フェブリク®︎ってどんな病気のときに処方される薬なの?

2019/11/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「風が吹いても痛い」と言われるほどの激痛を感じることから名づけられた「痛風」は、関節に尿酸が溜まって結晶化することで起こります。尿酸の結晶は足にできやすく、とくに親指から発作が起こる人が多いようです。

この「尿酸」を減らし、血中の尿酸濃度を下げる薬がフェブリク®︎です。フェブリク®︎がどんな仕組みで尿酸を減らすのか、また、どんな副作用に注意すればいいのか、詳しく見ていきましょう。

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フェブリク®︎ってどんな薬?

フェブリク®︎は尿酸を減らす薬で、痛風や高尿酸血症の治療に使われます。血中の尿酸値が高い(7mg/dL以上)状態を「高尿酸血症」と言い、増えすぎた尿酸が関節に溜まって結晶となると痛風関節炎を引き起こします。他にも、高尿酸血症は腎障害や尿路結石などの疾患の原因となります。

フェブリク®︎は「尿酸降下薬(血中の尿酸濃度を下げる薬)」のうち、「尿酸生成抑制薬」と呼ばれるもので、尿酸が体内で合成されるのを阻害します。このため、尿中に排出される尿酸も減ることから、尿酸産生過剰型の高尿酸血症の人をはじめ、尿路結石を合併している人にも向いている薬です。痛風関節炎・痛風結節などを発症している人にも、まだ自覚症状が見られない無症候性高尿酸血症(8~9mg/dL以上)の人にも適応となります。

また、抗がん剤によってがん細胞が急速に崩壊すると、細胞内の核酸や電解質が血中に大量に放出されます。この核酸は分解されて尿酸を産生し、高尿酸血症を引き起こします。そして、前述のように高尿酸血症から腎障害を引き起こすと、やがて臓器不全を伴う重篤な腫瘍崩壊症候群に至る可能性もあります。ですから、このようながんの化学療法に伴う高尿酸血症の発症を抑えるためにも、フェブリク®︎が使われることがあります。一般的には、血液がんなどで腫瘍崩壊症候群のリスクがあるときに使われることが多いです。

フェブリク®︎は体内でどんなふうに作用するの?

尿酸は体内で核酸→プリン体→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸という順番で生成されます。このうち、ヒポキサンチンからキサンチンを生成し、さらにキサンチンから尿酸を生成するのを触媒するという重要な役目をしているのが「キサンチンオキシダーゼ(キサンチン酸化還元酵素)」です。フェブリク®︎はこのキサンチンオキシダーゼの働きを阻害し、尿酸を産生されにくくします。このため、キサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOR阻害薬)とも呼ばれています。

従来、キサンチンオキシダーゼ阻害薬として使われていたザイロリック(一般名:アロプリノール)と比較すると、フェブリク®︎の方がキサンチンオキシダーゼに対し選択的な阻害活性を示すことから、より強力に尿酸の生成を抑制します。また、ザイロリックとは阻害の機序が異なり、胆汁や腎臓など複数の経路から排泄される多経路排泄型の薬であることから、腎機能に応じて用量を調節する必要もなく、腎機能が低下している人にも使いやすいです。とはいえ、重度の腎障害がある場合は、やはり慎重に使わなくてはなりません。

また、非プリン型であることも合わせ、専門的に「非プリン型選択的なキサンチンオキシダーゼ阻害薬」と呼ばれることもあります。似たような選択的に作用する非プリン型のキサンチンオキシダーゼ阻害薬にはウリアデック・トピロリック(いずれも一般名:トピロキソスタット)があります

フェブリク®︎服用時にみられる副作用は?

フェブリク®︎の副作用としてよく見られるものに、飲み始めにかえって痛風発作が起きやすくなることがあります。しかし、これは尿酸の結晶が関節から溶け出すときに起こるもので、病状が改善に向かう過程で必要になることですから、ある程度は仕方のないものと割り切っておさまるのを待ちましょう。尿酸の結晶が関節から排泄されてしまえば、その後は発作が起こらなくなります。

その他に見られる軽い副作用としては、以下のようなものがあります。

  • 関節痛、手足の痛みや不快感、手足のしびれ
  • 下痢、吐き気、腹痛、倦怠感
  • 肝機能検査値の以上、甲状腺刺激ホルモンの増加
  • 発疹、かゆみ

また、まれに起こる重い副作用として、重篤な肝機能障害が報告されています。「だるさ・食欲不振・吐き気・発熱・発疹・かゆみ・皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)・尿が茶褐色になる」などの症状が見られた場合は、すぐに病院で診察を受けましょう。アレルギー反応もめったに報告されていませんが、発疹や発赤、じんましんやかゆみがひどいようなら医師に相談しましょう。

フェブリク®︎服用時に気をつけることは?

前述のとおり、フェブリク®︎は飲み始めの関節痛を除けば副作用の少ない薬ですから、医師の指示を守って服用していればとくに心配はいりません。ただし、重度の腎機能障害や、肝機能の低下・障害がある場合、医師と相談しながら慎重に使用していく必要があります。また、持病のある人や服用中の薬がある人、妊娠中や授乳中の人も必ず医師に伝えましょう。

飲み合わせに注意する薬剤は、以下の4つです。

  • ロイケリン(一般名:メルカプトプリン)…白血病の薬
  • イムラン(一般名:アザチオプリン)…免疫抑制剤
  • アラセナ(一般名:ビダラビン)…抗ヘルペスウイルス薬
  • ヴァイデックス(一般名:ジダノシン)…抗HIV薬

とくに、メルカプトプリンとアザチオプリンに関しては、フェブリク®︎がこれらの薬剤の代謝を著しく阻害する可能性があるため、必ず併用を避けなくてはなりません

使用上・生活上の注意としては、以下のようなことが挙げられます。

使用上の注意
  • コップ1杯以上の十分な水で服用する
  • 痛風の場合、飲み始めは少量ずつとし、数週間あけて2段階で増量していく(飲み始めの関節痛を防ぐため、ゆっくり尿酸値を下げる)
  • 尿酸の血中濃度を下げるという性質上、発作のあるなしに関わらず、毎日規則正しく服用することが重要
  • 発作時に急に飲み始めても効果がないばかりか、かえって症状が悪化することも
  • 痛風発作に対しては、他の消炎鎮痛剤やコルヒチンなどを服用する
  • がんの化学療法に併用する場合、治療スケジュールや血中尿酸値に応じ、医師から個別に服用期間が定められるため、指示を守る
食生活上の注意
  • 水分を多めに摂取し、尿量を増やして尿酸結石を防ぐようにする
  • 成人で、1日の尿量が2L以上になるよう、こまめに水分を摂取する
  • ただし、心疾患などで水分制限している場合は、医師と相談しながら水分の摂取量を決める
  • プリン体を多く含む肉類やビールは控えめに、バランスの良い食事を心がける
  • 痛風の発作時は、禁酒を徹底する
  • 肥満の場合、食生活の改善や軽い運動などでゆっくり減量する(急な激しい運動は発作を起こすので厳禁)
定期的な検査
  • 血中尿酸値や副作用について、定期的な検査が必要
  • 場合によっては、甲状腺機能関連の検査が必要になることも

痛風患者の98~99%は男性と言われていて、最初にもご紹介したように尿酸の血中濃度が7mg/dL以上になると高尿酸血症とされます。そのため、治療の目標値としては6mg/dL以下を目指すことになります。痛風を放置していると、関節が変形したり、腎機能を始め各種臓器にも悪影響が出てきたりしますので、早めに治療を始めましょう。

また、痛風の自覚症状がなくても、健康診断などで尿酸値が相当に高いと診断された場合、フェブリク®︎などの薬物治療が考慮されます。腎障害・尿路結石・高血圧・動脈硬化性疾患などの合併症がある場合は8mg/dL以上で、合併症がない場合は9mg/dLが薬物治療を考慮する目安となります。

おわりに:フェブリク®︎は痛風や高尿酸血症の治療薬として使われる

フェブリク®︎は、主に痛風や痛風の前段階の高尿酸血症の治療薬として使われます。痛風や高尿酸血症を放置していると、腎障害をはじめ各種臓器に悪影響を及ぼしますので、早めの治療が大切です。

また、がんの化学療法に伴う高尿酸血症を予防するためにも使われることがあります。この場合は個々のケースによって服用期間や方法が異なりますので、医師の指示をしっかり守りましょう。

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