記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/9/19
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
爪周囲炎は、爪の周りの皮膚に炎症が起きた状態です。通常、爪の付け根(甘皮と呼ばれる部位)または爪の側面の皮膚によく炎症が起きます。
爪周囲炎には、急性爪周囲炎と慢性爪周囲炎の2種類があります。
急性爪周囲炎は急激に発症します。爪周囲の傷からの細菌の侵入が原因になることが多いです。原因菌として、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌が多いです。
慢性爪周囲炎は、水仕事や調理・化学物質などの刺激やアレルゲン(アレルギー反応の原因となる物質)に長くさらされている人に起こることが多いです。慢性爪周囲炎ではカンジダというカビがよく検出されるので、アレルギーに加えてカンジダも関係していると考えられています。
爪周囲炎は、爪の付け根または側部の周りの痛み、腫れおよび赤みで始まります。急性爪周囲炎は、爪または爪の側面または付け根に、膿が入った嚢(膿瘍)を形成することがあります。
慢性爪周囲炎は甘皮を弱め、爪を皮膚から分離させる可能性があります。 爪は厚くなり、硬く変形することがあります。
なお、細菌による爪周囲炎はすぐに悪化しますが、真菌による爪周囲炎は時間をかけて悪化していくのが一般的です。
爪をかじったり、ささくれを引っ張ったり、指をなめたりすると感染リスクが高くなります。 陥入爪は爪周囲炎を引き起こす可能性があります。
慢性爪周囲炎は、爪が水または過酷な化学物質に長時間触れたときに起こり得ます。湿気は、カンジダ(真菌の一種)や細菌など特定の細菌を増殖させるため、長時間手を濡らすことがある人は慢性爪周囲炎のリスクが高くなります。バーテンダーや食器を洗う人、食品取扱者または家庭で掃除する人などがあてはまります。 慢性爪周囲炎は、刺激性の皮膚炎など皮膚を赤くかゆくさせる病気によって引き起こされる可能性があります。皮膚が刺激されると、細菌が定着し、感染の原因となります。
爪周囲炎は、成人女性と、糖尿病を有している人によく見られます。また、免疫系が弱っている人、たとえば臓器移植後で薬を服用しなければならない人、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)を感染している人は、リスクが上がります。
診察で爪周囲炎を診断することができます。通常、特別な検査は必要ありませんが、感染の原因となっている細菌や真菌を特定するために、細菌検査を行うこともあります。
急性爪周囲炎の場合は、細菌に効く抗生物質の塗り薬か飲み薬が処方されます。
もし膿が溜まっている場合は、切開して排膿する必要があります。
慢性爪周囲炎がある場合は、爪を乾燥状態に保ち、原因となる刺激物質や化学物質が触れないように避ける、保護することが大切です。ステロイドの塗り薬や、カビに効く抗真菌薬の塗り薬や飲み薬が処方されます。
治りにくい場合もあるので、医師に相談しながらきちんと治療を進めてください。
急性爪周囲炎を予防する最善の方法は、爪をしっかりとケアすることです。
手を乾燥させ、化学物質を避けることで慢性爪周囲炎は予防することができます。 水または強い化学物質を扱う場合は、手袋を着用してください。 足の場合は少なくとも毎日靴下を交換し、靴は2日連続で同じものを履かないようにして、完全に乾燥させるようにしてください。
その他の予防法は以下の通りです。
・爪や指先を傷つけない
・爪を噛んだり引っ張ったりしない
・爪を整えて滑らかに保つ
・爪を短く切りすぎないようにする:皮膚に損傷を与える可能性があるので、爪を短く切ったり甘皮をこすり落としたりしないでください。
・きれいな爪切りやはさみを使う
糖尿病の場合、爪周囲炎が治りにくいです。爪周囲炎を起こしている細菌が、血液を介して体のほかの部分に広がる危険性があります。また爪周囲から感染が手に広がっていくこともあります。
次の場合は必ず医師にご相談ください。
・治療しても症状が改善しない場合
・発熱や寒気がある
・赤く熱を持っている部位(炎症が起きている部位)が爪の周りからどんどん広がっていく
・どのような治療法が最適ですか?
・抗生物質を服用する必要がありますか?
・爪はもとに戻りますか?
・糖尿病を持っているのですが、気をつけた方が良いことはありますか?
・症状が良くなりません。どうしたら良いでしょうか?
・足の陥入爪があります。 よく爪周囲炎を起こすのですが、何か治療法や対策はありますか?