ストレスで起こる心身の変化とセルフチェックの方法について

2025/1/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ストレスを長期間受けると、疲れを感じたり、寝ようとしても眠れなくなったりするなど、心身に不調をきたします。この記事では、ストレスを長期間受けたときに起こる心身の変化と、ストレスのセルフチェックについて、対処法もあわせて解説していきます。

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ストレスで起こる心身の変化について

ストレスを広辞苑で調べてみると、以下のように定義されています。

種々の外部刺激が負担として働くとき、心身に生ずる機能変化。ストレスの原因となる要素(ストレッサー)は寒暑・騒音・化学物質など物理化学的なもの、飢餓・感染・過労・睡眠不足など生物学的なもの、精神緊張・不安・恐怖・興奮など社会的なものなど多様である。

ストレスは圧力にも例えられ、小さな圧力なら跳ね返したり、へこんでもすぐに元に戻すことができますが、大きな圧力がかかるとへこんだまま元に戻らなくなったり、壊れてしまったりします。

生きている以上、ストレスは多かれ少なかれ誰にでもかかるものですし、適度なストレスは、ある程度受け流したり発散したりしながら、うまく付き合っていくことも必要です。しかし、大きすぎるストレスからは逃げることも大切であり、あるレベルに達するとそれ以上遂行能力が上がらなくなり、横ばいの状態になり、さらに強いストレスがかかると遂行能力は一気に低下します。

例えば、昇進や軽い運動など、適度な強さ・間隔でかかるストレスは心身ともに良い変化をもたらしますが、これが発散されないまま溜まっていったり、突然の強いストレスにさらされたりすると遂行能力は頭打ちになり、やがて一気に下がってしまいます。

ストレスはあればあるほど良いというわけではなく、適度なレベルを見極める必要があります。そのためには、自分に受け止めきれないレベルのストレスがかかっているかどうかに早めに気づかなくてはなりません。ストレスがかかりすぎると、遂行能力の低下とともに、以下のように心身に悪い変化が現れます。

精神面
悲しさ、憂鬱になる
不安感、イライラ、緊張
無力感、無気力(やる気が出ない)
体調面
食欲がない、やせた(やつれた)
寝つきが悪い、朝早く目が覚める
動悸、血圧上昇、手足の裏に汗をかく
行動面
消極的になり、他人との交流を避けるようになる
飲酒・喫煙の量が増える
身だしなみがだらしなくなる、落ち着きがなくなる

これらの症状が現れ、しかも2週間以上にわたって長く続くようなら、強いまたは長期間のストレスがかかっているサインかもしれません。このサインに気づかないまま長く放置してしまうと、うつ病やストレス性の胃腸炎など、心身ともに特別な治療が必要な疾患を引き起こす可能性もあります。

心身のサインが現れたときに思い当たるストレスがあれば、ぜひすぐに何らかの対策を取りましょう。精神科や診療内科などの専門医に早めに相談するのもおすすめです。

ストレスの経過の3つの段階

適度なレベルを超えたストレスを受けたり、ストレスを長期間受け続けていたりすると、大きく3つの段階を経て最終的に専門家の治療が必要な状態にまで達してしまいます。具体的には、以下の3つの段階です。

警告反応期
心身からサインが出始めた状態
ストレスを受けているという自覚はない人が多く、「なんとなく疲れた」「どうも体調が悪い」とだけ感じている状態
抵抗期(防衛期)
ストレスに対し、心身が無意識に反発や抵抗をしている状態
ストレスの原因(ストレッサー)と拮抗し、表面的にはストレスがなくなったように見えることも
疲憊(ひはい)期
免疫力や自然治癒力が失われ、最悪の場合は死に至る状態
本人の力ではどうにもならず、専門家の治療が必要になる

上記でご紹介した体の症状は、この「警告反応期」に出る症状の一覧です。「抵抗期」に入ってしまうと体の反応が出にくくなり、ストレスがかかっていても自分で気づきにくい状態になってしまうため、「警告反応期」の間に気づき、ストレスを対処しておくことが大切になってきます。

ストレスに関係する疾患・症状

私たちの心身は、対処能力を超えた強いストレスに長期間さらされると、さまざまな疾患や症状が現れます。代表的なものには、ストレスによる偏頭痛や緊張型頭痛があります。ストレスがかかると体の筋肉がこわばるため、首から肩にかけて筋肉が緊張して頭痛が起こる「緊張型頭痛」の場合、マッサージなどで筋肉をゆるめたり、気分転換してリラックスしたりすると症状が緩和する場合があります。また、その他にも以下のような症状が現れることがあります。

  • 体がフワフワしているように感じる(浮動性)めまい
  • ぜんそく、アトピー性皮膚炎などアレルギー反応
  • 胃痛、下痢・便秘、腰痛
  • 高血圧、心臓病、更年期障害
  • うつ病、不安障害

浮動性めまいはストレスによってホルモンの分泌量が変化したり、自律神経が影響を受けたりして起こるといわれています。また、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー反応は免疫疾患のため、免疫機能に異常をきたしやすいストレス反応によって悪化することがあります。また、ストレスに対抗して分泌されるホルモン「コルチゾール」は血圧を高める働きがあるため、高血圧や心疾患、更年期障害につながることもあります。

ストレスのセルフチェック方法

ストレスがたまっているかどうかをセルフチェックする方法があります。次の8つの項目について、直近の一週間、最も自分に当てはまると思う回答を選び、点数の合計でストレス度を図ります。

項目 全くなし 少しあった まあまああった かなりあった 非常にあった
食欲 5点 4点 3点 2点 1点
睡眠 5点 4点 3点 2点 1点
喜び 5点 4点 3点 2点 1点
疲れ 1点 2点 3点 4点 5点
憂鬱 1点 2点 3点 4点 5点
不安 1点 2点 3点 4点 5点
緊張 1点 2点 3点 4点 5点
体の不調 1点 2点 3点 4点 5点

最高点は40点で、点数が高いほどストレスが高く、点数が低いほどストレスが少ないと考えます。合計が24点以上で要注意、32点以上で危険な状態とされます。32点以上の場合は、休息を取る、現在の生活を改める、医師などの専門家に相談するなどして、早急にストレスを解消しましょう。

 

ストレス解消のためにできる対策

適度なストレスを含め、日常生活でストレスを完全に排除することはできませんので、以下の方法で日頃からストレスを適度に解消していくことが大切になってきます。

休養
「なんだか疲れているな」と感じたら、適度に休養を取る
入浴
就寝の1~2時間前、38~40度のぬるめのお湯にゆっくりつかる
運動
散歩やサイクリングなど、無理のない運動をできるだけ毎日行う
食事
ビタミンやミネラルが不足しないよう、栄養バランスを考える
音楽
好きな音楽を聴いてリラックスしたり、カラオケで大声を出し歌ったりする

まず、休養は最も基本的で重要なストレス解消法です。体から「疲れたな」というサインが現れたら、できるだけすぐに適度な休養を取りましょう。何も考えず、ただぼーっとする時間を取ることで、脳も体もしっかり休ませることができます。また、入浴は血行促進や新陳代謝を促し、筋肉や神経の緊張をほぐす働きがあります。就寝の1~2時間前にぬるめのお湯にゆっくりつかると、ちょうど就寝の時刻に自然に眠気が訪れ、十分な睡眠を取りやすくなります。

運動はストレスの解消はもちろんのこと、生活習慣病の予防にもおすすめです。ただし、運動も長時間すると過剰なストレスになりますので、軽い散歩やサイクリングなど、無理のない運動を1日10~30分程度、できるだけ毎日行いましょう。人間の脳や体は食事から出来ていますから、栄養バランスを整えることで健康に近づけます。早食いや過食を避けることはもちろん、ビタミンやミネラルの不足を防ぐこと、糖質や脂質を取りすぎないことを心がけましょう。

おわりに:心身に不調をきたす前に、ストレスは早めに解消しよう

ストレスは早めに解消することが大切ですが、なかなか「ストレスを感じたから休もう」とは意識しにくいものです。そこで、今回ご紹介したセルフチェックを心がけることをおすすめします。「少し疲れたな」と思ったときにはセルフチェックを行い、ストレスを解消しましょう。もし、すでになんらかの症状が続いている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

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