記事監修医師
工藤内科 副院長 工藤孝文先生のスマホ診療できるダイエット外来
工藤 孝文 先生
「歳をとると足は遅くなる」「高齢だから疲れやすいのは当たり前」と思う人は多いかもしれません。でも、加齢に伴う身体機能や筋力の低下は、日々の運動で防ぐことができます。今回は、「運動が長続きしない」という人にもオススメの手軽なトレーニング方法をご紹介します。
「昔は毎日仕事で外出していたけれど、定年退職してから外出のきっかけがめっきり減った」という高齢者は非常に多いです。加えて病気やケガをすると、ほとんど体を動かさない生活に移行してしまいます。
歳をとると誰でも筋繊維が萎縮し、筋肉量が低下するものですが、体を動かさない高齢者は運動量が減った分、筋肉の萎縮が急速に進行しやすく、筋力もかなり低下します。筋肉量は免疫力にも関連しているので、筋力が低下すると疲れやすく、風邪や病気にかかりやすくなってしまいます。
したがって、体を健康に動かせるうちに、筋力低下を防ぐよう運動習慣を身につけることが重要です。特に足の筋肉量は、腕と比べて加齢による筋肉量低下率が約3倍も高いといわれています。ジョギングや足の筋トレなどを習慣づけ、足の筋肉を鍛えることが寝たきり予防のポイントです。
加齢や運動量の低下などによって急激に筋肉量が減り、筋力が低下した状態を「サルコペニア(老人性筋萎縮症)」と呼びます。下記のような症状がサルコペニアのサインといわれています。
サルコペニアは、要介護や寝たきりの入り口といわれる段階です。この段階を放置すると体のバランスが悪くなり、転倒や骨折をしやすくなるだけでなく、骨粗鬆症や糖尿病、肺炎などの感染症の発症リスクが上がることが明らかになっています。
自分がサルコペニアかどうかを簡単にチェックする方法として、ふくらはぎの太さを測るテストがあります。両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分を軽く囲んでみてください。指で囲めない場合はサルコペニアの可能性はほぼないですが、隙間が広ければ広いほどサルコペニアの危険度が高いです。
「運動した方がいいのはわかっているけれど、筋トレは苦手だし続かない」という人にオススメなのが、「インターバル速歩®︎」です。
ウォーキングは健康増進に効果的といわれていますが、近年の研究で、ウォーキングだけでは負荷が足りず、筋力や持久力の向上が見込めないことがわかってきました。そこで注目を集めているのが、筋肉に負荷をかける早歩きと、負荷の少ないゆっくり歩きを交互に繰り返す「インターバル速歩®︎」です。
「インターバル速歩®︎」では筋肉に適度な負荷を掛けることが大切なので、「ちょっとキツイ」と感じる程度のスピードで行いましょう。やり方は次の通りです(週に4回以上/背筋を伸ばし、大股歩きで行う)。
1日15分で終わる手軽な運動で、歩き方に緩急をつけるだけなので疲れにくいのもうれしいポイントです。大股で歩くため、足から腹筋までの幅広い筋力向上が見込めます。
足を鍛える運動は、自宅でも行うことができます。ここでは2つ、手軽に実践可能な足の筋トレをご紹介します。
太ももの筋肉を鍛える効果があります。姿勢が安定しない人は、椅子の背を支えにして行いましょう。
ふくらはぎの筋肉を鍛える運動です。ちなみに、かかとをストンと落とす運動に切り替えると、衝撃が骨細胞を刺激し、全身の機能維持に関わるホルモン「オステオカルシン」が分泌され、血糖値が改善しやすくなるともいわれています。
筋肉を作り維持するには、タンパク質の摂取が欠かせません。運動や筋トレ後30分以内に、肉や魚、卵、牛乳、ヨーグルトなどでタンパク質を補給してください。筋トレ後の30分間はタンパク質の吸収率が上がる時間帯とされています。
加齢に伴い筋力は低下するものですが、運動習慣がないと急激に筋肉量も免疫力も低下し、思わぬケガや病気で寝たきりになってしまうリスクが高まります。記事で紹介したトレーニングは、「運動を続けるのが苦手」という人でも手軽に楽しんでできるものなので、ぜひ習慣づけてください(運動をする前に、必ずかかりつけ医の許可をとるようにしましょう)。