記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2025/1/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
白色ワセリンは肌に必要な水分や栄養分を逃さないようにするための「フタ」として作用します。この記事では、白色ワセリンがスキンケアでどのようなことに役立ち、ワセリンの種類別にどのような違いがあるかについて解説していきます。
白色ワセリンとは、石油(原油)から抽出した「炭化水素類」の混合物を脱色して精製した油脂性の軟膏基剤で、一般的に「ワセリン」と言えばこの白色ワセリンのことを指します。軟膏基剤とは、軟膏のうち薬効成分以外の大部分を占め、他の薬剤を混和するためのもので、疎水性の油脂性基剤、親水性の乳剤性・水溶性・懸濁性基剤があります。白色ワセリンは疎水性の油脂性基剤のひとつで、炭化水素類であることから、化学反応を起こしにくい安定した基剤として広く使われています。また、アレルギー反応を起こしにくい点でも軟膏として使用しやすいです。
スキンケア用に使うときは、皮膚保護剤・保湿剤として広く使われます。石油が原料、という言葉だけ聞くとなんとなく肌に良くないと思うかもしれませんが、ワセリンを作るときに肌に対して刺激の強いミネラル分はほとんど除去されています。また、その保護剤・保湿剤としての性質から「潤い療法(傷を乾かさないよう保つ治療法)」として、擦り傷や切り傷の応急処置に使われることもあります。
一方、使用感としてベタつく、顔に塗るとテカリが目立つなどの欠点があり、ニキビの上に塗ってしまうと毛穴をふさいでしまい、ニキビを悪化させることもありますので、ニキビのある人が使うときには注意が必要です。
広く使われているワセリンには大きく分けて純度別に4種類あり、純度の低い順に「黄色ワセリン」「白色ワセリン」「プロペト®︎」「サンホワイト®︎」となっています。純度が最も低い「黄色ワセリン」は手に入りやすく安価な一面、敏感肌やアトピー性皮膚炎、赤ちゃんなど肌の弱い人には刺激が強く、かぶれてしまうこともあります。
黄色ワセリンからさらに純度を高め、敏感肌やアトピー性皮膚炎、赤ちゃんなど肌の弱い人にも刺激が出にくくしたものが白色ワセリンです。こちらも安価で手に入りやすく、第3類医薬品として手頃な価格で市販されています。ちょっと試してみたい、という人でも簡単に購入できるでしょう。
白色ワセリンの純度をさらに高めたものがプロペト®︎で、主に目の近くなどデリケートな部位に使われます。白色ワセリンと同じように、第3類医薬品として市販されています。価格は白色ワセリンよりややお高めですが、白色ワセリンと比べて純度が高いため、スーッと伸びて塗りやすいというメリットがあります。
また、この2種類については保険適用もされるため、医療機関で処方されることもあります。ただし、医療機関で処方される場合もとくに薬効成分などが加えられておらず、市販の白色ワセリン・プロペト®︎と成分は同じですから、処方されたワセリンが切れて追加のワセリンがほしい、というときは市販の白色ワセリンやプロペト®︎を買って構いません。
プロペト®︎の純度をさらに高めたものがサンホワイト®︎で、プロペト®︎でも刺激が強くかゆみやかぶれが出てしまうという人や、肌の弱い赤ちゃんに使われることが多いです。アレルギーパッチテストの基剤としても使われるほど刺激が少なくなっていますが、サンホワイト®︎は保険適用外となりますので、白色ワセリンやプロペト®︎と比べると高価な点だけ注意しましょう。
医療機関ではアトピー性皮膚炎など、湿疹や乾燥肌のスキンケア用として処方されることが多いです。ただし、肌の表面にとどまり皮膚から水分が蒸発するのを防ぐことしかできず、化粧水や美容液のように皮膚の内部に浸透して栄養や潤いを与える作用はありません。白色ワセリンだけを塗ってしまうと、水分や栄養分を与えないままお肌をビニール袋に閉じ込めてしまうことになります。白色ワセリンでお肌の保湿をしたいときは、まず化粧水や美容液で皮膚の内部まで水分を十分に補給してあげ、その上から白色ワセリンを塗るようにしましょう。
白色ワセリンに副作用はほとんどないといわれていますが、肌の弱い人やもともと敏感肌の人、アトピー性皮膚炎を持っている人などの場合は、まれに発赤やかゆみなど、かぶれの症状が出てくる可能性があります。もし、こうした症状が出てきた場合は医師に相談しましょう。また、使うときには以下の点に注意してください。
切り傷や擦り傷に対する潤い療法として使う場合、基本は医師の指示に従って使えば良いのですが、セルフケアを行う場合は上記のように使うようにしてください。また、乾燥肌の人がワセリンを使う場合、お風呂などで塗った部位を洗うときには、油分が気になるときは泡でやさしく洗い流すなどして、擦りすぎないよう注意しましょう。ゴシゴシ強く擦ってしまうと、ワセリンの油分だけでなくもともと皮膚が分泌している皮脂や、水分を保持するための角質層までも剥がしてしまう可能性があります。
白色ワセリンは、軟膏基剤としても使われる疎水性の油脂性基剤です。水をはじく性質から、スキンケアでは皮膚の保護剤・保湿剤としても使われ、化粧水や美容液でたっぷり水分や栄養分を補給した後に「フタ」をするようなイメージで使います。白色ワセリンは、市販と処方に成分の違いはありません。また、副作用もほとんどありませんので、安心して使えます。ただし、まれにかぶれの症状が出ることがあるので、そのような場合は早めに医師に相談してください。