介護中の声かけと本人の尊厳を守る関わり方

2026/4/29

声かけが介護の受け止め方を左右する

介護の場面では、食事、着替え、入浴、排泄、移動など、本人の生活に深く関わります。そのため、どのように声をかけるかは、本人の安心感や自尊心に大きく影響します。介護者に悪気がなくても、急がせる、命令する、子ども扱いする、本人の前で本人のことを決めるといった関わりは、拒否や不安につながることがあります。
高齢者本人は、介護が必要になっても、これまでの生活歴や価値観を持つ一人の大人です。できないことだけを見るのではなく、できること、選べること、続けたい習慣を残す視点が大切です。声かけは、介助をスムーズにするためだけでなく、本人の尊厳を守るための基本になります。

わかりやすく、急かさない伝え方

声をかけるときは、まず本人の正面や見える位置に入り、名前を呼んでから話します。早口や長い説明は伝わりにくいことがあるため、一度に伝える内容を少なくします。たとえば、着替えでは、これから着替えますと伝えたうえで、上着を脱ぎます、右手を通しますというように、手順ごとに声をかけます。
認知機能が低下している人では、何をされるのかわからないことが不安や拒否につながることがあります。突然体に触れず、これから何をするかを短く説明します。本人が返事をするまで少し待つことも大切です。介護者が急いでいると、本人の動きがさらに止まって見えることがあります。時間に余裕を持つことは、介護者の負担を減らすことにもつながります。

本人の選択を残す工夫

すべてを本人に決めてもらうことが難しい場合でも、小さな選択を残すことはできます。服を二つから選ぶ、飲み物を選ぶ、入浴の時間帯を相談する、散歩に行くか窓を開けるかを聞くなど、選択肢を少なくして提示すると答えやすくなります。本人の希望が安全面と合わない場合も、頭ごなしに否定せず、理由を伝えながら代わりの方法を一緒に考えます。
拒否があるときは、無理に進める前に理由を探ります。寒い、痛い、眠い、恥ずかしい、説明がわからない、過去の経験を思い出して不安になっているなど、背景はさまざまです。時間を変える、介助者を変える、同性介助にする、手順を減らす、本人のペースに合わせることで受け入れやすくなることがあります。

介護者が抱え込みすぎないために

丁寧な声かけを心がけていても、介護の拒否や強い言葉が続くと、介護者が疲れてしまうことがあります。本人の反応をすべて自分への否定と受け止めず、病気や不安、環境の影響がある可能性も考えましょう。家族だけで抱え込まず、ケアマネジャー、訪問介護員、地域包括支援センター、医師などに相談することが大切です。
暴力がある、介護者が眠れない、怒鳴ってしまいそうになる、本人を安全に支えられないと感じる場合は、早めに支援を求めてください。本人の尊厳を守ることは、介護者が無理をし続けることではありません。穏やかな関わりを続けるためにも、サービスや周囲の力を使いながら、介護者自身の休息を確保しましょう。

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