非定型うつ病の症状の特徴とは?自立支援医療制度で治療の負担は軽減できる?

2020/10/10

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

非定型うつ病は従来のうつ病とは違う症状の現れかたをするうつ病でう。その特徴から周囲から理解を得られにくく、治療の開始が遅くなり回復まで時間がかかってしまうケースも少なくないようです。
今回は非定型うつ病の特徴や従来のうつ病・双極性障害との違いについて解説していきます。治療が続けやすくなる支援制度についても紹介していきますので参考にしてください。

非定型うつ病と従来のうつ病の違いは?

非定型うつ病は20~30代女性に増えている、比較的新しいタイプのうつ病です。従来のうつ病と症状と比べると、以下のような違いがあります。

常時ではなく、特定の場面でのみ気分が落ち込む

従来型のうつ病は時間帯や状況に関係なく症状が現れることが多いですが、非定型うつ病では気分のムラが激しく、嫌なことに接したときのみ気分が落ち込む傾向があります。
また、非定型うつ病では、気分の上下に関して以下のような特徴も見られます。

  • 他人の言動に対して敏感になりやすい
  • ちょっとしたきっかけで泣く、怒るなどして感情の制御が効かなくなる
  • 午前中ではなく、夕方から夜にかけての時間帯が最も気分が落ち込みやすい
  • イライラして、落ち着きがなくなる
  • 好きなこと、楽しいことをしているときは元気になる

過食、体重増加傾向が見られる

従来型のうつ病は食欲が減退することが圧倒的に多く、満足に食事が摂れなくなって5㎏以上もの体重減少が見られることも珍しくありません。一方、非定型うつ病ではむしろ食欲が増加する傾向があり、過食による体重増加も多いといわれています。

疲労感、眠気を強く感じやすい

従来型のうつ病は、不眠や寝覚めの悪さ、強い倦怠感が現れやすいです。対して非定型うつ病の人は、過眠の症状が出やすく、疲れを強く感じる傾向があります。

このように、非定型うつ病は、一部の症状が従来のうつ病とは正反対の方向で現れる傾向があります。ストレスを感じる環境にいなければ普通の状態のため、「怠け病だ」「嫌なことから逃げている」との誤解されることも少なくないようです。

非定型うつ病の診断基準は?気になる自覚症状をセルフチェック

2013年にアメリカ精神医学会が提示した「DSM-5」では、非定型うつ病の診断基準を以下のように示しています。

非定型うつ病の診断基準
気分反応性がある
良いことが実際に起こっているときや起こりそうなときに、明るい気分や態度になる(気分反応性)
以下のうち、少なくとも2つ当てはまる
  • はっきりとした体重増加や食欲の増加がみられる
  • 過眠
  • 手足に鉛のようなひどい重さを感じて、動かすことが難しくなる
  • 気分障害の発症に限らず、社会的・職業的障害を引き起こす対人関係拒否過敏症が長期に渡ってみられる
  • 同様の症状が発現したときに、メランコリー型うつ病(従来のうつ病)や緊張性うつ病の特徴の基準を満たさない

以下に、非定型うつ病で起こりやすい代表的な症状をまとめたリストを作成しました。診断基準とあわせてセルフチェックして、当てはまる項目が複数ある場合は、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

非定型うつ病の代表的な症状一覧
  • 気分が激しく落ち込むことがあっても、好きなことしているときは元気になる
  • 気分の浮き沈みが激しい
  • 甘いものがやめられず、太ってしまった
  • 食べすぎがやめられず、太ってしまった
  • 十分な時間睡眠をとっているのに、寝足りないと感じる
  • 朝起きれず、眠り続けてしまう
  • 手足が動かせなくなるほどの強い疲労感や倦怠感、脱力感がある
  • 他人からどう思われているか、どう評価されるかがとても気になる
  • ちょっとした言葉で深く傷ついてしまい、ツライ思いをすることが多い
  • 嫌なことをされた相手を見ると、嫌な記憶がよみがえってきてつらい思いをする
  • ストレスが多い状況で上記の症状が起こりやすい
  • 夕方から夜にかけて憂うつな気分になることが多い

非定型うつ病は、双極性障害やパーソナリティ障害と似た症状が現れる?

従来のうつ病と反対の症状が現れる非定型うつ病は、以下のような別の精神障害の特徴や症状と似ているため、診断が難しくなることもあります。

双極性障害
躁うつ病とも呼ばれていた精神疾患。気分が高ぶる躁状態、気分が落ち込むうつ状態をジェットコースターのように繰り返すため、非定型うつ病と間違われやすい
パーソナリティ障害
さまざまなきっかけで複数の人格が生じ、偏った考え方や行動をしてしまうために日常生活、社会生活に支障をきたす。パーソナリティ障害のなかでも、「境界性パーソナリティ障害」の症状が非定型うつ病と似ているとされている
慢性疲労症候群
心身とも、慢性的に疲れきった状態が続く病気。疲労感の他に睡眠障害や思考力の低下、微熱などの症状も現れるが、認知度が低く「怠けているだけ」と捉えられやすい
過食性障害
満腹になっているのに食べ続けたり、お腹がすいていないのに食べてしまう摂食障害。過度の早食いも過食性障害に含まれる。過食後の自己嫌悪から、うつを発症することが多い
ナルコレプシー
昼間、がまんできない睡魔に襲われ、眠り込んでしまう睡眠障害。仕事中や作業中、歩行中など、通常は眠ることがないような場面で眠ってしまう。突然ありえない状態で眠ってしまうため「怠けている」「やる気がない」と誤解されやすい

非定型うつ病の治療法は?薬物療法のほかにどんな方法がある?

非定型うつ病の治療は、認知行動療法や日常生活指導で普段の考え方や行動を変えていき、薬物療法で症状の緩和を目指します。

ただし、非定型うつ病は従来のうつ病に比べると薬物療法では効果が出にくいとされています。このため、非定型うつ病の治療においては認知行動療法と生活改善が特に重視され、必要に応じて薬物療法を併用するかたちで進められます。

認知行動療法

「CBT(Cognitive Behavior Therapy)」とも呼ばれる治療法です。医師や臨床心理士などとともに、どのような場面でストレスを感じ、起こったことをどのように捉えるのかなど「考え方や行動の傾向」を把握し、それを修正しながら日常生活・社会生活での負担が少なくしていきます。

日常生活の改善

睡眠の質の低下はうつ症状を悪化させる原因になりますし、過眠の症状がひどくなると日常生活や社会生活にも支障が起こりやすいです。睡眠の質を上げるために、6時間以上の睡眠時間を確保し、昼間は日光を浴びて行動をする「昼型生活」を心がけるようにしてもらうなどして、体内リズムを整えていきます。

従来のうつ病の治療では積極的な休息が推奨されますが、非定型うつ病では休息よりも家事・仕事をこなし、生活リズムを整えることが推奨されます。

薬物療法

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が使われることが多く、気分安定薬や抗不安薬、睡眠薬をなどを併用することもあります。

非定型うつ病で受けられる自立支援医療制度って?

先述したように非定型うつ病の治療では、仕事を継続し、規則正しい日常生活を送ることが推奨されています。しかし、治療の経過や治療期間、周囲の理解度によっては、仕事の継続が難しくなることもあるでしょう。

非定型うつ病のための通院・治療を続けながら、働き、社会復帰をめざす人は、以下で説明する自立支援医療制度を利用できます。自立支援医療制度を利用しても、原則職場などに通知がいくことはありません。
安心して治療に専念できる環境を作るためにも、自立支援制度の利用を検討することをおすすめします。

自立支援医療

通院による継続的治療が必要なすべての精神疾患患者が申請、利用できる制度です。
医療費負担を通常の3割から1割にまで軽減でき、世帯所得や治療内容によって定められた上限額を超えた治療費については支払わなくてよくなります。

初めて病院にかかった日から6か月以上の長期にわたり精神疾患の治療が必要になった場合には、一定の条件を満たせば精神障害者保健福祉手帳の交付も受けられます。
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、治療費に加え税金や公共料金の控除、障害年金を受け取れる可能性も出てくるので、さらに治療中の金銭的負担を軽減できます。

ただし、制度を利用できるのは指定の病院と薬局(指定医療機関)のみになるため注意が必要です。申請方法や通院している病院や薬局が指定医療機関になっているかなどは、自治体の窓口(障害福祉課などが担当になることが多い)に相談しましょう。

おわりに:非定型うつ病は理解が得られにくく治療が長引きやすい。自立支援医療制度で負担を減らすことが推奨されます

非定型うつ病は、近年になってから認知されるようになった新型のうつ病です。20~30代女性の発症が多く、気分のムラや過食・過眠が見られるのが特徴で、周囲からの理解を得にくいことから治療にうまく進めないケースもあるようです。

治療は認知行動療法、薬物療法、生活改善を併用していくことになり、長期間の通院が必要になることも少なくありません。自立支援医療制度を積極的に利用するなどして、治療を続けやすい環境を整えましょう。

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