記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/12/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
現代人にとって、もはや欠かせないツールの一つとなっているスマートフォンですが、中にはスマートフォンの便利さや楽しさにのめり込みすぎて、日常生活に支障が出てしまう「スマホ依存症」を発症してしまう人もいます。
ゲームのように子供の病気と考えられやすいですが、大人も発症するリスクがあることは否めません。そこで、この現代病とも言える「スマホ依存症」について知っておきましょう。
スマートフォンは、いまや現代人の生活に欠かせない存在となりました。しかし一方で、常にスマホを触っていないと落ち着かない「スマホ依存症」が社会問題となっています。子供も大人もこのようなスマホ依存症となると、勉強や仕事、健康面の悪影響が懸念されるほか、家庭やプライベートの人間関係が悪化する可能性があります。
ざっくりと言えば「スマホの触りすぎ」のことなのですが、例えば小中学生の場合、1日に80分以上触っているようでも、周囲から見ると「長いな」と思えることでしょう。一般的には1日に3~4時間くらいスマホに触っているようなら、スマホ依存症の兆候が疑われると言えます。スマホ依存症の症状としては、具体的に以下のようなものが見られます。
こうした「スマホ依存症」は、仕事などで強制的にスマホから離れる時間が少ない若年層の方が陥りやすいとされていますが、大人で全く現れないというわけではありません。たとえば、ネット依存症の診療を行っているクリニックによると、訪れる患者さんのうち、8割は子供で、残りの2割は成人だそうです。
総務省が2014年に発表したデータによれば、スマホの世帯普及率は6割を超え、そのうちネット依存の傾向が高い人は11.8%となっています。これらの「ネット依存傾向」の人は、スマホを持たない人と比べて2倍以上依存傾向が強いそうです。これは5年前の結果であり、世帯普及率はさらに増えていますので、それに伴って依存症の患者さんの数も増えていると考えられます。
学校や職場で隠れてスマホを触ってしまい、勉強や仕事の効率が下がり、学力や生産性が低下したり、課金するゲームで生活費を含め、何百万円も使ってしまったりする人もいます。目や肩が痛くなったり、昼夜逆転したりなど体の不調が起こるほか、最悪の場合は引きこもりや、自分の子供を放置しすぎてネグレクトにつながってしまう可能性もあるのです。
スマホはゲームやSNSなど、非常に便利な機能が揃っています。簡単に楽しみが得られ、興味や関心を引く刺激も多く存在します。さらに、SNSやゲームには各社が興味を引くよう工夫を凝らした広告も並んでいるため、常に興味や関心が刺激され続けた状態となります。人間は刺激にはいずれ慣れてしまう性質がありますから、一定の刺激に飽きると、もっと強い刺激を求めてしまい、結局は長時間スマホを触り続けてしまうのです。
このように強い刺激を求めてスマホを触り続けていると、やがて自分の力ではやめられなくなってしまい、依存症に陥ってしまうのです。依存状態が長引くと、前述のように引きこもりやネグレクトなどの深刻な状態に陥ることも考えられますので、予防とともに「もしかして依存症かもしれない」と思った場合には、早急な治療が必要です。
スマホ依存症を放置していると、脳の「自分や相手の感情を汲み取るのに関わる部分」「注意力や記憶力など、認知機能に関わる部分」が萎縮するとされています。これが脳の発達途上状態にある思春期や青年期で起こると、大人よりもさらに影響が大きいため、学習能力の大幅な低下やコミュニケーション能力を身につける機会が大きく失われてしまうのです。
さらに、体への影響として肥満・視力低下・腰痛・頭痛のほか、熱中するあまりずっと同じ姿勢でい続けることにより、エコノミークラス症候群を引き起こし、命に関わる状態に陥ることも考えられます。スマートフォンは身近なもので完全に手放すわけにもいかない以上、その付き合い方にも注意するとともに、依存症に陥った場合は早急に治療しなくてはなりません。
家庭でできるスマホ依存症対策と、病院でスマホ依存症を治療する場合をご紹介します。
スマホ依存症の予防のためにも、「依存症かな?」と思ったときにも、まずはスマホを触る時間を徐々に減らしていきましょう。今まで1日に4時間触っていたものを急に1日に30分にしよう、としてもなかなか実行できないものですが、まずは「食事中はそばに置かない」「夜8時を過ぎたら使わない」「ベッドで寝転がりながら使わない」など、できることからルールを作って取り組んでみてください。
お子さんの場合は、保護者が一緒にルールを作って実行してあげたり、使用時間を調節できる機能やアプリを使ったりするとより効果的です。できれば、保護者からの一方的な命令として行うのではなく、なぜスマホ依存症がいけないのか、スマホ依存症にならないためにどうしたらいいのか、子供と一緒に話し合いながらルール作りを行えると良いでしょう。
スマートフォンは仕事にも連絡にも使いますので、使い方を誤らなければ便利なものには違いありません。スマホの良い部分を上手に使いながら、悪い部分に影響されないよう、きちんと見極めて使いこなしていくことが大切です。
病院に来院した場合、まずは依存症の専門医に診察を受け、本人自身が生活リズムを整える方法や、家族が本人に対してどう関わっていくかなどのアドバイス、指導を受けます。さらに、スマホ依存症に陥る原因や影響についての心理的な教育を行い、現状の把握と問題に至る背景を明らかにするための身体的・心理的な検査も行います。
生活指導だけで済むごく軽い依存症の場合は、上記の指導ののち、定期的に診察や検査を受けるだけで済むこともありますが、それだけで済まない場合は、デイケアや入院治療を行う場合があります。
デイケアの場合、バトミントンやフットサルなどの体を動かす運動や、調理・認知機能ゲームなどの集団での活動を行い、コミュニケーション能力や身体能力を養います。さらに、医師や看護師・栄養士・作業療法士・臨床心理士などによる心理教育が行われ、睡眠・運動・栄養などの基本的な健康問題、依存やストレス対処などについての知識を培います。
これらのデイケアは、インターネットやスマートフォンに頼らない現実の世界で自分の本来あるべき姿や新たな可能性を見つけるための手助け、とされます。そのため、場合によっては、コミュニケーション技術のトレーニングを行うこともあります。
昼夜逆転してしまい自分の力では元に戻せない、スマホにのめり込みすぎて部屋から出られない「引きこもり」になってしまった、という場合は、体調や生活リズムの乱れを整えるため、入院治療を行います。期間は一ヶ月程度で、主に以下のような内容の治療がなされます。
スマホ依存症は、ゲーム依存症などデジタル関連の依存症と同じように、子供の方が発症しやすい傾向にあるものの、大人も発症するリスクがないわけではありません。スマホゲームにハマりこんで生活費を使い込んでしまったり、健康面での悪影響が生じてしまったりする人もいます。
スマホ依存症かな?と思ったら、まずはスマホを触る時間を少なくしていきましょう。自分の力でできないときは、病院で治療する方法もあります。