記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高コレステロール状態は、脂質異常症や動脈硬化の発症リスクを高めます。今回は、血中のコレステロール値を高くする疾患の一種である家族性高コレステロール血症 ホモ接合体について、その原因や特徴、代表的な症状などを解説していきます。
生まれつきの遺伝子要因から、一般的に悪玉コレステロールと呼ばれる「LDL(Low Density Lipoprotein)コレステロールの血中の値が異常に高くなってしまう病気です。
通常、血中のLDLコレステロールは肝臓の細胞表面にあるLDL受容体と呼ばれる蛋白の働きにより分解され、細胞の中に取り込まれる仕組みになっています。しかし、家族性高コレステロール血症の人は、LDL受容体を構成する遺伝子、または適切に働かせるための遺伝子のどちらかに生まれつき異常があります。このため、適切に分解・吸収できないまま、血中にLDLコレステロールが溜まっていってしまい、結果的に異常な高コレステロール状態を引き起こします。
なお、家族性高コレステロール血症は、原因となる遺伝子異常が父・母双方由来のものか、父・母どちらか一方に由来するものかにより、以下のように区別されています。
家族性高コレステロール血症の患者のうち、原因の遺伝子異常が両親双方に由来するホモ接合体の患者は、日本に120人程度存在すると考えられています。
遺伝子異常による生まれつきの疾患であるため、症状は子どもの頃から現れます。まず10歳ころまでに、肘や膝付近を中心に手首、おしり、手の甲、アキレス腱などに、黄色腫(おうしょくしゅ)と呼ばれる黄色いイボのようなものが出来てきます。
この黄色腫は体の成長と共に大きくなり、人によっては、1~5cmくらいの結節(けっせつ)と呼ばれる状態になることもあります。また、血中のLDLコレステロール値が高い状態が続くために、徐々に動脈硬化が進行し、動脈硬化に伴う以下のような症状も現れてきます。
家族性高コレステロール血症ホモ接合体の治療法としては、まずは一般的な高コレステロール状態の治療と同じく、食事療法と運動療法が推奨されます。食事療法は低脂肪・低コレステロールをめざした内容で行い、運動療法は医師の診断と指示のもとで、軽い有酸素運動を行いLDLコレステロール値の減少をめざすものです。
ただ、家族性高コレステロール血症ホモ接合体の場合は、食事や運動療法だけでは十分な治療効果を得られません。このため、段階を踏みながら以下のような薬を併用して投薬治療も行っていきます。
なお食事療法・運動療法・投薬治療のすべてを行っても効果が不十分な場合には、器械を使って血液を体外に取り出し、LDLコレステロールを除く治療法が選択されます。このように透析装置に似た器械を用い、体外循環によるLDLコレステロール値の減少をめざす治療法がLDLアフェレシスです。
いったんLDLアフェレシスを始めると、その後は1~2週間に1度のペースで一生にわたり続ける必要がありますが、状態に合わせて速やかに始めることが推奨されています。家族性高コレステロール血症ホモ接合体の治療は、専門知識を持つ医師の監督・指示のもと、動脈硬化の進行具合も鑑みながら、定期的かつ慎重に行わなければなりません。
また、糖尿病、高血圧、肥満など、動脈硬化を悪化させる恐れのある他の疾患を発症させないよう、厳しく観察・コントロール必要もあります。
両親双方から受け継いだ遺伝子に異常があることが原因で、生まれつき血中のLDLコレステロールを分解できない疾患を家族性高コレステロール血症ホモ接合体と言います。日本には120人ほど患者がいるとされる疾患で、10歳までに黄色腫と呼ばれる皮膚異常が現れるほか、異常な高脂質状態が続くことで動脈硬化にもかかりやすくなるのが特徴です。