記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/4/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
災害によって受けた精神的ストレスは、その後の人生でも被災者を苦しめ続けます。今回は、災害を経験した被災者の心に起こることと時間が経過することによる変化、また災害後に行われるべきケアについて、まとめて解説します。
大きな災害を経験した被災者の心には、以下2種類のストレス反応が起こります。
災害直後、上記のようなストレス反応が多くの被災者にみられ、人によっては辛い状態が何年にもわたり続くこともあります。
災害後、被災者が心に受けたストレスは時間の経過とともにかたちを変えて現れます。一般的には被災直後を「急性期」、被災から数週間後までを「反応期」、被災から数カ月以内を「修復期」と段階を分けています。
先述した急性期・反応期・修復期の段階に応じて、災害を経験した被災者への心のケアは段階的に行われます。
第一段階として、被災者に以下の2点を伝えます。
また、生活が急激に変化したことへのストレスを軽減できるような対策もとられます。持病や精神障がい、発達障がいのある人は特に変化への対応が難しいため、服薬など必要な治療を継続するための対応策を協議します。
復興のため、強い使命感や高揚感で動き続けてきた被災者が、過労やストレスから心身の調子を崩しやすくなる時期です。この時期には、抑うつ気分やフラッシュバックからくるうつ病やパニック障害、依存症対策が重要になってきます。
また、一般被災者だけでなく、災害直後から復旧対策、避難所運営など住民の支援にあたってきた自治体職員のケアも配慮するべき時期でもあります。
生活再建に向けた、現実的な問題が見えてくる時期です。経済的な問題など、諸事情から生活再建のめどが立たない人は、心身の調子が悪くなってくるのもこの時期です。
また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のある人に、はっきりと症状が現れてきます。個々人の心身の不調とその背景を調査し、過去への心のケアだけでなく、未来へのニーズも汲み取ってケアを提供することが求められます。
被災者本人が自分でできるケア方法として、以下が挙げられます。専門家によるケアとあわせて、できそうなところから生活に取り入れてみてください。
十分な睡眠と栄養をとることは、心身の健康の基本です。できるだけ規則正しい生活を心がけ、1日の中に少しでもほっとできる時間を持ちましょう。安心できる場所がみつかるまでは、1日に数回深呼吸して心を落ち着けるのも効果的です。
辛い気持ちは、溜め込んでおくとストレスとしてどんどん増幅します。ひとりで抱え込まず、泣いたり怒ったり、笑ったりして感情を表に出し、溜め込まないようにしてください。このとき、信頼できる家族・友人にそばにいてもらうと「ひとりじゃない」と実感でき、楽になります。
「疲れたな」と感じたら、体だけでなく心も疲れているかもしれません。常に自分の心身の声に耳を傾け、ストレスが溜まっていると感じたらこまめに発散したり、軽減したりしましょう。
当事者として災害を経験したストレスは、その人の人生を変えるほど大きなものです。災害によるストレスはその後数週間、数カ月にわたってかたちを変え、被災者の心を揺るがし続けます。このため、被災者にはストレスの背景や段階に合った心のケアが必要です。本記事を参考に、専門家の力も借りながらセルフケアでも心を労わってあげてください。