パキシル®︎は離脱症状を起こしやすいって本当?

2019/10/23

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

一口に精神薬と言ってもさまざまな種類がありますが、抗うつ薬のうち、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬でもっとも有名なのがパキシル®︎ではないでしょうか。その安全性と効果の高さ、効果の実感しやすさなどから広く使われています。

しかし一方で、パキシル®︎は離脱症状が起こりやすい薬としても知られています。パキシル®︎で離脱症状が起こりやすいのはなぜなのでしょうか?

パキシル®︎ってどんな薬?

パキシル®︎(一般名:パロキセチン塩酸塩)がどのようにして抑うつ症状に対して改善効果を表すのか、はっきりとしたことはまだわかっていません。しかし、モノアミン仮説という説がもっともわかりやすく、一般的に広まっています。

モノアミンとは神経伝達物質のことで、主なモノアミンには「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の3つがあります。セロトニンが減少すると不安や落ち込み、ノルアドレナリンが減少すると意欲や気力の低下、ドーパミンが減少すると興味や楽しみの減退が起こります。さらに、それぞれ2つずつ、3つ全体の低下でも以下のような症状が起こります。

  • セロトニンとノルアドレナリンの減少…不安
  • ドーパミンとノルアドレナリンの減少…活動性の減退
  • セロトニンとドーパミンの減少…食欲や性欲の減退
  • 全ての物質の減少…気分や情動、思考や認知能力の低下

これらモノアミンは、役目を果たしたあとは不要となり、再取り込みという形で回収されます。パキシル®︎などの抗うつ薬はこの「再取り込み」という作用を阻害し、脳内のセロトニン濃度を高めます。このように、モノアミンの量を調整することで脳内の気分や情動・思考のバランスを整え、つらい症状を改善するのがパキシル®︎をはじめとした精神薬の効果だと考えられています。

しかし、これらモノアミンが直接的に抑うつ症状に関係しているのであれば、パキシル®︎などの精神薬を飲み始めればすぐに効果が現れるはずです。ところが、実際にはパキシル®︎などの薬は飲み始めてすぐに効果が出るわけではなく、だいたい2週間程度飲み続けてから徐々に効果が現れてきます。このようにタイムラグがあるということは、パキシル®︎などの抗うつ薬の効果がモノアミン仮説だけでは説明できない複雑な作用機序を経ていると考えられるのです。

パキシル®︎は離脱症状を起こしやすい?

パキシル®︎は、他の抗うつ薬と比べても離脱症状が起きやすいと言われています。これは、パキシル®︎の血中濃度の上がり方が他の薬と比べて独特なためと考えられていて、実際にパキシル®︎は増量すると一気に濃度が上がり、減量すると一気に下がるという非常に特徴的な推移をします。

そのため、長期間服用していて身体がその状態に慣れている(身体依存)ときに急に減量すると、血中濃度が一気に低下するため、さまざまな不調(離脱症状)が現れます。具体的には、しびれ・めまい・だるさ・頭痛・耳鳴り・吐き気・イライラ・ソワソワ感(落ち着かなさ)・不眠・不安・シャンビリ感などが挙げられます。

シャンビリ感とは、めまいのような独特な身体感覚と、身体のそこかしこに電気が走るようなピリピリ(ビリビリ)としたしびれのことで、これら2つの症状がほぼ同時に現れることから「シャンビリ感」と呼ばれています。

このような症状が現れた場合、必要に応じて抗不安薬などの精神安定剤の頓服を併用することで緩和できることもありますので、早めに医師に相談しましょう。

離脱症状を起こしにくくすることはできる?

このような離脱症状を防ぐために、パキシル®︎などの精神薬を減量する場合は慎重に少しずつ行う必要があります。離脱症状は薬が減って1~3日ほど経つと現れてきて、2週間程度でおさまることが多いのですが、月単位で続いてしまう人もいます。

とくにパキシル®︎は離脱症状が起こりやすいとされているため、減量は絶対に自己判断で行わず、医師に相談の上で行いましょう。まずは、症状の様子をみながら40mg→30mg→20mg→10mg→5mgというように、薬の量を少しずつ減らしていきます。このように、パキシル®︎の場合、5~10mgずつ減量していくことが多いです。

離脱症状は、他の抗不安薬(精神安定剤)を頓服などで併用すると症状が緩和されることがありますので、必要に応じて頓服や定期服用で併用することもあります。

5mgまで減量できたら、他の薬剤と同じように「漸減法」「隔日法」などの減薬方法で減量していきます。漸減法は1~2週間ごとに薬の量を少しずつ減らしていく方法、隔日法は薬の量は減らさずに服用間隔を毎日→1日おき→2日おき→3日おき…とだんだん開けていく方法です。最終的に、薬を飲まなくても生活できると判断されれば「断薬」となります。

おわりに:パキシル®︎は独特の血中濃度推移で離脱症状が起こりやすいとされる

パキシル®︎は、モノアミン(神経伝達物質)の一種であるセロトニンの再取り込みを阻害して脳内のセロトニン濃度を増やす薬です。しかし、その血中濃度の上がり方や下がり方は独特で、そのため離脱症状が起こりやすいと考えられています。

パキシル®︎の離脱症状を起こしにくくするためには、薬をやめるときは少しずつ慎重に減らしていくことが重要です。症状を見ながら、少しずつ医師の指示に従って減らしていきましょう。

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