「食事が楽しみでなくなった」「食が細くなった」など食欲や食事量の低下がみられたら、もしかすると何らかの不調が原因かもしれません。この記事では、食欲低下に関連する病気や対処法にういて紹介します。
食べたいのに食べられないのはどうして?
食べたい気持ちはあるのに食事が進まない状態や、食べたいという体や心の欲求があまりみられない状態を、食欲低下、食欲減退、食欲不振、食思不振などと呼びます。
体力の消耗や精神的疲労やショックから食欲が低下することがありますが、一時的な場合は大きな問題ではない場合がほとんどです。ところが、数日以上食事が進まない状態が続く場合、何らかの病気が原因の可能性があります。
食欲がわかなくなる病気って?
胃腸など消化器官に発生する病気のほか、さまざまな疾患が食欲に影響を及ぼします。食欲低下をまねく代表的な病気として、下記のような疾患が考えられます。
- 慢性胃炎
- 胃の粘膜が弱まったところに繰り返し炎症が発生します。原因は主にピロリ菌感染ですが、非ステロイド性抗炎症薬の副作用、慢性的ストレスなども原因になります。
- 症状
- 食欲低下、腹部膨満感、胃痛、胃もたれ、胸やけ、吐き気、げっぷなど
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 強い胃酸と消化酵素によって、胃や十二指腸の粘膜が局所的に傷つけられる症状です。原因はピロリ菌や非ステロイド性鎮痛剤、ストレスなどが考えられます。
- 胃潰瘍の症状
- 食欲低下、食事中や食後に起こるみぞおち周辺の重苦しい痛み、胃もたれ、吐き気など
- 十二指腸潰瘍の症状
- 食欲不振、早朝や空腹時に起こるみぞおち周辺のシクシクとした痛み、胃もたれ、吐き気など
- 胃がん
- 胃に悪性腫瘍が発生し、悪化すると粘膜が破壊されます。ピロリ菌感染や塩分過多の食生活などが原因と考えられています。初期の自覚症状はあまりみられません。
- 症状
- 食欲不振、みぞおちの痛み、膨満感、吐き気、吐血、下血、貧血など
- 風邪
- 体内に風邪ウイルスが侵入し、さまざまな不調を引き起こします。ウイルスを排除するために、免疫機能が活性化することによる影響もあらわれます。
- 症状
- 食欲不振、消化機能の低下、発熱、だるさ、倦怠感、頭痛、鼻水、咳など
- インフルエンザ
- インフルエンザウイルスの感染によって全身症状や風邪症状があらわれます。
- 症状
- 食欲不振、39℃前後の発熱、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛、鼻水、くしゃみ、喉の痛みなど
- 甲状腺機能低下症
- 免疫の異常によって甲状腺ホルモンの分泌が低下します。
- 症状
- 食欲低下、無気力感、疲労感、皮膚の乾燥、まぶたの腫れ、声のかすれ、発汗減少、便秘など
- 亜鉛欠乏症
- 体内の亜鉛が不足したために味覚障害が発生し、食欲不振につながります。
- 症状
- 味覚障害、食欲不振、皮膚炎、脱毛症、生殖機能低下、糖代謝異常、感染症にかかりやすいなど
- アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)
- 結核や自己免疫の異常などの疾患を原因として、副腎皮質ホルモンの分泌が低下します。
- 症状
- 食欲不振、疲労感、体重減少、頭痛、めまい、下痢、吐き気、性欲減退など
- 神経性食欲不振症、拒食症
- 痩せることを目指した過度のダイエットや肥満に対する恐怖心から、食事を摂りたががらなくなります。食事をしても食べたものを吐いたり下剤乱用したりすることがあります。体重減少に伴い、栄養障害を引き起こして重症化すると命に関わることがあります。
- 症状
- 食欲低下、栄養障害、無月経など
- うつ病
- 気分が落ち込み、楽しい気持ちやものごとへの興味関心が失われます。
- 症状
- 食欲不振、睡眠障害、集中力低下、身体の反応低下など
食欲がわかないときの対処法は?
食欲不振が何らかの疾患によって引き起こされている場合、原因ごとに対処法が異なります。機能性、器質性、薬剤性、心因性の4つの原因ごとに対処法を検討します。
- 機能性
- 消化機能の低下を原因とする場合、消化機能を補う薬物療法で治療します。胃腸の働きを活性化する薬、消化剤、漢方などが代表的です。薬物療法だけでなく、消化機能を改善するために食生活や生活習慣を見直すことも大切です。
- 器質性
- 病気を原因とする場合、その疾患の治療を行うことで食欲不振の改善がみられます。
- 薬剤性
- 使用している薬の変更や、中止をすることで食欲不振が改善することがほとんどです。しかし、薬は医師や薬剤師の指示に従うことが重要ですので、自己判断で服薬を中断することは絶対にやめましょう。まずは食欲不振の状態を医療機関に相談してください。
- 心因性
- 原因となっているストレスを取り除いたり和らげることが大切です。ただしストレス環境の改善は難しいので、薬物療法と並行して治療を行います。
食欲不振にならないために何ができる?
食欲不振は生活習慣の見直しで改善することがあります。
- 規則正しい生活
- 生活リズムが不規則で自律神経のバランスが乱れると、食欲に悪影響を与えます。食事、起床と就寝などの時間帯を整えましょう。
- 質の高い睡眠
- 疲労を溜めると食欲低下につながります。ゆっくりと湯船につかる、夜更かしを控える、就寝直前は心と体をリラックスさせるなど心がけてみてください。
- こまめにストレス解消
- 精神的なストレスを完全になくすことは難しいですが、気分転換をしてリフレッシュすることが大切です。悩みは人に相談する、休日は趣味を思い切り楽しむなど自分なりの気分転換方法を見つけてください。
- 運動習慣
- 体を動かすと、食欲が刺激されます。定期的に運動をすると、生活リズム改善や質の高い睡眠にもつながります。運動量や強度はあまり気にせず、楽しく続けられる運動にチャレンジしてみましょう。
- アルコールは適量を守る
- お酒の飲みすぎは胃や肝臓にとって負担になります。飲酒は適量を守り、休肝日を設けてください。空腹時にアルコールを飲むと、胃の粘膜に刺激を与えて胃炎の原因となります。おつまみなどと一緒に適量のお酒を楽しむのがポイントです。
おわりに:長引く食欲不振は要注意!原因を見極めて対処しましょう
食欲不振は一時的なものであればそれほど心配しなくて大丈夫。しかし病気を原因とする食欲不振の場合は治療が必要です。医師の指示に従って治療を進めるとともに、生活習慣や食習慣を見直しましょう。
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