記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/8/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
メタボリックシンドローム・生活習慣病予防などの健康対策やダイエットのためにウォーキングをしている人も多いと思います。ウォーキングが健康対策やダイエットにも役立つことは間違いありませんが、ウォーキングをするとどの程度のカロリーを消費できるのでしょうか?この記事では、ウォーキングの時間や距離にあわせた消費カロリー量の目安について、ウォーキングの効果を高めるポイントも含めて解説していきます。
ウォーキングの消費カロリーは、歩く人の体重や速度、時間によっても変わりますが、1時間で約150~350kcalです。そこで、標準的な成人の体重として50kgと60kgの場合、10分・20分・1時間の場合を普通の速さで歩いた場合と、早歩きで歩いた場合について比較してみましょう。
まず、普通の速さで歩いた場合の消費カロリーから見ていきましょう。
時間 | 50kgの人 | 60kgの人 |
---|---|---|
10分(約670m) | 約26kcal | 約32kcal |
20分(約1.3km) | 約52kcal | 約63kcal |
1時間(約4km) | 約158kcal | 約189kcal |
体重が重い人の方が、その体を支える分、時間あたり、距離あたりの消費カロリーは増えます。もともと太っている人の方が、もともと痩せている人よりも体重が減りやすいのはこうした理由もあるのです。
次に、早歩きで歩いた場合の消費カロリーも見ていきます。
時間 | 50kgの人 | 60kgの人 |
---|---|---|
10分(約830m) | 約35kcal | 約42kcal |
20分(約1.7km) | 約70kcal | 約84kcal |
1時間(約5km) | 約210kcal | 約252kcal |
早歩きで歩いたときは、普通の速さで歩いたときと比べると少し消費カロリーが増えます。とくに1時間歩いたときの消費カロリーを比較してみると、単純に距離に比例するだけでなく、もう少し消費カロリーが多くなるのがわかります。
気温によっても消費カロリーは異なります。気温が低くなると、体は体温を保とうと基礎代謝量が上がりやすくなるため、消費カロリーも増えるため、夏よりも冬の方が痩せやすいと言われています。
なお、ウォーキングをするとき「汗ばむ程度の速度で歩くように」と指導される場合もありますが、「汗をかいている」イコール「カロリーを消費している」わけではなく、汗の量と消費カロリー量も比例しません。汗がどのくらい出るかは体質による部分も大きく、運動強度も大きく影響します。
また、同じ気温であっても、汗の量は季節で左右されます。これは、人間の体が暑さを調節するには、まず血管を拡げて熱を逃がし、それでも調節できない場合に汗をかくようにできているためです。夏の暑さの中で汗をかきながら過ごしていた体は暑さに順応した状態ですから、その後の秋にはたいてい汗をかきにくくなります。このような点から見ても、汗の量と消費カロリーの量にはあまり関係がないことがわかります。
消費カロリーを計算するためには、身体活動(運動)の強度を表す「METs」という単位を使った計算方法があります。以下のような計算式で求めます。
■METs×運動時間(h)×体重(kg)×1.05=消費カロリー
METsとは「Metabolic Equivalents」の略で、日本語では「代謝当量」と訳されます。運動強度を表す単位のことで、安静時を1METsとして表します。METsは世界共通の単位で、1METsを基準として何倍のエネルギーが消費されているのかを数値で表し、身体活動の強度を表します。主な運動のMETsは以下のようになっています。
一般的な「普通の速さのウォーキング」をすると3.0METsとなり、安静時の3倍のエネルギーを消費すると考えられます。早歩きの場合は4.0METsとなり、これらのMETsの値を上記の式に当てはめて計算すれば、消費カロリーを求められます。
上記の式を見るとわかりますが、運動量(時間)や強度(METs)が同じでも、体重が増えるとその分の負荷によって消費カロリーも増えます。自分自身の体重でなくても負荷をかけることはできるので、消費カロリーを増やしたいときは、水の入ったペットボトルを持ったり、荷物を入れたリュックを背負ったりしながらウォーキングをすることもおすすめです。
ただし、運動習慣のなかった人や膝や腰の調子が悪い人が突然重い荷物を持ってウォーキングを始めると、関節や筋肉を痛める恐れがあります。重さによる負荷を増やしたい場合は、まずペットボトル程度の200~500gの重さを加えるところから始めましょう。
ただなんとなく歩いているだけでは、思ったようなウォーキング効果を得られないことがあります。「健康のために1日1万歩を目標に歩こう」と言われることもありますが、ただ漫然と歩いているだけでは筋肉があまり鍛えられない場合も多いです。せっかくウォーキングに取り組んでも、加齢に伴い減少していく筋肉量を維持できず、基礎代謝が少しずつ少なくなってしまうこともあります。
1日1万歩を目標にすることも悪くはありませんが、効率よく筋肉を鍛えられる方法でウォーキングに取り組むほうが、心肺機能などの循環器系の機能向上や、筋肉が動くために必要な糖質の代謝機能の改善につながり、適切な血糖値管理にも役立ちます。
効率よく筋肉を鍛えられるウォーキングとしておすすめな方法が、「インターバル速歩」です。インターバル速歩とは、ややきついと感じるくらいの「早歩き」と通常の速度の「ゆっくり歩き」を3分ごとに繰り返すウォーキング法で、筋肉に適度な負荷をかけることで、筋肉に日常生活よりも強い刺激を与え、筋肉を大きくする効果が期待できます。
なお、ウォーキングは有酸素運動であり、20分以上継続することで脂肪が燃焼し始めます。これは、エネルギー源として体に蓄えられている脂肪よりも先に血液中の糖質や脂質が使われ、その後に皮下脂肪や内臓脂肪などの蓄えられていた脂肪が使われるためです。つまり、皮下脂肪や内臓脂肪を燃焼させるためには、20分以上継続してウォーキングする必要があるということです。ダイエットやメタボリックシンドローム予防を目的にする場合は、ウォーキングを20分以上継続することを心がけましょう。連続して20分継続できない場合は、1日の合計が20分以上になるように小分けにして取り組んでもかまいません。
また、脂肪燃焼のためには、「朝のウォーキング」がおすすめされる場合があります。これは、朝起きたときが一番血糖値が下がっているため、脂肪が燃焼し始めるまでの時間が短くなり、より脂肪が燃焼しやすくなることが理由と言われています。朝のウォーキングのメリットはもう一つ、朝日を浴びて「セロトニン」というホルモンが分泌されることもあります。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、心のバランスを整えてくれる働きがあるホルモンです。脂肪燃焼とともに心のバランスも整えられるため、朝のウォーキングはダイエットで溜まったストレスの解消にもおすすめです。ただし、高血圧の人が起きがけに急に体を動かすことは、ヒートショックなどのリスクがあるためおすすめできません。持病のある人は、必ず医師に相談した上で運動に取り組むようにしてください。
ダイエット中は「食事制限」よりも「食生活の見直し」を意識することをおすすめします。とくに、一品だけしか食べない、糖質・脂質を完全に絶つような極端な食事制限は心身に悪影響を与えますし、事故や健康トラブルの原因になるため絶対にやめましょう。
例えば、最初に野菜やスープを食べ、その次に肉や魚などのメインディッシュ、最後にパンやご飯などの主食の順番で食べるなど「食べる順番」を変えることもダイエットにはおすすめです。実は、血糖値が急激に上がるとインスリンが必要以上に分泌され、糖分を脂肪として蓄積しやすくなってしまいます。血糖値が上がりにくい食品から食べるようにすることで、血糖値の急上昇を防ぎ、血糖値の上昇を緩やかにすることができますので、結果として脂肪が蓄積されにくくなると言われています。また、噛む回数を増やしてゆっくり食べるようにすることも、血糖値の上昇を緩やかにすることに役立ちます。
洋食中心のメニューを和食中心のメニューにする、肉よりも魚メインの食事に切り替える、白身魚を赤身魚に変える、白米を玄米に変える、白いパンを全粒粉パン・ライ麦パンに変える、発酵食品を積極的に取り入れるなどの食事の工夫もダイエットに役立ちます。
ウォーキングの消費カロリーは、歩く人の体重や運動強度(METs)によって変わります。体重だけでなく、荷物の重さでも消費カロリーを増やせますので、水の入ったペットボトルなどを持ってウォーキングすると良いでしょう。また、筋肉に適度な負荷をかける、食事に順番や内容にも注意するなどの工夫も、ウォーキングの効果を高めるためにおすすめです。