高齢者の転倒を防ぐには?住まいと身体機能を整える方法

2026/3/10

転倒はきっかけとして起こりやすい

高齢者の転倒は、ちょっとした段差やふらつきで起こることがあり、骨折や外出機会の減少などに結びつく場合があります。転倒そのものを恐れて動かなくなると、筋力が落ちてさらに転びやすくなることもあります。大切なのは、危険を過度に避けるのではなく、環境と体の両面から転倒しにくい条件を整えることです。
転倒の背景には、筋力やバランスの低下、視力や感覚の変化、薬の影響、家の環境、睡眠不足や体調不良など、複数の要因が重なりやすい特徴があります。原因探しを一つに絞らず、チェック項目として分解すると対策が立てやすくなります。

転びやすさは複合要因で説明できる

国立長寿医療研究センターは、転びやすい原因を含め多方面の専門家が全体として体の状態を評価し助言する外来の取組を紹介しています。転倒は整形外科だけの問題ではなく、内科的な要因、神経、栄養、運動機能などを含めて総合的に考える必要があることを示す内容です。
また、厚生労働省の介護予防マニュアルの運動器の機能向上マニュアルでは、要介護状態となる原因の上位に認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱が挙げられる一方、要支援では関節疾患、高齢による衰弱、転倒骨折が挙げられると示されています。転倒骨折は生活機能を左右しやすい要因の一つであり、予防の価値が高い領域といえます。

家の整備と身体トレーニングを並行する

住環境の整備は即効性が高い対策です。床の物を減らして動線を確保する、コード類をまとめる、滑りやすいマットを見直す、夜間の移動経路に足元灯を置く、トイレや浴室に手すりを設置するなど、転倒要因を減らします。靴や室内履きは、かかとが固定され滑りにくいものを選ぶと安定しやすくなります。
身体面では、バランス能力と筋力が鍵になります。e-健康づくりネットは、バランス能力は感覚系、中枢、筋力系などの要素で決まり、高齢者では筋力の要素がより重要になると指摘しています。筋力トレーニングでバランス能力の向上を認めた研究や、転倒回数が減少した報告があることも紹介されており、筋力とバランストレーニングを組み合わせる考え方につながります。
実践では、転倒リスクを上げない範囲の運動にします。椅子からの立ち上がり練習、つかまりながらの片脚立ち、ゆっくりした足踏みなど、安全にできる動作から始めます。独居やふらつきが強い場合は、家族同席やデイサービスでの運動など、環境を選ぶことが大切です。

薬と体調の影響 相談の目安

転倒が増える背景に、降圧薬、睡眠薬、抗不安薬、利尿薬などの影響が関わる場合があります。ふらつきが出ている、夜間のトイレ回数が増えている、日中の眠気が強いなどの変化がある場合は、処方全体の評価を相談します。急に歩けなくなった、片側の麻痺やろれつの回りにくさがある、強い頭痛や胸痛、呼吸苦があるなどの場合は、速やかに医療機関へ相談します。
介護施設では、転倒対策に標準的なものはないが、科学的エビデンスや技術は進歩しており、対策や手順を定期的に見直す必要があるというステートメントも出されています。在宅でも、状態の変化に応じて対策を更新する姿勢が重要です。

まとめ 環境を整え動ける体を保つ

転倒予防は、家の環境整備と、筋力とバランスの維持を並行して進めることが基本です。転倒が増えた場合は、薬や体調の影響も含めて見直し、必要に応じて医療者やリハビリ職へ相談します。安全に動ける条件を作ることが、生活機能を守る実践になります。

引用・参照:
厚生労働省|介護予防マニュアル第4版 第2章運動器の機能向上マニュアル|2022|https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25277.html
国立長寿医療研究センター|転びやすくなる原因|更新年不明|https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/22.html
e-健康づくりネット|バランス運動の効果と実際|更新年不明|https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-04-009.html
一般社団法人日本老年医学会|介護施設内での転倒に関するステートメント|2021|https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/important_info/20210611_01.html

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