記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/6/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、体温、脈拍、エネルギー消費など新陳代謝を調整する甲状腺ホルモンをつくります。このホルモンの産生や分泌が低下した状態が甲状腺機能低下症です。原因には、免疫の働きが甲状腺に影響する橋本病、甲状腺の手術や放射性ヨウ素治療、薬の影響、下垂体の病気などがあります。女性にみられやすく、産後に一時的な変化が起こることもあります。症状がゆっくり進むと本人も周囲も気づきにくいため、複数の変化が続くときは検査で確認します。
主な症状には、疲れやすさ、寒がり、むくみ、便秘、皮膚の乾燥、体重増加、声のかすれ、動作や考え方がゆっくりすることなどがあります。月経量の変化や月経不順がみられる場合もあります。これらは更年期、うつ状態、睡眠不足、加齢による変化とも重なるため、症状だけでは区別できません。高齢者では目立った訴えが少なく、活動量低下、食欲低下、物忘れのように見えることがあります。家族や介護職が以前との違いに気づいたときは、いつから何が変わったかを記録して受診につなげます。
一般的な原発性甲状腺機能低下症では、甲状腺を刺激するTSHが高く、甲状腺ホルモンの一つである遊離T4が低くなります。軽い段階では遊離T4が基準範囲内で、TSHだけが高いこともあります。必要に応じて、橋本病に関連する自己抗体、脂質、貧血、肝機能なども確認されます。検査値は妊娠、産後、重い病気の最中、薬やサプリメントの影響を受けることがあります。検査前には、処方薬だけでなく市販薬、漢方薬、健康食品を含め、使用している製品を医療機関へ伝えます。
治療が必要な場合は、一般的に不足している甲状腺ホルモンを補う薬が用いられます。量は年齢、体重、心臓病の有無、妊娠の状況、検査値などを見ながら調整されます。効果はすぐに体感できるとは限らず、数週間から数か月かけて症状と検査値を確認します。飲み忘れがあっても一度にまとめて服用せず、処方時の指示に従います。鉄剤、カルシウム製剤、胃薬などと服用間隔を空ける必要がある場合もあるため、薬剤師に確認します。体調がよくなっても自己判断で減量や中止をせず、定期検査を受けます。
甲状腺ホルモンは妊娠中の母体と胎児にとって重要であり、妊娠を希望する人、妊娠が分かった人は、治療中であることを早めに産婦人科と主治医へ伝えます。妊娠前後は必要な薬の量が変わることがあり、通常より短い間隔で検査する場合があります。産後には甲状腺機能が一時的に高くなった後、低くなる経過をとることもあります。強い疲労や気分の落ち込みを育児疲れだけと考えず、動悸、体重変化、寒がりなどが重なる場合は相談します。授乳中も使用できる治療があるため、服薬を自己判断で中断しないことが大切です。
疲労、むくみ、便秘、寒がりが続く、首の腫れに気づいた、健診でTSHやコレステロールの異常を指摘された場合は、内科や内分泌内科に相談します。まれですが、重い甲状腺機能低下症では、意識がぼんやりする、体温が著しく下がる、呼吸が浅い、脈が遅いなどの状態になることがあります。このような急激な悪化は救急対応が必要です。甲状腺機能低下症は、症状がほかの不調と似ていても、血液検査で評価し、必要に応じて治療できます。本人の訴えだけでなく、生活動作や認知面の変化も含めて医療者に伝えましょう。
甲状腺機能低下症の症状は、更年期や疲労、加齢の変化と重なります。見た目や自覚症状だけで判断せず、血液検査と経過から評価することが重要です。治療が始まった後も、体調と検査値を見ながら薬の量を調整します。本人が変化を言葉にしにくい場合は、家族や介護職が睡眠、食事、便通、動作、反応の変化を記録し、診察時に共有しましょう。