記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/9/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
微酸性電解水とは、文字通り電気分解によって作られる電解水で、除菌や消毒で使われます。消毒と言えばアルコールなどが広く普及していて有名ですが、消毒用アルコールは口に入れたりしてしまうと人体に悪影響を及ぼすこともあります。
微酸性電解水は、アルコールと同等の殺菌効果を持ちながら、間違えて少量口に入っても人体に大きな影響がないと考えられています。この記事では、微酸性電解水の使い方や注意点についてご紹介します。
微酸性電解水とは、次亜塩素酸水の一つで、より水に近い性状を持っている電解水です。汚れを洗浄した後のすすぎの水として利用でき、高い除菌効果を発揮します。これによって水の使用量や作業の手間が削減できるほか、10~30ppmというごく低い塩素濃度で使用することから、トリハロメタンを生成しにくく、排水設備や器具・機器への影響も少ないメリットがあります。
また、厚生労働省から2002年に食品添加物としての殺菌料として指定を受けたこともあり、食材の洗浄にも使えるほど安全性が高いことでも知られています。手にもやさしい低刺激の微酸性であることから、手荒れなどの心配もほとんどなく、塩素臭も少ないことから、作業を行う人自身も安心して使うことができます。
漂白剤の「次亜塩素酸ナトリウム」と響きは似ていますが、全くの別物です。次亜塩素酸ナトリウムの殺菌効果は低く、殺菌効果を発揮するためには200ppmなどの高濃度で使う必要があるため、塩素臭が非常に強いという問題があります。また、薬剤塩素が残留しやすく、食材や調理器具などには使いにくい、あるいはすすぎをしっかりする必要があるという問題もあります。
ところが、微酸性電解水は食品への残留性が低く、微酸性電解水を使った後のすすぎを気にする必要がなく、殺菌後の食品の味や香りを大きく損ねることもありません。他にも、「次亜塩素酸の安定性が高い=強い殺菌力を維持できる」「環境にやさしい」といったメリットがあります。
微酸性電解水を含む次亜塩素酸水の殺菌効果の源は「次亜塩素酸」という成分ですが、この成分は非常にデリケートな性質があり、少し酸性に傾くと塩素ガスになって空気中に逃げ、アルカリ性に傾くと殺菌効果の低い「次亜塩素酸イオン」になってしまうのです。しかし、微酸性の環境では次亜塩素酸が安定して水の中に存在できます。これにより、他の次亜塩素酸水と比べて長期間、殺菌力を持続することができるようになりました。
環境にやさしいというのは、通常、塩素系殺菌剤を使うと発生する「クロロホルム」という有害物質が作られにくいということです。クロロホルムは酸性から中性ではほとんど作られず、アルカリ性では非常に作られやすいという性質を持っていますが、微酸性電解水では微酸性であることももちろん、殺菌力の高さから非常に少ない濃度で使うことで、クロロホルムを作られにくくしているのです。
微酸性電解水を含む「次亜塩素酸水」の殺菌作用については、現在さまざまな機関で研究が進められていますが、次亜塩素酸(HClO)が細菌やウイルスなどの病原体の細胞膜・タンパク質・DNAなどを傷つけ、活動を停止させるとともに、遺伝情報をも破壊している、という説がもっとも有力視されています。
細菌は単細胞生物ですから、細胞膜を破壊されれば生きていけません。ウイルスは細胞膜を持ちませんが、DNAなどの遺伝情報を傷つけられると、他の生物に寄生して増えることができなくなりますし、当然活動もできなくなります。このように、微酸性電解水を含む次亜塩素酸水は細菌やウイルスに対して高い殺菌効果を発揮すると考えられています。
微酸性電解水は、除菌したい部分や臭いの気になる部分に直接吹きつけて使います。拭き取りをする場合は、吹きつけた後、15秒以上経ってから拭き取りましょう。その他、具体的には以下のようなシーンで使うことができます。
微酸性電解水を使うときには、以下のようなことに注意しましょう。
微酸性電解水は、単独で使う場合は人体に無害ですが、他の薬品や洗剤と混ぜた場合、塩素ガスなどの有毒ガスを発生する危険もありますので、絶対に混ぜ合わせないようにしましょう。また、高温の場所や直射日光の当たる場所では、どんどん濃度が下がり、殺菌能力が落ちてしまいます。保管するときは密閉容器で、冷暗所に保存しましょう。できれば、冷蔵庫などで保存すると良いでしょう。
同じように、時間経過によってもだんだん濃度は下がっていきますので、使用期限内に使いきることはもちろん、余ったらできるだけ早く使い切ることが重要です。効果が落ちていないか確認するためには、使う前、あるいは使用中にヨウ化カリウムデンプン紙などで確認すると良いでしょう。
また、微酸性電解水は塩素濃度が低いため、水が汚れるとすぐに効果がなくなってしまいます。すすぎに使う場合は、できるだけ流水やシャワーの状態で使いましょう。桶などを使う場合でも、つけ置きにせず、常に新しい水が追加され続ける状態にしておきます。雑巾などを使う場合は、あらかじめ洗剤でよく洗った清潔な雑巾を使い、拭き取った後の雑巾は別の水で洗ってよく絞り、微酸性電解水ですすぎましょう。
微酸性電解水は、電気分解によって作られる「次亜塩素酸水」と呼ばれる生成水の一種で、細菌やウイルスを殺菌する効果がありますが、万が一口に入っても人体には害がない安全な消毒薬です。
他の次亜塩素酸水は不安定で長期保存ができませんでしたら、微酸性という環境に調整したことで、半年という長期保存を可能にしました。しかし、汚れがあると十分に効果を発揮できないのは同じですから、汚れは落としてから使いましょう。