生活援助と身体介護、その違いは?

2021/4/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

介護サービスは身体能力や内臓機能の低下、もの忘れなど脳機能の低下などによって日常生活を一人でこなすことが困難になってしまった高齢者に対し、支障なく日常生活を送れるようなサービスが提供されています。その中でもとくに日常生活に深く関わる介護サービスとして、生活援助と身体介護があります。この記事では、これらのサービスの違いを解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

生活援助とは

生活援助とは、高齢者本人やその家族が家事を行うのが困難なとき、訪問介護スタッフ(ホームヘルパー)が本人の自宅へ赴き、掃除・洗濯・調理などの日常生活の援助を行うことで、具体的には以下のようなものがあります。

掃除
  • それぞれの家によって掃除の仕方も変わるため、初回の訪問できちんと掃除方法を把握する
  • 掃除機や水拭きなどでキレイに掃除し、日用品の整理なども行う
ゴミ出し
  • 地域によってゴミを出す日時が異なるため、曜日や時間を確認する
  • 清掃当番があるところもある。こちらも合わせて確認する
洗濯
  • 洗濯物を洗濯し、干してたたみ、たんすやクローゼットに戻すところまで行う
アイロンがけ
  • 必要に応じてアイロンも使う
料理
  • 調理食材の買い物、料理の下ごしらえなど、本人の好みの味つけに合わせて行う
  • 栄養面を考えて料理を作る
  • 片付けも行う
ベッドメイク
  • シーツの交換や布団干しを行う
  • 人によっては、布団の上げ下ろしも含む
衣服の修理・被服の補修
  • 衣替えのときに整理整頓する
  • 洋服が破れたり、ボタンが取れたりした場合は補修を行う
買い物
  • 一人では買い物に行けない人のために、必要最低限の日用品などの買い物を代行する
  • 本人の自宅の近くにあるお店で買い物をする
薬の受け取り
  • 処方箋を預かって、本人の代わりに薬局や病院などでの定期的に薬を受け取る

このように、生活援助とはあくまで日常生活に必要な家事を介護士が代行するもので、本人の体に直接触れるケアは生活援助に含まれません。また、こうした生活の援助は本人に対して行われるものですから、本人が家族のために行っていた家事の代行や、日常生活の域を超えた家事なども生活援助の対象とはなりません。

以下に、生活援助の対象とならないものを挙げます。

  • 本人以外の部屋の掃除
  • ペットの世話
  • 草むしり
  • 家具の移動
  • 窓拭き
  • 季節の家事(大掃除、おせち料理の準備など)

生活援助は基本的に介護保険の適用対象となるサービスですが、これらの家事は日常生活の範囲とは認められないため、介護保険の適用対象ではありません。しかし、事業所によってはこれらを「保険適用外のサービス」として、介護保険の対象にはならないものの、提供はしている場合もあります。詳しくは、利用したい事業所に問い合わせてみてください。

身体介護との違いは?

生活援助は家事の代行のため、本人の体に触れることはありません。一方、身体介護はその名の通り、本人の体に直接働きかけるものを指します。大まかに分類すると、以下の3つに該当するものです。

  • 利用者の体に直接触れて行うもの
  • 利用者のADL(日常生活動作)や意欲の向上を目的として、利用者と一緒に行うもの
  • 専門的な知識や技術を必要とするもの

具体的には、以下のような介助が当てはまります。

  • 食事の介助
  • 排泄、更衣、洗面、清拭、入浴の介助
  • 体位変換、移動や移乗の介助
  • 通院や外出介助
  • 利用者が家事を行うとき、安全を確保するために声かけや見守りをする
  • 一緒に調理や掃除などの家事を行う
  • 服薬介助
  • 痰の吸引、経管栄養(※)

※経管栄養は、都道府県の登録機関で一定の研修を修了し、認定を受けた人のみ担当できる

そのほか、嚥下困難な人に流動食を作ったり、糖尿病食を作ったりするなど、特別な配慮が必要な食事を医師や管理栄養士などの指示に沿って作る場合、介護職員やヘルパーなどがすべて行った場合でも、生活援助ではなく身体介護として扱われます。

このように、生活援助と身体介護は本人の体に直接触れるかどうかという点で大きく異なります。たとえば、一見同じ「見守り」に分類される行為でも、調理や掃除をしながら見守る生活援助と、いつでも介助できる状態で見守る必要がある身体介護とでは、その意味合いが異なります。

おわりに:生活援助は家事の代行、身体介護は直接本人の体に働きかけます

生活援助は高齢者本人やその家族が家事を行えない場合に家事を代行するもの、身体介護は直接本人の体に働きかける介助のことを指します。また、大掃除やおせち料理の準備など、日常生活に含まれない家事は生活援助に含まれませんが、専門的な知識を必要とする医師や管理栄養士の指示に従った調理の場合は、家事であっても身体介護に含まれます。両者の違いをきちんと理解し、必要なサービスを利用しましょう。

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