記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
食後に眠くなるという人は多いのではないでしょうか?
しかし、食後に異常な眠気や倦怠感がみられる場合は糖尿病を発症している可能性があります。
そこで今回は、糖尿病が眠気を引き起こす原因と眠気への対策をお伝えします。
糖尿病患者の半数近くが特に食後の眠気に悩まされているといわれていますが、その原因の多くは血糖が急激に上昇することです。
誰でも食事をした後には血糖値が上がりますが、通常はインスリンというホルモンが正常に分泌されて体内の糖をエネルギーに変えてくれるため、2時間ほどで血糖が通常値に戻っていきます。ところが、糖尿病になるとインスリンが正常に働かないために食後の血糖が急に上がりやすく・下がりにくくなり、眠気や倦怠感を引き起こしてしまうのです。
それでは、血糖値が高いと眠くなるのはどうしてでしょうか?
そこには脳から分泌される「オレキシン」という神経伝達物質の増減と「オレキシン作動ニューロン」の働きが関係していると考えられています。オレキシンは神経伝達ペプチドのひとつで、オレキシン作動ニューロンはオレキシンを出す神経細胞のことです。
このニューロンのスイッチがオンの状態だとオレキシンが分泌されて覚醒モードになり、オフになっていると睡眠モードになります。
血糖値が高くなると脳脊椎液中のブドウ糖濃度が変わり、オレキシン作動ニューロンのスイッチがオフになりやすくなります。そのため、オレキシンの分泌量が少なくなって眠気が襲ってくるのです。
反対に血糖値が低いとオレキシン作動ニューロンがオンになるため、体が覚醒モードになります。
血糖値が高いこと以外に眠気が生じる原因は以下の通りです。
・糖尿病の主症状である頻尿によって夜中にトイレのために何度も目が覚めて寝不足になっている
・神経障害による手足の痛みや痺れで眠れない
・寝ている間に低血糖になることへの不安から安眠できない
また、睡眠の時間が短いことや深い睡眠がとれていないことが原因でインスリンの働きが悪くなり、
血糖値や肥満のリスクが高まることがわかっています。
食後に急激に血糖値が上昇する食後高血糖を防ぐためのポイントは下記の3つです。
1.過食をしないこと
2.栄養バランスの良い食事をとること
3.糖質を控えて食物繊維を積極的にとる
まずは、必要な量だけを食べて余分には食べないことを心がけてください。
適正な食事量は年齢・性別・運動量などによって異なるため、自分に合った食事量を医師に確認しましょう。
食事量に気をつけると共に、栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)の過不足がないように栄養バランスの良い食事をすることも重要です。
誤解されがちですが、糖尿病になったからといって食べてはいけない食品はほとんどなく、逆に糖尿病を治すという食品もありません。ただし、目標とする血糖値を守るために食べる量とタイミングには気をつけるようにしてください。
上の項目で「すべての栄養素をバランス良くとることが重要」と説明をしましたが、糖質が多く含まれるパン、白米、麺類などの炭水化物は血糖値を急激に上げてしまうため、量を減らすようにしましょう。
炭水化物よりも低脂肪の肉や魚、豆などのタンパク質と野菜やキノコ類から食物繊維を積極的にとることが大切です。
特に昼食時と夕食時に糖質を抑えると高血糖を招きにくいといわれています。
ここでは、夜に寝付きやすくなるための工夫を3つ紹介します。
眠気に悩んでいる場合はぜひ取り入れてみてください。
糖尿病の治療において運動は大切ですが、遅い時間に運動することで脳や体の興奮状態が続いて寝付けなくなる可能性があります。運動は少なくとも寝る5~6時間前にすませるようにしましょう。
温かいお風呂に浸かる、お気に入りの本を読む、リラックス効果のある音楽を聴くなど・・・寝る前にリラックスする時間を持つと寝付きやすくなるといわれています。
また、寝ようと思ってベッドに入ったまま20分以上眠れない場合には、一度起きてリラックスできることをしましょう。眠れないと不安になることで、さらに眠れなくなってしまうことが多いからです。
高血糖と高血圧によって夜中に尿意を感じる回数が増える可能性があるので、寝る前には必ずトイレに行くようにしましょう。
糖尿病の方が眠気を感じやすい主な原因は高血糖状態が長く続くことです。
また、頻尿・低血糖への不安・神経障害による痛みなどの糖尿病の症状によって睡眠不足になりやすいことも、日中の眠気を引き起こす原因のひとつです。
眠気を緩和するためにも血糖値の急激な上昇と寝る前の習慣に注意しましょう。