ウォーキングは日常生活の延長として始められる、手軽な運動です。
今回はウォーキングに期待できる健康効果や、正しく歩くためのポイント、より安全に運動効率を上げるためのポイントについて解説していきます。
ウォーキングにはどんな健康効果がある?
ウォーキングとは、多くの人が毎日行う「歩く」という動作を負荷を変え、運動に昇華させたものです。
ウォーキングは、ランニングやサイクリング、水泳と同じ有酸素運動に分類されます。有酸素運動は、体にたくさんの酸素を取り込みながら行う運動であり、以下のような健康効果をもたらすと考えられています。
- ウォーキングに期待できる健康効果
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- 血糖値・中性脂肪値・コレステロール値の改善
- 心肺機能を含めた循環器の機能を高める
- 循環器の機能向上により全身の血液のめぐりの改善を促す
- 心疾患のリスクの低減
- 高血圧の予防や改善
- 骨粗鬆症の予防や改善
- 筋力強化
- 脂肪燃焼を助け、痩せやすい体を作る
上記以外にも、心理的緊張やうつ状態の緩和、睡眠障害の改善、子供の生活習慣形成、老化による病気やQOL(Quality of Life:生活の質)の低下を防ぐことにも役立つとされています。
ウォーキングを「ツライ」と感じるかは、個人の体力や健康状態、コースの距離や環境(コース、高低差、気温・湿度)、時間などが関係してくるので一概には言えませんが、ランニングやジョギングに比べれば、関節や心臓、肺への負荷も少なくて済むので、高齢者や肥満の人、運動に慣れていない体力に不安のある人でも取り組みやすい運動といえるでしょう。
正しい歩き方で歩くために気をつけることは?
高齢者をはじめ、運動をしない人、きつい運動が嫌いな人には、運動不足解消のためにぜひウォーキングを習慣化して欲しいところですが、ウォーキングも他の運動と同じように「正しいフォーム」で行うほうがより高い健康効果が得られやすく、体を痛めるリスクも減らせます。
以下にウォーキングの正しい姿勢のとり方やフォームづくりのポイントをまとめたので、参考にしてください。
- 正しいウォーキングフォームのポイント
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- 耳・肩・腰・膝・くるぶしを結んだラインがまっすぐになるように立つ
- あごを軽くひき、頭はまっすぐ前に向ける
- 10〜15mくらい先、「少し遠く」を見るようにする
- 猫背をなおそうと背中が反らないように注意。胸を開く・張ることを意識する
- 肘を少し曲げて、肩の力を抜くとスムーズに腕を振りやすくなる
- 「腕を後ろに引く」こと意識すると、肩甲骨が動きやすくなり、全身の筋肉も連動しやすい
- ウォーキングは「かかとから着地する」のが基本
- 正しいフォームであれば、かかと→足の外側→親指の付け根という流れで重心が移動する
- 膝が伸びている状態の方が良いが、伸ばそうと力を入れすぎると膝を痛める原因になるので注意
- 踏み出すときは、つま先で大地をキックするイメージで蹴りだす
- 下腹部に力を入れ、骨盤を立てるように意識する(反り腰にならないようにする)
- 腰の回転を意識して歩くと股関節周辺の筋肉を自然に使うようになるので、歩幅を広げやすく運動効果も上がりやすい
- 呼吸は苦しくない「自然なリズム」を心がける
坂道や階段を歩くときの注意点
ウォーキングのときに坂道や階段を多く歩くようにすれば、運動負荷を上げることができますし、より高い健康効果も期待できますが、負荷が高くなることで関節や筋肉などを痛めるリスクも高くなります。
関節への負荷が高くなる坂道や階段を歩くときこそ、正しいウォーキングフォームがより大切になってきます。
坂道・階段を歩くときは、以下のポイントに注意してください。
坂道を安全にウォーキングするためのポイント
- 上りの場合
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- 膝を高く上げ、歩幅を狭くする
- 目線を傾斜の角度に合わせて、少し上へ向ける
- 重心は「少し前」に置くイメージで
- 「蹴り出す足」を強めにするイメージで
- 慌てず、正しいフォームを意識する
- 下りの場合
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- 傾斜にそって目線が下がることになるが、頭が下がらないように注意する
- 少しだけ腰の後ろに重心を残すイメージで、歩幅を狭くして歩く
- 必ずかかとで着地する
- 膝のクッションを使って、体を支える
階段で安全にウォーキングするためのポイント
- 上りも下りも「足の裏全体」でしっかり着地する
- 下りでは着地面の安全の確認をとくに念入りに
- 基本的には一段飛ばしをしない(とくに下りは厳禁)
- 階段を歩かない人は普段使わない筋肉を酷使することになるので、慣れるまではゆっくり歩くことを意識する
ウォーキングでもウォーミングアップやクールダウンは必要?
平坦で障害物がない道を歩く限り、ウォーキングは非常に安全性が高い運動です。ただし、普段あまり運動をしない人がウォーミングアップをせずにウォーキングを始めると思わぬケガをしてしまう可能性があります。また、ウォーミングアップやクールダウンを行わないことには、以下のデメリットがあるといわれています。
- ウォーミングアップを怠ることのデメリット
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- 筋肉や関節が硬いままのため可動域が狭く、肉離れや捻挫などを起こしやすい
- スムーズに体を動かせないため、正しいフォームで歩くのが難しくなる
- 筋収縮がうまくいきにくくなるので運動効率が下がり、脂肪も燃焼しにくくなる
- クールダウンを怠ることのリスク
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- 運動で損傷した筋組織の修復が遅くなる
- 血液中に疲労物質が溜まり、疲れが残りやすくなる
- 筋肉が凝り固まり、柔軟性が低下しやすくなる
おすすめのストレッチ
ウォーミングアップやクールダウンでストレッチをすることは、ケガを防ぐだけでなく、パフォーマンスアップや疲労の回復の助けにもなります。
いろいろなストレッチのやり方がありますが、慣れてない人、どんな方法でしたらいいかわからない人は、以下のストレッチを試してみてください。
- アキレス腱〜ふくらはぎ
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- 片方の足を前に出す(大きく出す方が負荷が高くなる)
- 両足のかかとをつけたまま前方の膝を曲げ、重心を前方に移動する
- 後方のアキレス腱〜ふくらはぎにストレッチを感じたら、深呼吸をしながら10秒〜20秒キープ
- 2、3回行ったら反対側も
- 太ももの前側の筋肉
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- 姿勢を正してまっすぐ立つ
- 両膝が離れないように片方の膝を曲げ、膝を曲げた側の足の甲を持ってバランスをとる(手すりや壁に手を添えてもOK)
- 持った足のかかとがお尻につくように、足の甲をサポートする(反り腰にならないように注意)
- 太ももの前側にストレッチを感じたら、深呼吸をしながら10秒〜20秒キープ
- 2、3回行ったら反対側も
- 太ももの裏側
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- 片足を一歩前に出す
- 前の足は「つま先を上に向けて膝を伸ばした状態」にして、後ろの足は軽く膝を曲げる
- 上半身だけ前傾になるように腰を曲げ、前方の壁や手すりに手を置きサポートしながら、お尻を後ろに引いていく(反り腰や転倒に注意)
- 太ももの裏側にストレッチを感じたら、深呼吸をしながら10秒〜20秒キープ
- 2、3回行ったら反対側も
- 肩甲骨まわり1
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- 片方の腕を伸ばした状態のまま胸の方向(地面と水平に反対側へ)曲げる
- 反対の腕で伸ばしてる腕を胸に引き寄せる(肩・肩甲骨が上がらないように注意)
- 腕と肩の境目にストレッチを感じたら、深呼吸をしながら10秒〜20秒キープ
- 2、3回行ったら反対側も
- 肩甲骨まわり2
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- 片側の腕を上げ、首の後ろへだらんと下げる
- 曲げた肘をもう片方の手で首に添わせながら反対側に引く(首を前に倒さないように注意)
- 二の腕と肩甲骨の外側にストレッチを感じたら、深呼吸をしながら10秒〜20秒キープ
- 2、3回行ったら反対側も
ウォーキング時の水分補給のポイントは?
ウォーキングはそこまで負荷が高い運動ではありませんが、暑い日や湿度の高い日、体調の悪いときは熱中症のリスクが高まります。ウォーキングであってもこまめな水分補給は必要です。
とくにマスクをしてウォーキングをするときは、のどの乾きを自覚しにくいので注意が必要です。のどが渇いていなくても定期的に水分を摂るようにしましょう。
少し冷たい10℃前後の飲料の方が、冷たさによる胃が刺激で効率よく水分を吸収できるといわれていますが、体温よりも少し低い程度であればそこまで厳密でなくてかまいません。冷たすぎると飲みにくくなるので、飲みやすい温度のもので良いでしょう。
水分量や飲むタイミングに関しては、個人差や環境差があります、以下を目安にしてみてください。
- ウォーキング前
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- 30~60分前に、250~500mlの水分をゆっくりと飲んでおく
- ウォーキング中
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- 喉が渇いているかどうかに関係なく、15~20分に1回を目安に定期的に水分補給をする
- 1回の水分補給料は、一口〜200mlくらい
- 複数回に分け、噛むように口に含んで飲む
- ウォーキング後
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- ウォーキング直後から寝る前まで。一度に補給せず分けて補給
- 減った体重と同等の水分量を補給
- 補給する水分量は食事で摂る水分も含まれる
1時間程度のウォーキングであれば、真水での水分補給でかまわないとされていますが、暑さや運動に慣れているか、年齢や持病の有無、気温や湿度、その日の体調によっても違ってきます。必要に応じてスポーツドリンクや経口補水液を使用してもいいでしょう。
ただし、糖尿病や肥満、高血圧などの持病があり、糖分や塩分の摂取制限をされている人は、ウォーキングをしてもよいかの許可も含めて事前に確認してください。
おわりに:正しいフォームと水分補給で、ウォーキングの運動効果と安全性を高めよう
有酸素運動の一種であるウォーキングには、脂肪燃焼によるダイエットや生活習慣病予防、アンチエイジングなどの健康効果が期待できます。比較的体の負担が少なく、普段あまり運動をしない人でも手軽に始められる運動ではありますが、ケガや熱中症のリスクがないわけではありません。正しいフォームと水分補給を心がけ、安全に効率よくカロリーを消費しましょう。
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