前十字靱帯(ACL)の損傷

2017/3/17

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

概要

前十字靱帯(以下、ACL)は前十字靭帯を指し、膝の靭帯の1つです。 他の靭帯は、PCL(後十字靱帯)、MCL(内側側副靭帯)、およびLCL(側副靭帯)です。 ACLは膝頭(膝蓋骨)の後ろに位置し、 膝が回転するときに膝を安定させます。 ACLとPCLは、大腿骨と脛骨をつなぎます。
ACL損傷は一般的な膝の損傷です。 平均して、女性は、男性よりもACL損傷のリスクが2〜8倍高まります。 多くの子供がスポーツをしてることもあり、ティーンエイジャーの若者の間にも、ACLの損傷が増えています。ACLの傷害の増加は、疾患についての認識の広まりと高度な検査によるものです。

症状

ACLの損傷の主な兆候で、断裂音がします。 これは痛みや腫れをともない、骨や膝が削れているような感覚を経験することがあります。 もう一つの兆候として、足に体重をかけることができなくなります。

原因

ACLの損傷は、スポーツまたは活動的な状況において発生します。これは 直接的な外的接触がなくとも生じます。 次のように損傷の原因となるものがいくつかあります。
・移動していて、すぐに止まったり、方向を変えた場合
・じっとしていて、突然ジャンプやターンのような動きをする場合
・膝関節を過度に伸ばす場合
・ほかの人が膝にぶつかり、それが原因で頚骨が離れた場合
これは、スキー、サッカーやフットボール、トランポリンでのジャンプなどの動作を行うときに発生します。
ACLを損傷すると、部分的または完全に断裂する可能性があります。 同時に、他の膝靭帯(主にMCL―膝の安定性をもたらす靭帯)の損傷、半月板(膝クッション)損傷、または骨挫傷も発生する可能性があります。

診断

ACLを損傷したと思われる場合は、医師の診察を受けてください。 医師は、可動域と怪我の程度を調べるために膝の検査を行います。 MRI(磁気共鳴イメージング)によって損傷を確認することができることがあります。

治療

医師は、損傷の重症度、年齢、身体状態、病歴、および他の損傷または病気等の要素から、治療計画を決定します。
若い人、活発な人、健康な人は、通常、手術を受けます。
手術では、生体組織を用いてACLを修復または再構築します。これは、ハムストリングスまたは小さな膝蓋骨(膝)の腱から採取するか、 ドナーから提供をうけることでできます。 よい結果を得るために、損傷後5ヶ月以内に外科手術を行ってください。 手術後、膝と脚の強度を回復するためには、集中的な理学療法が必要になります。
普段活動的ではない人やも健康でない人のための治療法としては、リハビリテーション治療があります。 あまり効果が高いものではありませんが、体への負担も少ない治療です。 治療期間はおよそ10〜32週間です。 治療目標は、動きと強さを増やし、靭帯が自然に治癒できるようにすることです。

予防

ACLの裂傷などの怪我を防ぐ方法は、特定のトレーニング(損傷防止、パフォーマンス向上(PEP)プログラム)を実施することが効果的です。膝の安定化に焦点を当てたストレッチング、強化、敏捷性練習を組み合わせています。
膝当てを使用するとACLの損傷を防ぐという明確な根拠はありません。 また、膝当てが治療や理学療法に役立つという証拠もありません。

関連知識

ACLを損傷した後の生活

ACL損傷からの回復は難しいかもしれません。 これは、日常的または定期的な活動中に損傷が発生した場合に特に当てはまります。 医師の目標はACLを回復させることですので、治療が重要です。
ACL損傷を有する人々は、変形性関節症または退行性関節炎を後々発症するという証拠がいくつかあります。 これは、どのように損傷を治療するかにかかわらず同様におこります。

医師に相談するための質問

・なぜ女性と女の子はACLの怪我の危険性が高いのですか?
・手術や治療後、スポーツをしたり、もう一度活動できるまでの期間は?
・ACL損傷を再発する可能性はありますか? もし再発するなら、どうやって再発を防ぐことができますか?

この記事に含まれるキーワード

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