記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/12/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
赤ちゃんは、大人と比べると体の大きさも内蔵の機能も、そして脳や神経・骨などもまだまだ未熟なまま生まれてきます。未熟児ではなく、十分な大きさで生まれてきた赤ちゃんであっても、それは変わりません。
すると、大人にとってはなんでもないことが、赤ちゃんにとっては負担になることもあります。そんな疾患の1つに、新生児けいれんがあります。生まれたばかりの赤ちゃん特有のこの疾患について、一度知っておきましょう。
赤ちゃんは、体の大きさだけでなく、体内の臓器も非常に未熟な状態で生まれてきます。それは脳や神経系も例外ではなく、そのため大人からするとささいな原因であっても、けいれんを起こしてしまうことがあります。しかも、けいれんの続く時間が長くなればなるほど、赤ちゃんの脳や神経に後遺症が残るリスクが高くなりますので、早期診断と早期発見が非常に重要です。
このように、生まれてからおよそ7日間、すなわち約1週間程度の間に、さまざまな原因によって起こるけいれんを「新生児けいれん」と呼んでいます。けいれんというと、ひきつけのような繰り返し体がこわばる症状や、がくがくと体が震える症状のイメージがありますが、生まれたばかりの赤ちゃんは脳機能がまだ未熟なため、こうした典型的なひきつけの症状が出ることは非常にまれです。
新生児けいれんの症状は「唇や舌がピクピクと規則的に動く」「違和感のある動作をする」「瞬きを繰り返す」「嘔吐」「無呼吸」などの形で現れます。また、見た目では異常な動きがなくても、発作を起こしている場合もあります。このように、新生児けいれんはパッと見てけいれんかどうかがわかりづらいため、確定診断のためには発作が起こったときの脳波検査が必要です。
新生児けいれんが起こるのは、生まれる前や生まれてくるとき、生まれてすぐなど、この時期にかかりやすいさまざまな疾患が原因です。こうした疾患によって脳の神経細胞が異常に興奮し、伝わらなくてもいいところまで信号が伝わってしまい、異常な動きや行動、吐き気などの症状が引き起こされるのです。
そのため、原因となる疾患は以下のように、脳神経に関係するものが多くみられます。他にも、遺伝やお母さんが妊娠中に飲んでいた薬などが原因となることもあります。
脳波などの検査を行い、新生児けいれんと診断された場合、赤ちゃんを保育器に入れ、心拍数・血圧・呼吸数などの観察を行います。同時に、静脈からいつでも薬を投与できるような準備を行うとともに、けいれんが続くようなら酸素の吸入を行い、かつ、この間に原因に対する治療を行います。
ここまでご紹介してきたように、新生児けいれんは脳や神経に関する異常であることが多いですから、その処置はスピードが勝負です。原因が短時間でわかる場合は上記の状態のまま、治療を行えばほとんど問題なく処置を終われますが、原因が短時間でわからない場合は、ひとまずけいれんを止める投薬治療を行います。
以前は小児や成人に使われている抗けいれん薬を使用していましたが、2008年に新生児けいれん用の薬剤が日本で初めて認可されてからは、その専用薬を使っています。投与する量や時間は、個々の赤ちゃんの状態を見ながら判断します。
新生児けいれんの症状が出たときは、お父さんやお母さんはびっくりしてしまうかもしれませんが、何より慌てずできるだけ冷静に対処することが必要です。ほとんどのけいれんは数分間で止まりますし、最初の数分間で命にかかわるようなことは非常にまれですから、まずは落ち着いて以下のような対処を行いましょう。
このとき、口の中にものを入れたり、大声で呼びかけたり、体を揺すったり押さえつけたりといった刺激を与えてはいけません。上記の対処を行った後は、時間を確認しながらまず観察を行いましょう。ビデオや携帯端末を使って撮影しておくと、その行動で冷静さを取り戻しやすいだけでなく、受診の際に診断を助ける良い資料となります。
けいれんが3分以内におさまり、かつ、顔色が極端に悪いまたは意識がないなどの重篤な状態ではない場合は、けいれんがおさまってから移動しましょう。ただし、けいれんが5分を超える場合は、けいれんが15分を超える「重積発作」となる場合もありますので、5分を超えたことが確認できた時点ですぐに救急車を呼び、病院を受診しましょう。
また、けいれんが3分以内におさまり、その後赤ちゃんが元気にしているようであっても、てんかんや心血管系の基礎疾患が隠れている場合があります。そのため、けいれんが起こった場合は、その後すっかり治ったように見えても、治療が必要かどうかを確認する意味で一度必ず病院を受診しておきましょう。
新生児けいれんとは、生後7日間程度(約1週間)の間に起こるけいれんのことで、原因となるのは何らかの理由で脳に酸素を含んだ血液が十分に行き渡らない「低酸素性虚血性脳症」が最も多いとされています。
もしけいれんが起こったら、落ち着いて赤ちゃんを楽な姿勢で寝かせ、意識があるかどうか確認しましょう。5分を超えたら救急車を呼ぶのはもちろんですが、すぐにおさまったときも、一度確認のために病院を受診しましょう。