記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/3/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
認知症が進行すると、排泄や食事を自力で行うことも難しくなります。中には周囲が食事の介助をしても食べたくないと怒ったり、吐き出してしまったりして食事そのものを拒否するケースもあります。この記事では、認知症の人が食事を拒否する理由と、少しでも食事を食べてもらうために周囲ができる対策を解説します。
認知症の人が食事を拒否する理由として、以下の4つが考えられます。
このように、認知症の人が食事を拒否する背景には、脳の認知機能とこれに伴う身体機能の低下による原因が存在しています。
目の前の食べ物が何かを具体的に言葉で説明したり、食べ物の香りや温度、感触など視覚以外の感覚で補いながら、食事であることを認識できるよう促しましょう。
本人の視界に入る場所で、家族や介護職員がゆっくりと食べながら、食事に必要な動作や道具の使い方を見せてあげましょう。また、一皿あたりの食事の盛り付け量を変えたり、食器の数を調整したりして食事の見た目を変えてみることも、認知症の人の食事に対する混乱を和らげるのに効果的です。
まず食事に集中できない原因が本人にあるのか、それとも外部環境にあるのか、様子を観察しましょう。体の痛み、眠気、排泄の欲求や便秘による不快感を持っている様子がみられたら、椅子の高さや位置、食事のタイミングを工夫して不快感を解消してあげましょう。
本人の状態に問題がなさそうなら、周囲の音や明るさ、装飾などが原因と考えられます。認知症の人の過去の生活環境に近くなるよう、雑音や明るさの程度、装飾を変えてみてください。
まず、口のなかに虫歯や傷、入れ歯のがたつきがないかを確認してみてください。もし、食事中に咳き込んだり苦しそうにしているなら、嚥下能力が低下していることも考えられます。いずれにしても、食事中の様子に変化が見られるなら、早めに歯科・内科・耳鼻科などの医師に相談しましょう。
認知症の人に毎日食事を食べてもらえるよう、以下のポイントに気を付けましょう。
食事中に怒られることは、認知症の人に「食事はいや、怖い」という認知を植え付けるだけでなく、誤嚥性肺炎などの疾患を引き起こす恐れがあります。「食べてもらわなければ」と焦りや不安があるかもしれませんが、一食抜いても命に関わることはありません。おおらかな気持ちで、楽しい食事を提供するようにしましょう。
体調や排泄、口内の問題などから食べられない状況に早く気付けるよう、毎日の観察と「今日は調子どう?」という声かけを欠かさないようにしましょう。また、体調のほかに、食事中の様子から食器や道具が合っていないと感じるときは、お皿の色を変えたり、箸からフォークやスプーンに変えてみたりしてください。
生活や食事のタイミングやメニューが、もともとの習慣と大幅にずれているために食事を食べなくなることもあります。本人の過去の食事習慣をベースに、食事の時間帯やメニューを用意しましょう。
散歩や座ったままできる体操、音楽にあわせて体を揺らしたり歌うなどして、おなかが空くような刺激や運動を生活のなかに取り入れましょう。
認知症の人が食事を拒否する原因は人によってさまざまです。具体的には食事を認識できない、食べ方がわからない、環境が気に入らない、食事が嫌なものになっているなどが考えられますが、ほとんどの場合、本人なりのきちんとした理由があります。観察と声かけから原因を特定できれば食べてもらえるようになることも多いです。認知症の人、介護する人の双方にとって食事が楽しくなるよう工夫してみましょう。