まないことそのものを指しますから、黄昏泣きをしている赤ちゃんのうち、一部には疝痛を訴えて泣いている子がいる一方、黄昏泣きが全て疝痛が原因で起こっているわけではないと言えるでしょう。
また、あまりにも黄昏泣きが酷い赤ちゃんだと、短気だったり癇癪持ちだったりするのではないか?と赤ちゃんが成長したときの性格が心配になってしまうお母さんも多いですが、黄昏泣きと赤ちゃんの性格に関連性があるという医学的なエビデンスはありません。
黄昏泣きのはっきりとした原因は、まだわかっていません。乳幼児の生活環境や、発育の様子から推測される理由としては、以下のようなものがあります。
赤ちゃんにとっては、世界は未知のものばかりです。見るもの全てが新しく、常に新しい情報が入ってくるため、そのストレスを発散する必要があると考えられています。また、大人のように自分の体力を考えて遊ぶということももちろんできませんので、昼間に全力で遊んだ疲れが夕方に出てしまい、不機嫌になってしまうことも考えられます。
母乳やミルクに含まれている成分でアレルギーを起こしている場合もあります。嘔吐や下痢などの症状が合わせて見られた場合は、病院で相談してみましょう。また、タバコの煙や匂いに敏感に反応している場合もありますので、タバコを吸う人が身近にいる場合、赤ちゃんのいないところで吸ってもらい、赤ちゃんに近づくときはできるだけタバコの匂いがしないように気をつけましょう。
お腹にガスが溜まっていて苦しい場合、疝痛である可能性があります。泣くときにたくさんの空気を吸い込んでしまったり、食後に上手にゲップができなかったりして、お腹に空気やガスが溜まりやすいことが原因とも考えられています。
また、赤ちゃんは黄昏泣きではなく、理由があって泣いている場合もあります。体調が悪い、空腹、甘えたい、おむつが濡れて気持ち悪い、暑い・寒いなど、まずは明確な理由がないかどうか確認し、理由がある場合はその理由を取り除いてあげましょう。
黄昏泣きは、通常の泣き方と大きく変わるものではありませんが、以下のような特徴が見られることが多いです。
顔が真っ赤になる、こぶしを握りしめる、背中を反らしている、は全て力が入りすぎたときの泣き方で、腕や足を振り回すのは興奮しているときの泣き方です。これらはいずれも黄昏泣きに特有のものではありませんが、おむつや空腹など、明確な理由がないのにこうした激しい泣き方をしている場合は、黄昏泣きと考えられます。
黄昏泣きとよく似た名前の症状に、夜泣きというものがあります。夜泣きも明確な理由がなく赤ちゃんが泣き出すという点では黄昏泣きと似ていますが、泣き始めるのが夕方ではなく夜中であること、赤ちゃんの月齢、などが違います。
黄昏泣き | 夜泣き | |
---|---|---|
泣き始める時間 | 夕方ごろ | 夜中 |
赤ちゃんの月齢 | 新生児〜生後6ヶ月程度 | 生後6ヶ月〜2歳ごろ |
黄昏泣きは遅くても生後6ヶ月ごろを過ぎると落ち着いてくる赤ちゃんがほとんどですが、夜泣きは生後6ヶ月ごろから起こります。ですから、赤ちゃんの中には黄昏泣きが終わったと思ったら夜泣きが始まる赤ちゃんもいて、お母さんは疲れてしまうことも多いです。お母さん自身も適度に休憩を取れるよう、周囲の協力を仰ぐ、思いきって少し泣かせっぱなしにしておくなど、上手に対応していきましょう。
また、生後6ヶ月ごろとは「昼=起きて活動する時間」「夜=寝る時間」といった生活リズムが少しずつでき始めてくるころです。赤ちゃんにとっては環境や体の変化がぐっと大きくなる時期で、変化に対応しきれず夜泣きが起こっているのではないかという説もあります。
黄昏泣きの赤ちゃんに対しては、絶対に泣き止むという対処法は残念ながらありません。しかし、その子に合わせて気分がよくなるようなことをしてあげましょう。具体的には、以下のようなことをしてあげるのがおすすめです。
大人と同じように、赤ちゃんにもそれぞれ個性があり、好きなことも嫌いなことも違います。赤ちゃんが黄昏泣きをしていたら、その子の好きなこと、ご機嫌になることをしてあげましょう。おくるみでくるむと、子宮の中にいたような姿勢になれて安心する子もいれば、優しく話しかけたり、子守唄を歌ってあげたりすると落ち着く子もいます。また、お腹がすいて泣いているようであれば、授乳のスケジュールに関わらず、母乳やミルクを飲ませてあげましょう。
黄昏泣きは、生後5ヶ月ごろから自然に消えていくことが多いです。一般的に生後2〜3ヶ月ごろに黄昏泣きが始まり、その頃をピークに少しずつ落ち着いていくようです。しかし、これも個人差があり、早ければ生後3週目ぐらいから始まってしまう子もいますし、長いと生後7ヶ月ごろまで続く子もいます。
また、黄昏泣きをしない赤ちゃんや、していても激しく泣いたりぐずったりすることがなく、お母さんが気づかずに過ぎていることもあります。黄昏泣きをしているから、またはしないからといって、赤ちゃんの成長に何ら問題があることではありません。
黄昏泣きをしている赤ちゃんは、興奮して力いっぱい泣いています。ですから、お母さんはできるだけその興奮状態を落ち着かせてあげるような対処をするのが良いです。ご機嫌になってくれることは一人一人違いますから、普段の遊びやスキンシップの中で、赤ちゃんが好きなことをたくさん見つけてあげましょう。