噛む力・飲み込む力が衰えたときの食事工夫
2026/1/20
高齢になると歯や嚥下機能の衰えにより、「食べたいのに食べられない」という状況が生じることがあります。固いものが噛めない、飲み込むときにむせてしまう、といった悩みを抱える方も多いでしょう。ここでは、噛む力・飲み込む力が低下した高齢者の食事を支える工夫や専門的なサポートについて解説します。
噛む力・飲み込む力が低下する原因
歯の本数が減ったり入れ歯が合わなかったりすると、十分に噛めない食品が増えてしまいます。その結果、柔らかく喉ごしの良い食べ物(麺類やお粥、パン、芋類など)に偏りがちになり、肉や生野菜など栄養豊富な食品が敬遠される傾向があります。また、加齢や病気で嚥下に関わる筋力が衰えると、食べ物をうまく飲み込めずむせたり、誤嚥(食べ物が気道に入ること)のリスクが高まります。脳梗塞などの後遺症で嚥下障害が起きるケースもあります。こうした口腔機能の低下は誰にでも起こり得るため、早めに気づいて対策することが大切です。
食事形態の工夫で安全においしく
噛む力や飲み込む力が落ちてきた場合でも、工夫次第で安全においしく食事を楽しむことができます。
やわらかい調理法やとろみ付けを取り入れる
固い食材でも、調理法を工夫してやわらかく調理すれば食べやすくなります。野菜や肉は圧力鍋や煮込み料理で柔らかくし、魚はすり身団子にするなど形態を変えると良いでしょう。また、スープや汁物には嚥下しやすいようとろみ剤を使って適度なとろみをつけると、安全に飲み込みやすくなります。嚥下障害者用の増粘剤(とろみ調整食品)は温度に左右されず安定したとろみを付与でき、誤嚥防止に有効です。飲み物にもとろみをつけたり、ゼリー状に固めることでむせずに水分補給ができます。また、餅や海苔、わかめなど粘り気が強く喉に貼り付きやすい食品や、漬物やナッツ類など堅い食品は、細かく刻むかあんでとろみをつけるなどして、安全に飲み込める形に調整します。
市販の介護食品やスマイルケア食を活用
近年は噛む・飲み込む機能に配慮した市販の介護食品が充実しています。例えば、歯ぐきでつぶせるやわらかさの食品や、ムース状・ペースト状に調整された食品など、様々なタイプが市販されています。農林水産省による「スマイルケア食」の青・黄・赤マークも活用しましょう。噛む力が弱い方向けの「黄マーク」食品や、飲み込む力に課題がある方向けの「赤マーク」食品を選べば、専門的なとろみ調整や栄養強化が施されており、安心して利用できます。こうした製品を上手に取り入れれば、家庭で一から調理しなくても安全な食事を提供することが可能です。
専門家に相談し口腔機能を維持する
食事の工夫と並行して、専門家の力を借りて口腔機能の維持向上を図ることも大切です。
歯科医による口腔ケアと嚥下リハビリ
噛む力が落ちたと感じたら、まずは歯科医に相談しましょう。虫歯や歯周病の治療、合わない入れ歯の調整によって、噛む能力が大きく改善する場合があります。歯科医や歯科衛生士は口腔ケアのプロでもあり、舌や口の中の清潔を保つことで嚥下機能低下による誤嚥性肺炎を予防する効果も期待できます。また、専門の歯科医や言語聴覚士による嚥下障害のリハビリ(嚥下訓練)では、とろみ食の指導や嚥下体操の指導が受けられます。飲み込みに不安がある場合は、遠慮せず専門家に相談しましょう。
毎日の嚥下体操で飲み込む力を鍛える
自宅でも簡単にできる嚥下体操を習慣にしましょう。代表的な「パタカラ体操」は、「パ・タ・カ・ラ」と繰り返し発声することで口周りや舌の筋肉を鍛え、誤嚥を防ぐ訓練法です。上を向いて発声することで胸や喉の筋肉も強化されるため、上を向いてゆっくり「パ、タ、カ、ラ」と5回程度繰り返す方法も効果的です。他にも、舌を出して飲み込む練習(ごっくん体操)や、頬を膨らませたりすぼめたりする口の体操なども取り入れましょう。毎日数分でも継続することで、飲み込む力の維持に役立ちます。
まとめ
噛む力・飲み込む力の低下に直面しても、適切な工夫とサポートにより安全で楽しい食事は続けられます。調理法の工夫や市販の介護食品の活用で「食べやすさ」と「おいしさ」を両立させ、専門家の助言やリハビリで口腔機能をケアすることが重要です。食べる喜びをあきらめず、できる範囲で工夫を重ねながら、豊かな食生活を維持していきましょう。










