月経のある女性に起こりやすい鉄不足のサイン

2026/6/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

貧血になる前から鉄が不足することがある

鉄は赤血球のヘモグロビンをつくり、全身へ酸素を運ぶために必要な栄養素です。体内では一部が貯蔵鉄として蓄えられていますが、月経による出血が続く女性では、失う量が補給量を上回りやすくなります。鉄の蓄えが減っても、初めは健康診断のヘモグロビン値が基準範囲内に保たれることがあります。一般に隠れ貧血と表現されることがありますが、医学的には鉄欠乏の段階として評価します。疲れやすさを体質や忙しさだけで片づけず、月経量や食生活と合わせて考えることが大切です。

鉄不足でみられる体調変化

鉄不足が進むと、倦怠感、頭痛、立ちくらみ、動悸、階段での息切れ、集中しにくさなどが現れることがあります。爪が割れやすい、顔色が悪いと指摘されるなどの変化がみられる人もいます。ただし、これらは睡眠不足、甲状腺の病気、心臓や肺の病気、更年期の不調などでも起こります。症状だけで鉄不足と決めることはできません。血液検査ではヘモグロビンや赤血球の大きさに加え、必要に応じて貯蔵鉄を反映するフェリチンなどを確認します。検査値は炎症などの影響も受けるため、医師が全体を見て判断します。

月経量と出血の原因を確認する

夜用ナプキンでも短時間で交換が必要、血の塊が多い、月経が八日以上続く、以前より量が増えた場合は、量が多い(過多月経)/期間が長い(過長月経)の可能性があります。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜の病気、血液が固まりにくい病気などが背景にあることもあります。月経以外の出血、黒い便、血便、胃の痛みがある場合は、消化管など別の部位からの出血も確認します。特に閉経後の女性が鉄欠乏を指摘された場合は、食事不足だけと考えず、原因を調べることが重要です。月経日、交換回数、塊の有無を記録して受診時に伝えると評価に役立ちます。

食事から鉄を補う工夫

鉄は赤身の肉や魚、レバー、貝類に含まれるヘム鉄と、大豆製品、青菜などに含まれる非ヘム鉄があります。非ヘム鉄は、肉や魚などのたんぱく質やビタミンCを含む食品と一緒にとると吸収されやすくなります。朝食を抜く、主食だけで済ませる、極端な減量を続けると、必要な鉄やたんぱく質を確保しにくくなります。毎食完璧を目指すより、魚や肉、豆腐、卵などの主菜を一品加え、野菜や果物を組み合わせます。妊娠中、授乳中、競技スポーツを行う人は必要量や管理方法が異なるため、健診や妊婦健診で相談します。

鉄剤とサプリメントの注意点

鉄欠乏性貧血と診断された場合は、食事だけでなく鉄剤による治療が必要になることがあります。ヘモグロビンが改善しても貯蔵鉄の回復には時間がかかるため、医師の指示された期間を守ります。吐き気、胃の不快感、便秘、黒い便などが気になる場合は、自己判断で中止せず処方元へ相談します。市販の鉄サプリメントを長期間使用すると、原因となる出血の発見が遅れたり、過剰摂取につながったりする可能性があります。ほかの薬の吸収に影響する場合もあるため、使用中の薬やサプリメントを医師、薬剤師に伝えましょう。

受診を急ぎたい症状と日常の確認

安静にしていても息苦しい、胸が痛む、失神した、脈が非常に速い、大量の出血が続く場合は、早急な医療評価が必要です。黒いタール状の便や目に見える血便がある場合も速やかに相談します。そこまで強くなくても、疲労や息切れが数週間続く、月経量が増えた、健診でヘモグロビン低値を指摘された場合は受診してください。家族や介護職は、本人の食事量、活動時の息切れ、顔色、出血の変化を観察し、無理な運動を勧めないようにします。鉄不足は原因を確認し、補給と出血への対応を並行して進めることが大切です。

鉄を補うだけでなく原因を確かめる

鉄不足への対応では、食事や鉄剤で補うことと、なぜ不足したかを調べることの両方が必要です。月経量の増加や消化管からの出血が隠れている場合は、補給だけでは再発を防げません。健診結果を保管し、症状、月経、食事、服薬の変化を合わせて医療者に伝えます。治療後も指示された時期に再検査を受け、ヘモグロビンと鉄の蓄えの回復を確認しましょう。

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