記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士 呼吸器内科専門医
山本 康博 先生
2020/6/14
乳幼児期、子供はさまざまな細菌やウイルスにかかって、免疫を獲得していきます。今回は2歳までにほとんどの人が感染・発症するRSウイルス感染症について、ウイルスの特徴や代表的な症状、治療法・予防法を解説します。
RSウイルスは、乳幼児を中心に気管や肺など、呼吸器の深いところに障害を引き起こすウイルスです。正式名称は「Respiratory syncytial virus」で、以下2つの経路で感染を広げていきます。
RSウイルス最大の特徴は、非常に感染力が強く、何度も感染・発症を繰り返すことです。このため1歳を迎える前に半数が、さらに2歳を迎えるまでにほぼすべての乳幼児が感染・発症を経験し、その後家族や施設内で感染・発症を繰り返すケースも多いです。
また、従来は9月から翌年の春にかけて流行シーズンを迎えるウイルスでしたが、近年では時期が早まり、夏からRSウイルスの流行がみられるようになってきました。
RSウイルスに感染すると、平均で4~6日の潜伏期間を経て、以下のような症状がみられるようになります。
ただし、以下のような条件が揃うと風邪症状が落ち着いた頃に咳がひどくなり、細気管支炎や肺炎、呼吸困難になるほど重症化するケースもあります。
持病がなく、健康な人であれば、上記のような重症になることはまずありません。一般的な風邪の症状が数日続くだけで、回復が見込めるます。しかし体力・免疫力が低下した乳幼児や高齢者、呼吸器系の持病がある人の場合、RSウイルス感染症が危険な疾患になるのです。
RSウイルスそのものに効く薬は発見されていないため、RSウイルス感染症の治療は、各症状を和らげながら回復を待つ対症療法がメインです。具体的には、主に飲み薬や吸入薬を使い、解熱や去痰、咳止め、呼吸をラクにするための気管支拡張などをしていきます。
十分な栄養と水分が取れず衰弱していたり、気管支炎や肺炎まで重症化している場合は、飲み薬に加えて点滴や胃チューブ、人工呼吸器の使用も検討されます。
RSウイルスへの感染を予防するには、流行時期を中心に以下の対策を取るのが効果的です。
特に0~1歳児の乳児が頻繁に接する人・場所では、時期にかかわらず上記の対策を徹底して行いましょう。
なお、RSウイルス感染症を予防するためのワクチンはありませんが、ただ以下に挙げる一部の乳幼児を対象に、RSウイルス感染症の重症化を避ける目的でモノクローナル抗体製剤を投与する場合もあります。
上記に当てはまる乳幼児は、RSウイルス感染症の流行初期から流行中にかけて、月に1度のペースで継続的に筋肉注射を受けると重症化予防効果が得られると言われています。
発熱や鼻水、咳などの症状を引き起こすRSウイルス感染症は、非常に感染力の強いRSウイルスへの感染が原因で起こる病気です。ほぼすべての人が2歳までに初回の感染を経験し、その後は生涯にわたり感染・発症を繰り返すと言われています。基本的には軽い風邪程度の症状だけで回復しますが、乳幼児や持病のある人の場合、まれに肺炎や呼吸困難にまで重症化するケースもあります。子供を守るためにも、普段から予防対策を徹底しましょう。