記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/5/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
地震活動の活発化や、温暖化による気候変動・異常気象により、日本における災害被害は近年増加傾向にあります。今回は災害後、避難所で過ごさなければならなくなったときに備え、避難所生活で健康を保つために意識すべきポイントを解説します。
健康を維持しつつ避難所生活を送るために、まず大切なのが手と口内の清潔を保つことです。以下に、ライフライン(電気・ガス・水道)が止まった環境で手の清潔を保つ方法をご紹介します。
除菌ウェットティッシュ、手に擦りこんで使える手指用の消毒液・ジェルをこまめに使って手の清潔を保ちます。
不特定多数の人が過ごす避難所では、共有物にさまざまな細菌・ウイルスが付着している可能性が高いです。そこで、特に以下にご紹介するタイミングでは、特にこまめに手指の消毒・ケアを実施しましょう。
また食事は絶対に素手ではなく、箸・フォーク・スプーンなどの道具や食器を使ってください。また、食べ残しは捨てて食中毒予防を徹底しましょう。
避難所生活では水不足による乾燥から、感染症への免疫力が弱くなるため、口内の清潔を保つことも非常に重要です。以下を参考に、口内の清潔を保つ工夫をしましょう。
よく噛み、食後に水やお茶で口内を洗い流すようにして飲むと、口内に食べかすが残るのを防げます。舌で歯を舐めるようにして歯磨きするのも効果的です。
頬を反時計回りにさすってマッサージしたり、舌を上下・左右・右回り・左回りに動かしてストレッチし、口内環境の悪化と乾燥を防ぐ唾液の分泌を促しましょう。
少量の水でも、歯ブラシを使った歯磨きは可能です。水を歯ブラシに着け、歯ブラシについた汚れをティッシュなどで拭き取りながら、全体を磨いていきましょう。歯磨きが終わったら、きれいなペットボトルの水で口をすすいでください。
歯磨きが難しいときは、少量の水で起床時・食後・就寝前にうがいするだけでも口の中をきれいにできます。ペットボトルのフタで1~2杯の水やお茶を、数回かけて歯と歯の間や舌、口全体に行き渡らせてください。
入れ歯を使用する高齢者の場合は、口内と合わせ入れ歯のケアも必要です。食後は入れ歯を外してウェットティッシュで汚れを落とし、購入時にもらった専用のケースに入れて保管してください。また、入れ歯を外した後の口内は、口腔用のウェットティッシュやガーゼ、ハンカチで拭って清潔を保ちましょう。
避難所生活では精神的に不安定になりやすく、物資が不足したり、食欲不振による栄養不良や脱水症状に陥りがちです。しかし、食事や水を十分に摂ることは、体力と免疫力の維持、そして脱水が原因で起こる心筋梗塞、脳梗塞、低体温、便秘、エコノミークラス症候群の予防に欠かせません。
飲み物が手に入るなら、我慢せずたくさん飲みましょう。また、食事は手づかみではなく、お箸やラップなどにくるんで、できるだけ直接手で触れないようにすると、食中毒や感染症の予防に効果的です。
食欲がないときは、以下の対策を試してみてください。
妊娠中や授乳中の女性、赤ちゃんは、チャンスを逃さず水分と食事を摂ることが大切です。物資が十分でないときは食べられそうなものを、食べものの種類が増えてきたら、ビタミンが多く含まれる野菜ジュースや果物ジュースを積極的に摂取してください。
また、精神的なショックや栄養不足から母乳が出なくなることがありますが、赤ちゃんはお乳を吸うだけで安心するといわれています。
赤ちゃんに吸ってもらった方が母乳も出やすくなりますから、周囲にも協力してもらいながら、抱っこや授乳の時間はしっかり確保してあげましょう。ただし、対処しても以下のような不調が現れるようなら、我慢せずすぐに医師や保健師、助産師に相談してください。
高血圧、糖尿病、腎不全、喘息、てんかん、統合失調症などの持病のある人は、避難所にいる間にも治療を継続する必要があります。
以下いずれかの方法で、持病の治療を継続してください。
血圧や血糖値が高めだけど、すぐに治療を開始・継続するのが難しいという場合は、以下の方法で状態が悪化しないよう対策しましょう。
災害後の避難所生活では、過度な緊張状態のなか、限られた水・食料のみで生活を強いられることもあります。このため、どうしても心身の調子を崩しやすくなりますが、まずは手と口内の衛生管理を徹底しましょう。妊娠中・授乳中の妊婦さんや子供、持病により健康上のリスクが大きい人も、周囲の人にもできる範囲で協力してもらいつつ、健康に過ごせるよう心がけましょう。