RSウイルス感染症の特徴と治療法や予防対策について

2024/6/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

乳幼児期などの小さな子どもは、さまざまな細菌やウイルスにかかって、免疫を獲得していきます。今回は2歳までにほとんどの人が感染・発症するRSウイルス感染症について、ウイルスの特徴や代表的な症状、治療法・予防法を解説します。

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RSウイルスの特徴

RSウイルスは、乳幼児を中心に気管や肺など、呼吸器の深いところに障害を引き起こすウイルスです。正式名称は「Respiratory syncytial virus」で、以下2つの経路で感染を広げていきます。

RSウイルスの感染経路
  • 飛沫感染(すでに感染した人による咳、くしゃみから出た体液を吸い込んで感染する)
  • 接触感染(ウイルスが付着した手で鼻や口、目など粘膜に触れることで感染する)

RSウイルスは、非常に感染力が強く、何度も感染・発症を繰り返す特徴があり、1歳を迎える前に半数が、さらに2歳を迎えるまでにほぼすべての乳幼児が感染・発症を経験し、その後家族や施設内で感染・発症を繰り返すこともあります。一般的には9月から翌年の春にかけて流行シーズンを迎えるといわれていましたが、近年では時期が早まり、夏からの流行もみられるようになってきました。

RSウイルスに感染したときの症状

RSウイルスに感染すると、およそ4~6日程度の潜伏期間を経て、以下のような症状がみられるようになります。

RSウイルス感染症の代表的な症状
発熱、鼻水、咳、のどの痛みなどの風邪症状

ただし、以下の条件がそろうと風邪症状が落ち着いた頃に咳がひどくなり、細気管支炎や肺炎、呼吸困難になるほど重症化する可能性もあります。

RSウイルス感染症が重症化しやすくなる条件
  • 生後1カ月未満、または低体重で出生した乳児が罹患した場合
  • 心臓、肺、神経、筋肉に基礎疾患がある人が罹患した場合
  • 体力と免疫力が低下した高齢者が罹患した場合
  • 一度に大量のRSウイルスが体に入って発症した場合

持病がなく、健康な人であれば、上記のような重症になることはほとんどなく、通常は一般的な風邪の症状が数日続き、その後回復していきます。しかし、乳幼児・高齢者・呼吸器系の持病がある人・その他体力や免疫力が低下した人などは、重症化する恐れがあるため注意が必要です。

RSウイルス感染症の治療法

RSウイルス感染症の治療は、各症状を和らげながら回復を待つ対症療法を中心に進められます。治療では、おもに飲み薬や吸入薬を使い、解熱や去痰、咳止め、呼吸を楽にするための気管支拡張などをしていきます。栄養と水分を十分に摂れず衰弱している場合や気管支炎や肺炎まで重症化している場合は、飲み薬に加えて点滴や胃チューブ、人工呼吸器の使用も検討されます。

RSウイルス感染の予防対策

流行時期を中心に以下の対策を取ることで、RSウイルスの感染をある程度予防できる可能性があります。0~1歳児の乳児が頻繁に接する人・場所では、時期にかかわらず対策を心がけることをおすすめします。

  • 咳などの症状がある人との接触を避ける
  • マスクを着用する
  • 食事の前、トイレの後、帰宅後など、こまめに手洗いを行い、手洗いができない場合は手指消毒液で消毒をする
  • 子どもが日常的に触れるおもちゃ、手すり、ドアノブなどを消毒用アルコールなどでこまめに消毒する

なお、RSウイルス感染症を予防するためのワクチンはありませんが、以下に挙げる一部の乳幼児を対象に、RSウイルス感染症の重症化を避ける目的でモノクローナル抗体製剤を投与する場合があります。

  • 在胎期間28週以下の早産で生まれ、1歳以下の新生児及び乳児
  • 在胎期間29~35週の早産で生まれ、生後6か月以内の新生児及び乳児
  • 過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた2歳以下の新生児、乳児及び幼児
  • 2歳以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児及び幼児
  • 2歳以下の免疫不全を伴う新生児、乳児及び幼児
  • 2歳以下のダウン症候群の新生児、乳児及び幼児

おわりに:RSウイルス感染症は、2歳までにほとんどの人がかかる

発熱や鼻水、咳などの症状を引き起こすRSウイルス感染症は、非常に感染力の強いRSウイルスへの感染が原因で起こる病気です。ほぼすべての人が2歳までに初回の感染を経験し、その後は生涯にわたり感染・発症を繰り返すと言われています。基本的には軽い風邪程度の症状だけで回復しますが、乳幼児や持病のある人の場合、まれに肺炎や呼吸困難にまで重症化するケースもあります。子どもを守るためにも、普段から予防対策を徹底するようにしましょう。

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