記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
病原微生物(肉眼で見られないほどのごく小さな生物)が体内に入り、さまざまな疾患や症状を引き起こすものを感染症と言います。感染症にはさまざまなものがあり、疾患によって病原体となる生物も異なりますが、中でも「細菌」に対して効果を発揮する薬を「抗生物質(抗生剤、抗菌薬)」と言います。
フロモックス®︎はそんな抗生物質の1つです。具体的にどんな治療に使われるのか、副作用や注意点など、詳しく見ていきましょう。
フロモックス®︎とは、細菌の細胞壁の合成を抑え、殺菌・抗菌作用を発揮する薬です。感染症の原因となる「病原微生物」には細菌・ウイルス・真菌(カビ)などが含まれますが、フロモックス®︎は細菌にだけ作用します。グラム陽性菌に加え、グラム陰性菌の多くに幅広く殺菌力を発揮します。
感染症では、病原微生物(この場合は細菌)が体内に侵入して悪さをするため、腫れや発赤、化膿、痛みや発熱などの症状が現れます。これらの症状は必ずしも細菌自体が引き起こすわけではなく、細菌を撃退しようとする免疫反応の場合もありますが、いずれにしても病原体となる細菌が死滅すれば自然と治ります。
フロモックス®︎は、他の抗生物質が効きにくいペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)やβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)に対しても効果を発揮しますが、緑膿菌に対しては効果がありません。なお、ここでいうインフルエンザ菌とは、一般的に冬に大流行する「インフルエンザ」を引き起こすインフルエンザウイルスとは違う種類の微生物です。
このようにさまざまな種類の細菌に有効なため、呼吸器や耳鼻科の領域を中心に、各科で広く使われていて、喉の痛みや発熱を伴う風邪などにも処方されます。また、インフルエンザウイルスなどを含むウイルス性の風邪に対しては、原因ウイルスそのものを死滅させるものではありませんが、二次感染として免疫力が落ちることで細菌にも感染してしまった場合、あるいはその予防のためにフロモックス®︎が処方されることがあります。
フロモックス®︎は「セフェム系第3世代」に分類される抗生物質で、副作用が少なく、安全性が高いことが特徴です。ペニシリン系と比べると、ショックなどのアレルギー症状も高く、腎臓から排泄されるため肝臓に負担をかけないのもメリットです。
反面、ピボキシル基という構造を持つことから、ごくまれに乳幼児に低カルニチン血症を引き起こすことがあります。乳幼児、あるいは子どもに対してフロモックス®︎の細粒剤がよく処方されますが、とくに長期間服用する場合など、副作用が見られないかどうか念のため注意しておく必要があります。
フロモックス®︎の服用によって起こる副作用は少ないですが、まず前述のように、ごくまれに乳幼児や小さな子どもの低カルニチン血症、そしてそれに伴う低血糖(元気がない・嘔吐・冷や汗・異常な言動・震え・びくつき・けいれん・意識障害など)の報告がありますので、念のため服用時には注意して観察しましょう。また、臓器の機能が低下しやすい高齢者や、長期間にわたって服用している人もこれらの副作用に注意しておきましょう。
軽い副作用としては、比較的下痢がよく見られます。とくに、小さい子供で軟便がみられやすいですが、これはフロモックス®︎の抗菌作用によって腸内細菌のバランスが乱れるためで、多少便が柔らかくなる、一時的な下痢程度ならとくに心配はいりません。しかし、ひどい下痢が続いたり、血便が見られたりするようなことがあれば、医療機関を受診しましょう。
また、人によっては小さいブツブツとした発疹ができることもあります。ときに発熱を伴うこともあります。こうしたアレルギー症状がみられる場合、いったんフロモックス®︎の服用を中止して医師の診察を受けてください。アナフィラキシー・ショックなどの重篤なアレルギー症状はまず起こらないとされていますが、万が一ひどいじんましんができたり、顔や口が腫れてゼイゼイとした呼吸が見られたりする場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
そのほか、めったにないですが、念のため注意しておくべき重篤な副作用として以下のようなものがあります。
また、長期間の服用によって、菌交代症(口内炎やカンジダ症など)、ビタミンK欠乏症(出血傾向)などの副作用が見られることもあります。長期間の服用でこれらの症状が見られたときも、医師に相談しましょう。
フロモックス®︎はアレルギー症状を引き起こしにくい薬ですが、もともとアレルギー体質の人や、今までに薬を飲んで発疹や発熱などのアレルギー症状が出たことのある人、喘息やじんましん・腎臓病などの持病がある人は医師に伝えましょう。また、服用中の薬がある人も必ず伝えておきましょう。
今までにフロモックス®︎によってアレルギー症状が出たことのある人には使えないほか、同じセフェム系の薬でアレルギー症状が出た人にも基本的に使いません。喘息やじんましんなど、アレルギー性の疾患を持っている人や、腎機能が低下している人、高齢の人なども副作用が出やすいため、服用量や間隔などに配慮して慎重に使います。
乳幼児や小さな子どもは、大人よりも下痢や軟便の副作用を起こしやすいことや、低カルニチン血症による低血糖を引き起こすリスクがあることから、注意して観察します。また、これらの副作用のリスクを鑑みて、下痢予防に乳酸菌の整腸薬と併用することがあるほか、先天性代謝異常症によって血清カルニチンが低下する体質の子どもには基本的に処方しません。
そのほか、服用中に気をつけることは以下のとおりです。
一般的には、飲み始めて3〜4日程度で症状が落ち着いてくることが多いです。しかし、もし3〜4日経っても全く効果が見られない場合、あるいは悪化してくる場合は、早めに受診しましょう。
また、自己判断で薬を飲むのを中止してしまうと、細菌が完全に死滅せず、抗生物質の効きにくい細菌(耐性菌)を増やしてしまうことにつながりかねません。ある調査によれば、中耳炎を引き起こす肺炎球菌の7割が耐性菌である、という報告もあります。このような薬の効きにくい耐性菌を増やさないためにも、指示された期間は必ず守って薬を飲みきりましょう。
フロモックス®︎は、グラム陽性菌だけでなくグラム陰性菌の多くにも効果を発揮するセフェム系第3世代の抗生物質です。とくに、他の抗生物質では殺菌しにくい耐性肺炎球菌や耐性インフルエンザ菌に対してもしっかりと効果を発揮します。
また、副作用が少なく安全に使えることも特徴です。しかし、ごくまれに乳幼児に低カルニチン血症を引き起こすほか、下痢や軟便などの副作用を引き起こすこともありますので、よく注意しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。