記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/29 記事改定日: 2020/9/15
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
発熱はさまざまな疾患の症状としてよく見られ、病気のサインにもなります。特に高齢者の場合、病気の早期治療はとても大事です。風邪のほかにどのような原因で高齢者は発熱するのでしょうか。この記事では、発熱の原因や高齢者の発熱予防法、発熱時のケアを紹介します。
高齢者の発熱の原因として、まずは「感染症」「膠原病」「悪性腫瘍(がん)」が考えられますが、最も多いのは感染症です。
細菌やウイルスなどの微生物が体内に侵入して引き起こされるものです。こうした異物が体内に入ってくると、体の中ではその異物を排除しようとする「免疫機能」が働きます。熱が出るのは免疫反応のひとつで、細菌やウイルスを弱らせようとしています。
自己免疫疾患とも呼ばれ、免疫機能に何らかの原因で異常が起こったために生じる疾患です。本来、免疫機能は自分の体と異物をきちんと区別し、異物だけを攻撃します。しかし自己免疫疾患では、この区別する機能に異常が起こり、自分の体の細胞を病原体と間違えて攻撃してしまいます。代表的な膠原病には慢性関節リウマチがあります。
がんの場合、感染症と同じようにがん細胞を攻撃するために熱が出ている場合と、がんそのものが熱を出している場合がありますが、このどちらが原因で発熱しているのかを区別することはできません。
上記のほか、原因がわからない発熱も高齢者にはよくあります。また、感染症、自己免疫疾患、がんは高齢者に限らずあらゆる年代で発症することのある病気です。
高齢者が感染症にかかりやすいのは、若者と比べて免疫機能が低下していることが原因です。60歳を超えると、免疫機能は20代のおよそ半分以下にまで低下してしまうと言われています。
これは、加齢にともなって免疫機能のメインとして活躍する白血球(T細胞)を生み出す数が減ってしまい、その活動自体も衰えてしまうからです。
また、T細胞の成長を助ける脾臓やリンパ節など、各種臓器の働きも低下してしまうため、T細胞が病原体を見分けて反応する働きも弱くなります。このように、免疫細胞を生み出す数が減り、しかも臓器の衰えによって免疫細胞が十分に働けなくなると、体全体の免疫機能が衰えてしまい、体内に侵入してきた病原体を素早く排除できなくなってしまうのです。その結果、高齢になると若い頃よりもさまざまな病原体の影響を受けやすくなるのです。
高齢者が熱を出したとき、健康な人であれば体がだるい・熱いと自覚し、周囲に伝えることができますが、ごく軽度の認知症がある人など、もともと体の各種機能が弱ってきている人は、自分の体の状態をうまく把握できず、症状を自力で伝えられないこともあります。
このため、以下のような症状が見られた場合、周囲の人が発熱の兆候に気づいてあげられるのが理想です。
また、高齢者は体に熱がこもったとき、上手に発散する機能も弱っています。発熱しているわけではないのに体を触ると熱い、ということもあります。体温が上がっていると感じたときは、まず以下のようなことを確認してみましょう。
これらを改善してもやはり体温が下がらない場合、発熱していると考えてよいでしょう。
高齢者が熱を出したときも、対処法は基本的に若者と同じです。まずは病院を受診して原因を特定し、発熱を起こしている原因に対して治療を行います。
熱が出たとき、安易に解熱剤を飲んで終わりにしてしまうと、膠原病や悪性腫瘍など、重篤な疾患に気づけなくなってしまう可能性もあります。自己判断で解熱剤を使う前に病院を受診し、医師に原因を確認してもらい、対処法を仰ぎましょう。
高齢者が発熱したときは、基本的には一般的な内科のクリニックなどを受診しましょう。検査を行った上で重度な肺炎や尿路感染症が発見されたり、血液疾患が疑われたりするような場合にはそれぞれの専門科を紹介してもらうことができます。また、かかりつけ医がある場合は、内科以外であってもまずはかかりつけ医に相談するのもいいでしょう。
受診した際には、いつから熱があるのか、最高で何度に達したか、食欲の有無、水分摂取の状況、咳などの随伴症状を詳しく医師に伝えるようにしてください。
膠原病やがんを日常生活から予防するのは難しいですが、感染症による発熱は、本人や周囲の人のちょっとした心がけで十分予防できます。まずは、本人もご家族も、日常生活の中で基本の感染対策徹底、清潔維持、予防接種、生活習慣の見直しに気を付けましょう。
感染症を防ぐには、何よりも細菌やウイルスを身体に入れないことが重要です。そのために、まずは外出から帰ったときの手洗い・うがい、体の清潔保持を、本人とともに家族も気をつけましょう。
さらに、冬に流行する感染症(インフルエンザなど)のなかには、高齢者がかかると生命に関わるものもあります。医師と相談して、できるだけ毎年予防接種を受けましょう。もちろん、本人だけ受けて一緒に住んでいる家族が受けていないと、家族から感染してしまうリスクもありますので、家族も一緒に予防接種を受けておくのが望ましいです。
しっかり予防していても感染症にかかってしまうことはあります。もし、以下のような条件で発熱してしまった場合は、適切なケアを行いましょう。
上記のほか、水分が摂れない、熱以外にもぐったりして反応が鈍い、寝られないほどの咳が出る、尿が出ないなどの症状がある場合は、早めに病院を受診してください。
高齢者は、筋肉量が少なく平熱が低めになるため、若い人から見ると一見熱が出ていないように見えることも少なくありません。また、本来なら高熱が出るような病気にかかっても、体温調節がうまく働かず、熱が出ないこともあります。
ですから、熱が出たときだけを受診の目安にするのではなく、全身の状態を見ていつもと違って具合が悪そうだと思った場合は病院を受診しましょう。
高齢者の発熱の原因として、「感染症」が最も多く、次いで膠原病や悪性腫瘍が原因として考えられます。感染症は日常生活で十分予防が可能です。手洗いうがいはもちろん、身体を清潔に保ち、生活習慣を見直して食事や運動から体力をつけておきましょう。また、インフルエンザの予防接種を受けておくのも重要ですので、家族や周囲の人も一緒に予防に取り組むことをおすすめします。