ギラン・バレー症候群ってどんな病気?何が原因で発症するの?

2020/2/10

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

ギラン・バレー症候群という疾患名を聞いたことはありますか?この疾患は、発症者がまだまだ少ないことから、その原因や発症のメカニズムなど、詳しいことはよく知られていません。しかし、いくつか明らかになっていることや、推測されることもあります。

そこで、この記事では、この珍しい難病についてわかっていることや推測されていること、診断の基準や検査方法などについてご紹介します。

ギラン・バレー症候群とは

ギラン・バレー症候群とは、全身に分布している末梢神経が障害され、脱力・しびれ・痛みなどが生じる疾患です。末梢神経とは、体の動きを司る「運動神経」、感覚を伝える「感覚神経」、循環器や消化器・呼吸器などの活動を調整する「自律神経」の3つから成り立っているため、運動できない脱力、感覚がおかしくなるしびれなどの症状が現れます。

ギラン・バレー症候群は一部の地域だけでなく、世界のどこでも発症する可能性があり、発症する年代も乳幼児から高齢者までさまざまです。しかし、発症の多い年代は高齢者であり、とくに日本において、平均発症年齢は39歳ですが、加齢とともに罹患者が増加する傾向にある疾患だということがわかっています。

他の人と接触しても感染することはなく、遺伝もしません。重症例では死亡報告もありますが、軽い症状で済む場合もあります。実際に罹患する人は年間で10万人に1~2人と、非常に低い罹患率のためよく知られておらず、突然の麻痺に襲われる患者さん本人はもちろん、家族や周囲の人が恐怖や不安に駆られてしまうことも少なくありません。

食あたりやインフルエンザなど何らかの感染症の後、免疫システムに不具合が生じ、数週間後に突然両手足に力が入らなくなり、急速に全身に麻痺が広がります。重症例では人工呼吸器が必要になったり、生命に関わる事態になったりすることもある自己免疫疾患の1つと考えられています。

一般的に予後良好とされていますが、症状が出ていた間に傷んだ神経や筋肉の回復には何年もの努力が必要であり、後遺症もずっと残る場合があります。生活に支障をきたすレベルの後遺症が残る症例が2割程度あることを考えると、決して予後良好な疾患であると楽観的に捉えるわけにはいきません。

ギラン・バレー症候群は、厚生労働省の治療研究(難治性疾患克服研究事業)の対象となっている疾患ですが、2019年現在、医療給付や障害者総合支援法の対象になっていないため、例えば東京都難病・がん患者就業支援奨励金などの対象にもなっておらず、発症後の経済的なケアも十分とは言えない状態です。

ギラン・バレー症候群を発症する原因は?

ギラン・バレー症候群のはっきりとした原因は解明されていませんが、何らかの感染症に罹患したことがきっかけとなって発症すると考えられています。実際に、感染症に罹患した3〜4週間後にギラン・バレー症候群を発症する人が多く、約8割の人でこのような先行感染が見られるとされています。

先行感染の感染症は呼吸器感染が多く、最も多いのは風邪の一種と言われています。つまり、風邪をひいた3〜4週間後に、突然手足が脱力したり、しびれたりするギラン・バレー症候群を発症するというわけです。

また、よく知られている感染症に「カンピロバクター腸炎」があり、ギラン・バレー症候群を発症した患者さんのうち、約1割はこのカンピロバクター腸炎を先行感染として発症しているとされています。カンピロバクター腸炎は、嘔吐や下痢などの症状が現れる感染性腸炎です。

なぜ感染症からギラン・バレー症候群を発症するの?

とはいえ、前述のような風邪をはじめとする感染症にかかった人の全員がギラン・バレー症候群を発症するわけではありません。むしろ、ギラン・バレー症候群を発症するのは、感染症にかかった人のごく一部と言えます。そのため、なぜ感染症が原因となってギラン・バレー症候群を発症するのかといったメカニズムの面ははっきりとは解明されていません。

最も有力な説として、細菌などに感染すると免疫システムが活発化することが関係していると推測されています。免疫システムとは、本来、私たちの体を細菌やウイルスなどの異物から守るための仕組みであり、体に細菌やウイルスなどの病原体が入ってくると、その異物を攻撃して排除しようとします。

このとき、細菌と間違って神経を攻撃してしまうことが、ギラン・バレー症候群の発症の原因につながるのではないかと考えられています。細菌やウイルスと人間の神経には似ている部分があるため、免疫システムが誤動作してしまうのではないか、と推測されるのです。このため、ギラン・バレー症候群は膠原病などと同様の「自己免疫疾患」の1つとされています。

発症したかどうかはどうすればわかる?

ギラン・バレー症候群を発症したかどうかの診断は、以下のような病歴の問診と診察によって行います。

  • 3~4週間前に風邪や腸炎などの感染症に罹患したか(先行感染の確認)
  • 足を叩いたときに反応して動くかどうか(体の反射反応の確認)
  • 筋力が低下していないかどうか

また、これらの診察や治療と並行して、確定診断のため、以下のようなさまざまな検査も同時に行っていきます。検査が終わってから治療を開始していると、その間にどんどん疾患が進行してしまいますので、上記のような問診・診察でギラン・バレー症候群の可能性が高いと判断されれば、すぐに治療を開始し、並行して検査も行うのです。

筋電図検査
  • 筋繊維の電気活動を調べる検査で、ギラン・バレー症候群では神経伝導検査が重要
  • 神経伝導検査では、筋肉に電気をかけ、筋肉が動くかどうかを調べる
  • この検査で筋肉の動きが鈍い場合、どこかの神経が障害されている可能性が高い
血液検査
  • ギラン・バレー症候群の場合、「抗ガングリオシド抗体」や「抗糖脂質抗体」が検出されることがある
髄液検査
  • 腰から長い針を刺し、髄液中のタンパクの値を調べる
  • ギラン・バレー症候群の場合、髄液中のタンパクの値が上昇する
徒手筋力テスト
  • 一つひとつの筋肉について、圧力をかけた状態で力を入れ、筋力を確認する

このように、各種筋力についての検査と、血液や髄液中の成分の検査を行います。他にも、ギラン・バレー症候群の治療には点滴や薬剤を使いますので、心臓の機能や腎臓の機能に問題がないかどうかの検査がまず最初に行われますが、これはギラン・バレー症候群の診断には直接関係のない検査です。

おわりに:ギラン・バレー症候群は自己免疫疾患の一種と考えられます

ギラン・バレー症候群は、年間でも10万人に1〜2人程度が発症するとされる、非常に罹患率の低い疾患です。そのため、詳しい原因や発症のメカニズムについては解明されていないものの、免疫システムが病原体と間違って神経を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一種だと考えられています。確定診断のためには問診の他にいくつかの検査を行いますが、検査を待っている間にも病状は進行しますので、検査と治療を並行して行います。

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