記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/11 記事改定日: 2018/4/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠した場合、定期健診、マタニティウェアなどを含め、出産までにはどのくらいの費用がかかるものなのでしょうか?以前は、健診や分娩入院費にまとまった費用が必要でしたが、最近は、自治体の助成が拡大してきています。
この記事では、妊娠・出産でかかる費用と助成金・医療費控除について解説します。
出産にかかるお金は大きく分けて、4つに分類されます。
妊娠期間中、欠かすことができないものが妊婦健診です。平均して10回以上受診し、だいたい10万円くらいかかります。
妊娠初期は4週間に1度、中期は2週間に1度、後期は1週間に1度、病院で健診を受けます。病院により、内容や金額に違いがありますが、大きく異なることはありません。
・費用:1回あたり約5000円
・回数:13~16回
※血液検査や超音波検査は別途費用がかかります。
マタニティ用品が平均して5万円前後、ベビー用品を揃えると、約10万円程度かかります。
最近は、ベビー用品はお下がりやレンタル、リサイクル、オークションなどを利用して、安く揃えようとする傾向があります。初めての赤ちゃんの場合、いろいろと揃えたくなるものですが、最初から一気に買い揃えず、必要に応じて買い足すようにしてもいいかもしれませんね。
ただし、マタニティ服は着る期間が短いため、ゆったりした服でアウターを間に合わせる人もいますが、インナーは専用のものを選ぶことをおすすめします。
病院や入院する部屋によって違いがありますが、40~50万円ほどかかります。
すべて合わせると、大体50~100万円ぐらいのお金が必要になります。
出産に必要な費用がすべて合わせると50~100万円とういのは高いように見えるかもしれません。ですが、様々な助成制度を利用することで、負担がかなり軽減されます。
妊娠・出産にかかる費用は健康保険が使えないため、1回あたり5000円程度、検査が多いと1万円を超える場合もあります。
日本では妊婦健診の回数はかなり多いため、一見負担が大きいと感じるかもしれませんね。しかし、最近では、かなりの部分が公費で助成されるようになっています。
内容や金額は自治体によってさまざまなので、妊娠届を提出し、母子健康手帳と「妊婦健康診査受診票」を受け取ったら、助成内容をしっかり確認してください。
分娩入院費は健康保険が適用されないため、平均して50万円前後の費用が必要です。しかし、健康保険に加入している場合、健康保険から42万円の出産育児一時金が給付されるため、実質的な負担は数万円程度になります。
出産時の負担を軽減するための公的な補助制度があります。代表的なものを以下に挙げますが、自治体によって違いがあるので、必ずお住まいの自治体で確認してください。
妊娠・出産費用のサポートのため、1児につき42万円、健康保険から支給されます。
産休中の生活をサポートするため、勤務先の健康保険から標準報酬日額の3分の2が支給されます。
治療費が自己負担限度額を超えた場合に支給されます。ただし、自然分娩では使えません。
一世帯の医療費の支払いが年間10万円を越えた場合、確定申告するとお金が還付されます。
近年、帝王切開は世界的に増加傾向にあり、日本では約16%が帝王切開による出産といわれています。帝王切開にかかる費用は50~75万円で、自然分娩に比べ高額になります。
医療保険に加入していれば、帝王切開は手術給付金の支払い対象となりますが、妊娠が判明した後に医療保険に加入する場合は、ほとんどの場合、帝王切開の給付金は出ないので注意してください。
帝王切開は高額療養費申請の対象となります。
高額療養費の申請は、加入している健康保険組合から給付されますが、限度額適応認定申請書を健康保険組合に提出する必要があります。職場で健康保険に加入している場合には職場が手続きすることもあります。
帝王切開の予定が決まっている人は、事前に申請することも可能で、この場合には限度額適用認定証が交付されます。帝王切開で入院するときにこの認定証を病院に提出すれば、限度額以上の料金を請求されることはありませんから、予定が決まっている人は事前に申請しておくことをおすすめします。
また、緊急で帝王切開になった場合でも出産後に申請することができます。この場合には、健康保険組合に、申請書とともに病院での領収書を添えて提出すると、後日限度額以上に支払った金額が指定した口座に振り込まれます。
ただし、入院時の差額ベッド代や食事代は含まれず、事後の申請は二年以内に行わなければなりません。また、収入によって限度額が異なるため、高収入の人は医療費よりも限度額の方が高く適応されないこともありますから注意しましょう。
妊娠・出産によって発生した健診や入院の費用は医療費控除の対象になります。
医療費控除とは、生計を共にする一世帯の年間の医療費が10万円を越えた場合に、その超えた分の金額を控除できるという制度です。
この医療費には、病院でかかった費用だけでなく、自分で購入した医薬品や通院で病院への交通費なども含まれています。
妊娠・出産では妊婦健診の補助券や出産一時金など多くの補助がありますが、切迫早産での入院や出産時のトラブルによっては補助される額を大幅に超えることもあります。補助される額以上にかかった費用は医療費控除の対象となりますので、病院での領収書や交通費のメモなどは忘れずにとっておきましょう。
ただし、出産にかかった費用が全て医療費控除の対象となるわけではありません。公共交通機関を使用したときや破水などの緊迫した状況でのタクシー代は対象となりますが、自家用車のガソリン代や駐車料金は対象外です。
また、出産に伴って必要になるベビー用品も対象ではありませんが、赤ちゃんに異常があった時の医療費や交通費、薬代などは対象となります。
医療費控除の対象になるかわからない場合は、税務署や税理士に相談してみましょう。
妊娠・出産には、ベビー用品や出産時の入院費だけでなく、妊婦健診などの費用がかかります。もし帝王切開になった場合は、さらに費用がかかってしまうでしょう。
でも、助成金や給付金、医療費控除などを利用することで、費用はかなり抑えられるのです。
助成金や医療費控除の制度をきちんと理解して、経済的な負担を抑えて安心して出産を迎えられるようにしてください。