記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/2/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
頭痛が起こると大人でもつらく感じることが多く、仕事や日常生活に支障をきたすことも少なくありません。そうした頭痛は大人だけに起こるものではなく、子供にも起こることがあります。
大人の場合は薬局やドラッグストアでも簡単に買える頭痛薬が多く販売されていますが、中には子供には使えないものもあります。では、子供の頭痛はどうやって治療すれば良いのでしょうか?
子供に起きる頭痛は、ほとんどが「片頭痛」または「緊張型頭痛」で、両方のタイプを合わせ持っていることも少なくありません。痛みとしては、一般的に片頭痛タイプの方がつらいとされていますが、中学生以降になると学校生活や交友関係におけるストレスも小学生の頃と比べて大きく増えることから、緊張型頭痛が毎日続いてしまい、つらいと訴える子もいます。
子供の片頭痛は、大人の片頭痛と比べて以下のような特徴があります。
また、光や音、においなどに過敏になることもあります。そのため、頭痛が起きると部屋を暗くして横になる子供の場合は、片頭痛の可能性が高いと言えます。子供は頭痛が起こってもうまく言葉で伝えられなかったり、周囲の大人に気のせいと言われたりして、放置されてしまうことも少なくありません。しかし、頭痛は大人だけの病気ではなく、子供にも起こることなのです。
小児の頭痛外来を開設している医師によれば、患者の多くは小学校高学年〜中学生くらいのローティーンだということです。さらに、問診を行うと4~6歳ごろからたびたび頭痛を感じていた、という子供も少なくありません。こうした中で、周囲の大人から適切なサポートを受けられないと、体調不良から不登校になってしまう子供もいます。
頭痛には2つの種類があり、体や脳に原因となる疾患がないのに慢性的に頭痛を繰り返してしまう「一次性頭痛」と、脳腫瘍・頭部外傷・副鼻腔炎・風邪などウイルス性疾患といった原因によって起こる「二次性頭痛」です。このうち、子供によく見られる頭痛は「一次性頭痛」で、最初にご紹介した片頭痛・緊張型頭痛はいずれも一次性頭痛に分類されます。
小児の頭痛外来は全国的にも数がまだまだ少ないため、近くに小児の頭痛外来がないときは、まず小児科に相談するのが良いでしょう。また、頭痛のたびに嘔吐を繰り返してしまうなど、特徴的な症状がある場合もきちんと小児科医に伝え、できるだけ頭痛外来を紹介してもらうようにしましょう。
片頭痛と緊張型頭痛、どちらも頭痛には変わりありませんが、その起こる原因は全く違います。ざっくり言うと「脳の血管が急激に拡がって痛む」のが片頭痛、「頭の横や肩・首の筋肉が緊張して痛む」のが緊張型頭痛です。具体的な原因としては、以下のようなものが考えられます。
それぞれの症状の違いは、以下のようになっています。
子供の頭痛を治療する場合、薬を使う方法と使わない方法があります。基本的には、薬を使わない非薬物治療を中心に行うことが多いようです。まず、子供に偏頭痛と緊張型頭痛の違いを説明し、原因や症状を正しく理解してもらうことから始めます。理解して頭痛の違いがわかるようになると、精神的に落ち着くことができ、自分自身での対策も立てやすくなるからです。
また、片頭痛には痛みを誘発する何らかの「誘因」があると考えられるため、それも説明します。例えば、以下のようなことが誘因となります。
一般的に、これらの因子が2つ重なると子供の片頭痛が引き起こされやすくなると言われています。しかし、気候の変化や温度差は変えようがありませんので、その場合は睡眠を規則正しくとることや、疲れを溜めないこと、スマホを見すぎないこと、ストレスの上手な発散方法を見つけておくこと、などに注意すると良いでしょう。
また、特定の食品が誘因になると言われることもありますが、これは個人差が大きく、一般的に誘因となりやすい食品を食べても頭痛が起こらない子供もいます。食べても頭痛が起こらないものなら、食べても構いません。避ける必要のないものを無理に我慢しないことも、ストレスを避ける上で重要なことです。
一方、緊張型頭痛の場合、肩こりなどを伴うことが多いため、子供も自分で気づきやすいです。そこで、学習やパソコン操作、スマホ操作などで長時間同じ姿勢のままにならないよう、日常生活を指導するだけで改善することが多く、たいていは薬を必要としません。
子供の頭痛の治療で、一般的に薬が必要となるのは片頭痛の場合です。第一選択として、鎮痛薬の「アセトアミノフェン」「イブプロフェン」などが使われます。子供の場合、体重あたりの量を早くから服用することで、効果が出やすいとされています。頭痛に伴って吐き気や実際に吐いてしまうなどの症状がある場合は、吐き気止めの「ドンペリドン」も必要です。
これらの薬剤で効果が見られない場合は、トリプタン製剤という治療薬が使われます。しかし、トリプタン製剤は主に大人で使われていて、効果としては期待できますが、日本ではまだ子供に対して保険適用となっていません。そのため、本人や両親の承諾を得てから処方します。
頭痛が起きる前に目が見えにくくなったり、キラキラしたものが見えたりする「前兆」が起こる子供もいます。頭痛の前に手足が動かしにくくなるなど、特殊な前兆が起こる場合はトリプタン製剤を使えませんが、子供自身が前兆に気づいていないこともありますので、トリプタン製剤を使う場合は注意が必要です。
片頭痛のさまざまな誘因を避けても日常生活に支障をきたすレベルの頭痛が頻繁に起こる場合や、トリプタン製剤が使えない場合は、痛みを起こしにくくする「予防薬」の使用を検討します。
子供の頭痛のほとんどは、体や脳に原因となる疾患がないのに慢性的に頭痛を繰り返す「一次性頭痛」です。一次性頭痛には片頭痛と緊張型頭痛があり、緊張型頭痛は筋肉の緊張で起こりますので、ほとんどは日常生活の指導で改善します。
片頭痛の場合は薬が処方されることもありますが、片頭痛を引き起こす「誘因」を避けることも大切です。季節や温度差は変えられませんが、精神的なストレスや疲労を溜めないよう気をつけましょう。