記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/6/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
勤務先が屋外か屋内かを問わず、仕事中も熱中症になるリスクは常に潜んでいます。今回は、仕事中の熱中症リスクと適切な対処法について解説します。熱中症になりやすい職種や条件、初期症状などと一緒に理解していきましょう。
厚生労働省が発表した「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、仕事中、熱中症によって亡くなった方は2012~2021年で計213名にのぼります。2021年は死亡者数が20名、死亡に至らないまでも熱中症により4日以上の休業を余儀なくされた業務上疾病者数は561名で、疾病者数・死亡者数ともに過去3年間を下回る数値でした。
ただ、このうち死亡災害については、「休ませて様子を見ていたところ容態が急変した」など、管理が適切になされておらず、被災者の救急搬送が遅れた事例も含まれています。
気温や湿度などの条件がそろえば熱中症のリスクは上がるので、屋外・屋内問わずどんな職業にもリスクはあるといえますが、高温多湿で汗が蒸発しにくい環境に長くいる職場や、節電や空調設備の故障や制限のため適切な体温調節ができなくなる環境下の職場では、とくに熱中症を起こしやすいです。
厚生労働省では、仕事中に熱中症を発症しやすい職業として以下を挙げています。
いずれも屋外、あるいは空調設備のない屋内での作業が多い職種です。これらの職業に就く方や運営する企業は、仕事中の熱中症リスクに一層の注意を払いましょう。
熱中症になりやすい環境の条件としては、以下が挙げられます。
上記の条件がそろった環境にいるときは、こまめな水分補給が大切です。スポーツドリンクや塩タブレット、経口補水液など、電解質の補給の備えもしておきましょう。また、マスクをしなければいけない状況であっても、定期的に人がいない涼しい場所に移動するなどして、マスクを外して水分補給する習慣をつけてください。
建設業や製造業など、屋外作業や肉体労働を伴う職業は、熱中症になりやすい傾向にありますが、屋内の仕事やデスクワークの方も熱中症には注意が必要です。むしろ、汗をかきにくい、汗をかいたことや喉の渇きを自覚しにくいデスクワークは、水分補給がおろそかになりやすいといわれています。
以下の環境では、室内であっても熱中症リスクが高くなります。室温管理や水分補給対策の徹底を心がけましょう。
熱中症の症状は、一般的に以下の段階で現れます。
⑦以降はとくに重篤な熱中症の症状であり、放っておくと命を落とすおそれがあるので、すぐに救急車を呼びましょう。
熱中症の重症化を防ぐには、軽度・中度の段階(上記で紹介した①~⑥までの症状)で適切な対処をすることが求められます。熱中症が疑われる症状が見られるときは、できるだけ早く以下の対応をとってください。
日陰やエアコンの効いた涼しい場所に移動し、楽な姿勢をとって安静にしましょう。なお、自力で移動できないようなら、中等度以上の熱中症の可能性があります。本人が「大丈夫」「大げさにしなくて良い」と言っていたとしても、早めに119番に電話して医療従事者にアドバイスを求め、必要に応じて救急車を要請しましょう。
涼しい場所で楽な姿勢になったら、首元やウエストの衣服を緩めて体と服の間に入った熱を逃がしましょう。首の両側・脇の下・足の付け根など、太い動脈が通っている場所に氷嚢などを置いて体を冷やしてください。濡らしたタオルなどを使ってもかまいません。氷やタオルがすぐ用意できないときは、体を濡らしてうちわや厚紙であおいで風を起こし、気化熱で体を冷やしてあげましょう。
本人に意識があり、自力で水分補給ができるようなら、水分と塩分・糖分・ミネラルも含まれるスポーツドリンクを飲ませてください。ただし、意識がなかったり自力で水分補給ができないときは、無理に口から水分を補給させようとすると窒息の原因となります。自力で水分が摂れないのは重篤な状態ですので、救急車を呼び医療従事者の指示に従い対応しましょう。
直射日光の下での屋外作業を伴う職業、また高温多湿となる室内で作業する職業の方は、仕事中に熱中症になりやすいといわれています。具体的には建設業、製造業、清掃業、警備業、運送業、屠畜業などが該当しますが、デスクワークに従事する方も例外ではありません。どんな職業でも熱中症を起こすリスクは存在しているので、熱中症の兆候を感じたら重篤化しないよう早めに休息をとり、体を冷やすなど適切な対応をとりましょう。