加湿器が肺炎を引き起こすことがあるのはどうして?

2020/4/18

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

乾燥しがちな冬場に加え、近年のエアコンによる空調調整によって、室内は一年を通じて乾燥しやすい状態になっています。そんな乾燥状態を和らげるのに役立つ加湿器ですが、間違った使い方をしていると過敏性肺炎を引き起こしてしまうこともあります。

過敏性肺炎とはどんな病気なのか、また、なぜ加湿器が過敏性肺炎の原因になるのか、その兆候や予防法まで含めて詳しく見ていきましょう。

過敏性肺炎ってどんな病気?

過敏性肺炎とは、肺の中にある肺胞(小さな空気の袋)や、気管から枝分かれした空気の通り道が最も細くなっている部分(細気管支)の内部や周囲に発生する炎症のことです。原因となるのは細菌やウイルスなどの病原体ではなく、有機物である粉塵や化学物質・細菌などの抗原(アレルギーの原因物質)を繰り返し吸い込んだことによるアレルギー反応です。

主な症状は息切れ・せき・発熱などです。抗原を避けていれば反応も起こらないため改善しますが、長期間抗原にさらされ続けていると炎症は次第に慢性化し、炎症の起こった部位から肺がどんどん固くなってしまいます。

過敏性肺炎を引き起こす抗原として、以下のような物質・微生物が挙げられます。

  • カビ(中でも、トリコスポロンというカビが原因になりやすい)
  • 細菌の一種
  • 鳥類の排泄物に含まれるある種のタンパク質
  • キノコの胞子
  • イソシアネート(ポリウレタンの原料となる化学物質)

これらの抗原に反応する抗体(リンパ球)が肺の中に増えてアレルギー反応を引き起こし、炎症が起きて酸素を取り込みにくくなったり、せきや息切れを誘発したりしていると考えられます。

加湿器が過敏性肺炎の原因になるって本当?

喉や口、肌などの乾燥を防ぐために、また、空気が乾燥しているとかかりやすくなる風邪やインフルエンザの予防のためにも、加湿器を使って部屋の湿度を高めることは大切です。しかし、その加湿器にカビや細菌が発生している状態で使ってしまうと、加湿器によって空気中にカビや細菌をばら撒いてしまい、過敏性肺炎を引き起こしてしまう恐れがあります。

過敏性肺炎は一般的な感染性肺炎(細菌性肺炎)とは異なり、アレルギーの原因となる抗原(この場合はカビや微生物など)を失くさない限り治りません。ですから、そもそも加湿器の中にカビや細菌が繁殖しないよう、また、万が一繁殖してしまったことがわかればすぐに清掃するよう、気をつけなくてはならないのです。

加湿器のタイプによってカビや細菌の繁殖しやすさが変わるって本当?

一般的な家庭用の加湿器は蒸気やミストを放出するものですが、そのメカニズムの違いによって「加熱式(スチーム式)」「気化式」「超音波式」「ハイブリッド式」の4つのタイプに分かれます。それぞれのタイプごとに、カビや細菌の繁殖しやすさと特徴について見ていきましょう。

加熱式(スチーム式)
  • タンクに入れた水を加熱して蒸気を発生させるため、カビや細菌が繁殖しにくい
  • 販売価格は比較的手頃なものが多いが、熱を発生させるため電気代がかかる
気化式
  • 不織布やスポンジに水を含ませ、空気を送って蒸散させることで加湿する
  • 電気代は安いがパワーが弱く、こまめに清掃しないとカビや細菌の温床に
超音波式
  • 超音波によって水の粒子を小さくし、噴出させて加湿するタイプ
  • 水を加熱しないため、こまめに掃除しないとカビや細菌の温床に
ハイブリッド式(加熱式と気化式を合体したようなシステム)
  • 水に温風を送って加湿するため、カビや細菌が繁殖しにくい
  • 加湿速度が早く消費電力も比較的少ないが、機器そのものの価格がやや高め

気化式や超音波式の加湿器を使っている人は、カビや細菌を撒き散らさないようにこまめな清掃が必要だとわかります。電気代も安く、加熱しないことから小さい子どもがいる家でも使いやすいですが、内部でカビや細菌を繁殖させないよう、定期的に清掃を行いましょう。

また、加熱式やハイブリッド式はカビや細菌が繁殖しにくいですが、水を入れっぱなしにしたまま電源を切って放置してしまうとカビや細菌の温床になってしまうことがあります。長期間使わない場合は、必ず水を抜いて清掃し、乾燥させましょう

過敏性肺炎の症状の兆候は?

過敏性肺炎の症状の兆候は、「せきや痰・発熱などの症状が起こる」「家にいる時間が長くなると症状がひどくなる」といったものです。初期症状はカビなどの抗原を吸い込んでから4〜6時間程度で発症しますが、軽い風邪などと区別がしにくいため、放っておけば治るだろうと思いこんでしまう人も少なくありません。

ただ、過敏性肺炎の場合はアレルギー反応ですから、抗原を取り除いたり避けたりしない限り症状は改善しません。放置しているとどんどん症状が重くなり、次第に息切れなどの呼吸困難を伴う肺炎の症状が現れてきます。症状は8〜12時間続き、それでもカビや細菌などの抗原から離れないままだと繰り返し発症してしまいますが、抗原から離れれば数日〜10日間程度でおさまります。

逆に、カビや細菌などの抗原を清掃で取り除いたり、避けたりしないまま何年も肺の炎症を繰り返していると、肺が線維化し固く分厚くなる「肺線維症」という慢性的な病気に進行してしまう場合もあります。上記のような症状に気づいたら、できるだけ早く原因をつきとめ、清掃で抗原を取り除いたり、室内でなければ近づかないよう気をつけたりしましょう。

加湿器をこまめに清掃して、肺炎を予防しよう!

加湿器にカビや細菌が繁殖してしまうのを防ぐためには、以下のようなポイントに注意しましょう。

水を長期間溜めっぱなしにしない
  • タンクの水は原則として毎日新しい水道水に交換し、継ぎ足さない
  • 古い水を溜めたままにしていると、カビや雑菌が繁殖しやすくなるのでその都度捨てる
こまめに清掃し、消耗品の期限は守る
  • 各加湿器の取扱説明書に従い、メーカーの推奨するお手入れでこまめに清掃する
  • 殺菌機能のあるフィルターなど、消耗品は使用期限が切れると性能が落ちるため、交換時期を守る
使用しないときは、タンクの水を抜いてよく乾燥させる
  • 単に水を抜いただけでは、タンク内は濡れたままでカビや雑菌が繁殖しやすくなる
  • 特に、気温が一気に上がる春先から夏にかけては繁殖しやすい状態に
  • 長期間使わないときは、タンクの水を抜いてしっかりと乾燥させてからしまう

乾燥や、乾燥を好む風邪やインフルエンザの病原体から身体を守るための加湿器で、さらなる炎症を引き起こすことのないよう、加湿器は正しく清潔に使いましょう。

おわりに:加湿器で肺炎を引き起こさないよう、カビや細菌の繁殖を防ごう

加湿器によって肺炎が引き起こされるのは、加湿器の内部にカビや細菌が繁殖して空気中にばら撒かれてしまうことによります。加熱タイプの加湿器ではカビや細菌が繁殖しにくいのですが、気化式や超音波式では加熱しないためよりこまめな清掃が必要です。また、タンクの水は毎日新しい水道水に交換し、長期間使わないときは水を抜いてよく乾燥させてからしまいましょう。

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