赤ちゃんの黄疸、新生児黄疸ってどんな症状?

2020/1/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

産まれたばかりの赤ちゃんの皮膚はまだ薄いので、多くは大人よりもやや白っぽかったり、皮下の血管の色によってピンクがかったように見えたりすることがあります。しかし、皮膚や白目が黄色っぽく見える場合、黄疸と考えられます。

赤ちゃんは一時的にこの黄疸を発症しやすく、たいていは生理現象で心配いらないものの、一部に危険な場合もあります。こうした新生児黄疸について、正常な場合と病的な場合を詳しく見ていきましょう。

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新生児黄疸とは

新生児黄疸とは、生後3~5日程度をピークに赤ちゃんの皮膚や粘膜が黄色く染まる現象のこと(黄疸)を言います。黄疸は、血液中の赤血球が破壊されてできた「ビリルビン」という黄色い色素によって起こるもので、ビリルビンの血中濃度が上昇していくにつれ、だんだんと白目が黄色くなり、その次に皮膚が黄色くなっていきます。

赤ちゃんは産まれたときの血中の赤血球の数は多いのですが、その寿命は大人の赤血球よりも短いという特徴があります。このため、産まれてしばらくは古くなった赤血球が毎日どんどん分解され、そのためにビリルビンが大量に作られるのです。

健康な大人は日々分解される赤血球の数が赤ちゃんよりも少ないうえ、肝臓や腸でこのビリルビンを処理し、便として排泄できるので黄疸にならないのですが、赤ちゃんの場合、大量にビリルビンが作られてもその処理機能が十分に発達しておらず、したがってビリルビンの血中濃度が一時的に上がってしまうのです。

この新生児黄疸(生理的黄疸)はほとんどの新生児に起こりますが、たいていの場合、他の症状はなく、生後1週間~2週間が経過するごろには自然に消えていき、身体に悪影響を及ぼすこともありませんので、心配は要りません。

また、生理的黄疸の中には「母乳哺育黄疸」と呼ばれるものがあります。母乳がまだ十分に作られていない場合、赤ちゃんが十分に母乳を飲めず、そのためビリルビンの排泄回数が少なくなり、黄疸が現れるものです。これは赤ちゃんが母乳を飲み続ければ自然と母乳も作られるようになってきますし、それに伴って赤ちゃんの飲む量も増えますので、やはり自然に黄疸は消えます。

ごくまれな原因として、「母乳性黄疸」と呼ばれるものがあります。母乳を飲んでいる赤ちゃんの1~2%に起こるもので、母乳にビリルビンの排泄を遅くする物質が多く含まれているとき、ビリルビンの血中濃度が上昇しやすくなります。この母乳性黄疸の場合、生後5~7日目に現れ、約2週間が経過したころにピークとなり、3~12週間程度続きますが、やはり生理的黄疸と同様に自然に消えていきます。

これらの生理的黄疸や母乳性黄疸の場合、生理的な現象ですので、たいていは治療も必要なく、自然に消えていきます。しかし、ビリルビン値が高い場合は治療が必要になる場合もありますので、次に詳しくご紹介します。

新生児の黄疸はどうやって治療するの?

前述のように、新生児黄疸の多くは生理的黄疸という自然な現象です。生理的黄疸と診断された場合、とくに治療は必要ありません。心配な場合は、母乳やミルクを通常よりも頻繁に授乳(1日8~12回程度)し、排便の回数を増やしてあげるとビリルビンの排泄頻度も上がり、より多くのビリルビンを排泄しやすくなります。ただしこのとき、水や砂糖水など、母乳やミルク以外のものをあげてはいけません。

ビリルビン値が高い場合、多くは光線療法という治療法が使われます。強い光を使い、ビリルビンを尿中に速く排泄されやすく変換するもので、専用の装置を使って青い光を照射します。NICUという赤ちゃん用の集中治療室などで、目と生殖関連機能を守るためにアイマスクとおむつをつける以外は裸の状態で、頻繁に向きを変えながら全身に青い光を当てていきます。

早ければ2~3日、遅くとも1週間程度で退院できる場合がほとんどで、どのくらい効いているか判断するために定期的にビリルビンの血中濃度を測定しながら治療を行います。目や生殖関連機能がしっかり守られていれば、赤ちゃんにとっても比較的安全な治療法で、病院によってはお父さんやお母さんがミルクをあげたり、おむつを変えたりできるところもあります。

ビリルビン値が異常に高く、かつ、高強度の光線療法を実施してもビリルビン値が上がり続ける場合、交換輸血を行うこともあります。赤ちゃんの血液を1回あたりシリンジ1本分程度とごく少しずつ取り除くとともに、提供者の同じ量の血液と交換していきます。交換輸血にかかる時間は約2~4時間程度です。

交換輸血をすると、心臓・呼吸の障害、血栓、血中電解質平衡異常などの合併症を引き起こしたり、そのリスクが高まったりすることから、新生児には早い段階でビリルビン濃度の検査を行い、光線療法の効果を高めたことで、現在ではあまり使われなくなってきています。

新生児の黄疸が危険な場合って?

生理的黄疸・母乳性黄疸の場合は、自然に消えていく生理的な現象ですから、とくに心配は要りません。これらの黄疸の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

生理的黄疸の特徴
生後2~3日目ごろから始まり、生後1週間を過ぎると徐々に消えていく
母乳性黄疸の特徴
生後5~7日目ごろから始まり、生後3~12週間程度続く

このように、生後少し時間が空いてから始まることがポイントです。1週間が経過したころから徐々に黄色みが消えてくるようであれば、たいていは生理的黄疸と考えて良いでしょう。一方、母乳性黄疸と思われる場合でも、2週間以上続いている場合は、本当に母乳性黄疸なのか他の疾患なのかを判別しなくてはなりませんので、病院を受診しましょう。

一方、危険な黄疸、つまり重篤な疾患に発展しやすい「病的黄疸」の場合、以下のような特徴が見られます。

  • 生後24~48時間以内に現れる
  • 反応が薄いか、見られない(無反応・昏迷)
  • 母乳やミルクをうまく吸うことができない(哺乳不良)

つまり、ざっくり分けると現れる時期が違い、病的黄疸の場合は生理的黄疸よりも早く、生後すぐに現れます。とはいえ、このように生後すぐに現れる病的黄疸の場合、多くはまだお母さんも赤ちゃんも一緒に病院にいて、医師や看護師のチェックを受けていますので、すぐに発見して対処できる場合がほとんどです。

新生児の黄疸がこのように厳密に管理されているのは、血中のビリルビン濃度が異常に高くなると、白目や皮膚だけでなく脳の神経組織にも沈着して神経細胞を破壊してしまい、脳性麻痺や聴覚障害を引き起こすほか、治療しないと生命に関わるからです。

とはいえ、病的なほどビリルビン値が異常に高くなるのは、赤血球が異常に大量に破壊されてしまう「新生児溶血性疾患」と呼ばれるケースが多いです。Rh式血液型不適合のように、お母さんと赤ちゃんの血液型が違うと、お母さんの血液中に含まれる抗体が胎盤を通じて赤ちゃんの身体に移動したあと、赤ちゃんの赤血球を攻撃してしまうため、赤血球が急速に、そして大量に破壊されてしまうのです。

このような場合には光線療法のほか、交換輸血が実施されることもありますが、現在では生後まもない赤ちゃんの様子は慎重に経過観察されており、入院中という早い時期に黄疸が起こるような場合は早期に処置を行えますので、ほとんどが光線療法で済み、重篤な事態にまで進行することは滅多にありません

また、ごくまれに肝臓の障害や、胆汁の排泄に問題がある赤ちゃんで黄疸が長引いたり、いったんビリルビン値が下がって症状も落ち着いたものの、またぶり返したりすることがあります。例えば、胆汁排泄の障害では胆道閉鎖症などが原因の場合が多く、この場合、腸管に胆汁(ビリルビンを肝臓から腸に運ぶ)が排出されず、したがって便がビリルビンで着色されないため、便が灰白色になるという大きな特徴があります。

とくに黄疸が長引く場合、便の色に気をつけて観察しておきましょう。もし、便の色が白っぽいと感じられる場合は、ぜひ病院を受診してください。また、肝炎などの感染症や代謝異常によっても黄疸が長引くことがありますし、前述のようにうまく母乳が飲めない、反応が薄いなど、黄疸以外の症状が見られる場合は「病的黄疸」の可能性があります。この場合も、早めに病院に行きましょう。

おわりに:新生児黄疸の多くは生理的なものだが、早く現れる場合は注意しましょう

新生児黄疸の多くは「生理的黄疸」または「母乳性黄疸」と呼ばれる生理的なもので、自然に消えていくため、心配は要りません。しかし、生後すぐに現れる場合はビリルビン値が異常に高くなる「病的黄疸」と考えられます。

他にも、黄疸が2週間以上長引く場合、肝機能障害や胆汁の排泄機能障害などの疾患も考えられます。便が灰白色であるなど、黄疸以外に当てはまる症状があるときには、早めに病院を受診しましょう。

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