記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「O157」は非常に有名な食中毒菌の一種ですが、具体的にどんな特徴をもつのでしょうか?O157という菌の特性や引き起こす症状、感染原因、対処法、予防法など幅広くお伝えしていきます。
O157とは、腸管出血性大腸菌の一種です。腸管出血性大腸菌とは病原性大腸菌の一種で、強い毒力のベロ毒素というものを産出し、出血を伴う腸炎を起こしたり、溶血性尿毒症症候群(HUS:溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を伴う症候群)を併発して重症化したりすることもある危険性の高い菌として知られています。
また、O157はその感染力の高さでも有名です。多くの食中毒は、100万個以上の菌が体内に入らない限り感染することはありませんが、O157はたった50~100個体内に侵入するだけで感染が成立するといわれています。
なお、食中毒は通常、食中毒菌の増殖に適している気温の高い初夏~初秋にかけて発症率が上がります。しかし上述の通り、O157は菌の数が少なくても高い感染力を持つため、気温の低い時期でも発症するケースがみられます。
O157に感染した場合は、3~8日程度の潜伏期間を経て、以下のような食中毒症状が見られます。
上記の症状は、成人の場合軽度で済むことも少なくありませんが、抵抗力の弱い乳幼児や子供、高齢者が感染した場合は、後遺症が残るほど重症化する恐れもあるので注意が必要です。
O157は動物(牛や羊、豚などの家畜)の腸内で生息している菌で、O157に汚染された食べ物や水を摂取したり、またはO157感染者の糞便で汚染されたものを口にしたりすることで感染します。
O157の感染が疑われる場合は、すぐに病院を受診して治療を受けるようにしてください。下痢を止めるために市販の下痢止めを服用してしまう方もいらっしゃいますが、毒素が体内に留まり回復が遅くなってしまうため、自己判断での服薬は絶対にやめてください。
下痢の対処法としては、基本的には安静にし、水分を補給し、消化にいい食事の摂取をすることになります。抗生物質の投与によって治療する場合もあります。
食中毒予防の基本としては、菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」が3原則になります。
日頃から、調理前後(特に生ものを取り扱うとき)や食事の前、排便後は必ず手を洗い、消毒するのを習慣化してください。また、食中毒菌を増やさないためには、食品の迅速な調理と低温保存(細菌の多くは、10℃以下の環境で増殖がゆっくりになり、-15℃以下で増殖が低下するといわれています)が重要です。
そして、多くの細菌やウイルスは熱に弱いため、O157などの食中毒菌をやっつけるには加熱処理が肝心です。目安として、食品は中心部を75℃で1分以上よく加熱するようにしてください。
O157はほかの食中毒菌よりも、かなり強い感染力を持っています。抵抗力の弱い子供や高齢者が感染すると重症化する恐れがあるので、涼しい時期になっても気を抜かず、手洗いや消毒、冷凍・加熱処理などの予防策を怠らないようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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